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24話 ファミレスにて


「待って来条君。いきなりパフェ?ご飯は?」


 今はちょうどお昼時。チーム015はファミレスでお昼をとる事になっていたが、蓮がいきなりパフェを注文したので日衣菜が呆気にとられていた。


「まだそんなにお腹空いてないんだよな。それに俺は甘いものが食べたかった。それが答えだ」

「そ、そう…」


 蓮は甘いものに目がない。運ばれてきたパフェを愛しそうに見つめる。日衣菜が注文した肉汁たっぷりのハンバーグが机に置かれる。ハンバーグの上にはチーズがかかっていて、食欲をそそる見た目をしていた。瑠依はナポリタン、夢乃はポテトと唐揚げを注文していた。


「来条さん。よかったらポテトと唐揚げ食べてください」

「え、でもそれ夢乃の分だろ?」

「これは皆で分けるために注文したの。私こんなに食べきれないですから、ね?」

「それならお言葉に甘えて……」


 そう言って蓮はまだ熱をもったポテトをつまむ。隣に座っている瑠依も「私も!」と言ってポテトに手を伸ばした。


「今日は、蓮の事について皆からも意見を聞きたくて集まってもらったわけなんだけど」


 瑠依は、書庫で錐野と話した事の詳細を皆に伝えた。


「…という訳なんだけど、皆はどう思う?」


 瑠依が意見を募ると、日衣菜がハンバーグに添えてある人参にフォークを刺しながら言った。


「来条君に転性変化の魔法をかけたのって魔法使いなんじゃない?」

「そういや、日衣菜は前もそんな事言ってたな」


 女の姿だと日衣菜にバレた日に屋上でした会話を蓮は思い出す。


「日衣菜は何でそう思ったんだ?」

「え?勘だけど。私、勘で生きてる女だから」

「え、マジで勘なの?」


 確かに前も勘とは言っていたが、実のところはちゃんと考えがあるのだろうと期待していた蓮は、日衣菜の返答に気が抜けた。


「あるいは、魔法使いが影に頼んだか、かな。影が単独でやったとは思えないんだよね。錐野君の言ってたとおり、来条君を守るためにやったんじゃない?勘だけど」


 日衣菜はフォークにさした人参を口に運ぶ。


「それだと蓮と元々面識があった魔法使いの仕業って事になるの?え?それって私?私がやったの?」

「るーちゃん、自分の記憶に自信をもって?」


 瑠依が混乱して訳がわからなくなっているところに、夢乃が口をはさむ。


 蓮は一人で静かに考えていた。女の体になる前から蓮と面識があった魔法使いといえば、現時点で知っている中では錐野と瑠依、日衣菜が該当する。しかし、錐野と瑠依ならそもそも隠す必要がないし、現にこうやって色々調べてくれてるのだがから、ありえないだろう。

 日衣菜に関しては、魔法使いになる前はクラスメイトのただの知り合い程度の関係だったので、守られる程仲が良いと言われると、微妙なところだった。それにやはり、隠す必要がない。他に魔法使いの知り合いがいただろうか。蓮は頭の中にある記憶を巡らせると、ある事を思い出す。


「……そうだ。女の体になる前の日にフード姿の子に会ったけど、もしかしたらあの子は俺の知り合いの魔法使いなのかもしれない。私の事覚えてますか?って聞かれたし」

「知り合いなのかもしれないって…覚えてなかったって事?来条君ひどーい」


 日衣菜が少し呆れた顔で非難すると、蓮は慌てて弁解した。


「違う違う!フード被ってて顔が見えなかったんだよ!小柄な子で…ちょうど夢乃くらいの身長の子だった」


 名前を呼ばれて、メロンソーダをストローで飲んでいた夢乃が顔を上げる。


「私くらいの身長の子の知り合いいます?来条さん」

「えー。学校には小柄な子はいるけど…別に大した接点はないしなあ」

「……そういえば、加藍様からの話だと、来条さんは魔法使いになる事で3年後に殺される未来を回避できるって話でしたよね?という事は、解決の鍵は来条君自身にあるという事ではないですか?」


 日衣菜と夢乃も、加藍からの話は瑠依から聞いたので知っている。夢乃の言う通り加藍の言っている事が正しければ、蓮自身に答えがある事になる。

 

「それって逆に言えば、来条君が魔法使いにならないと3年後に殺されるって事だよね?」


 蓮自身が魔法使いにならないと3年後の未来が変わらない。それはつまり、周りの魔法使いが蓮を守る為に頑張っても未来は変わらない。蓮にしかできない事―――。日衣菜はハッとした顔で、急に立ち上がった。一同は彼女に目線を向ける。

 

「きっと来条君の特殊魔法に何か秘密があるんだよ!」


 特殊魔法―――人によって能力が異なる先天的な魔法。蓮の特殊魔法の能力はまだわかっていないが、魔法使いとして影退治を続けていれば、なんらかのきっかけで発動する可能性は確かにある。蓮の特殊魔法が、3年後の未来を変える為の鍵になっているのであれば、加藍の話の内容も頷ける。


「つまり、俺が特殊魔法を使えるようになる必要があるという事か」


 何の能力かもわからない魔法を使えるようになるというのは、至難の業…というよりも、もはや運でしかない。しかし、未来視の魔法を使う加藍の言った事が本当であれば、どこかのタイミングで特殊魔法が発動するのかもしれない。

 パズルのピースが揃っていない状況の中、あれこれ議論しても結局答えは出ない。加藍を信じて影退治を続ける事しか、今は道がない―――最終的にそういう話に行きつき、チーム015はファミレスを後にした。




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