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17話 武器


 蓮がチーム015に入って2日目。今日はチームの任務がない日である。

 

 「今日は、自分専用の武器を登録してもらいまーす」


 任務がない日に何故瑠依に呼び出されたのか、理由を聞いた蓮に対して、瑠依は何やら楽しげな口調でそう答えた。

 影退治に参加するにはまず、自分専用の武器を持つ必要がある。蓮はまだ武器を持っていないので、瑠依と一緒に待ノ間の一室にある武器庫へ行く事になった。


「うわ、広いな…」


 武器庫は鉄製の壁で覆われていて、広さもかなりある。机の上には短刀や拳銃が、壁には人が持つには随分と重そうな大きい武器がずらりと並んでいて、蓮が知らないものも沢山あった。


「この中から選べと?」

「そうよ。蓮は運動神経がいいからどれでも使いこなせるでしょ」

「いや、さすがに武器は手にした事はないんで…」


 蓮は様々な武器を目にして考える。昨日の戦闘では、瑠依はグレイブ、日衣菜は拳銃を使っていた。チームで戦うのだから、違ったタイプの武器を使った方がいいのだろうか。

 突然瑠依が腕の裾を弱い力でぐいと引っ張って、ある武器を指さした。その指の先にあったのは、壁に飾られている大鎌だった。蓮の今の身長よりも少し大きいくらいのサイズをしたその大鎌は、刃が三日月のような大きな孤を描いていて、全体が黒く塗られている。


 さすがに大鎌は重そうだし無理があるだろう、と蓮は言おうとしたが、瑠依がこれ以上ないくらいの期待の眼差しを向けていることに気付き口をつぐんだ。


「ねえ、あの大鎌かっこよくない?この前着てくれたワンピースに絶対合うでしょ。あれにしない?蓮」

「待て待て、理由がおかしい。そもそも、大鎌ってどうやって使うんだよ」

「知らないけど、いいじゃん」

 

 ちょっと待て、という蓮の言葉を全く聞かずに、瑠依は大鎌に手を伸ばして手に取り、それを蓮に渡しながら言った。


 「じゃ、塊を出して。蓮は兎型なんだって?名前を呼んだら来るよ」

 「ああ、そうだけど…呼べばいいのか?チョコ…」 

 

 蓮が名前を呼ぶと、足元に小さな黒い霧が出現した。その霧は瞬く間に兎の姿を形作っていき、蓮が飼っている兎型の塊、チョコになった。

 

 「本当に出てきた。呼んだらどこにでも出てくるのか」


 蓮が驚いている間に、瑠依は屈んで、チョコににこやかに話しかけた。


 「チョコちゃん。蓮の武器はあの大鎌よ」


 チョコは小さな頭をこくりと下げると、再び霧の形になって消えてしまった。


 「勝手に決めるなよ…」

 「いいじゃないの。なんとなく蓮にはそれが合う気がするし」


 蓮は眉を下げて溜め息をついた。瑠依の強引なところは小さな頃から変わらない。





 自分専用の武器を手に入れ、瑠依と別れた蓮は、大鎌を使いこなせるようになる為に、錬ノ間に行く事にした。


 錬ノ間には2つの部屋がある。1つは魔力のコントロール訓練用の部屋で、以前蓮が使っていた部屋。もう1つは武器を使って影を倒す訓練をする目的で作られた、武器訓練用の部屋である。

 蓮が武器訓練用の部屋へ入る。武器を使う分、魔力のコントロール訓練用の部屋より広く、学校の体育館くらいの広さはあった。しかし、広さのわりには人が少なく、蓮以外には1人しかいなかった。数少ない先客の1人は隅の方でぽつんと体育座りをしていた。人の気配に気づいて蓮の方を向くと、小さく手を振った。


「あれは…奈月か?」


 少しはねた黒い髪、眠たげそうな目を見て蓮は思い出す。手を振っている少女は、以前蓮に魔力のコントロールの仕方を教えてくれた奈月癒枝であった。奈月のいるところまでは距離があったので、蓮は小走りで近づいてから声をかけた。


「偶然だな」

「ねー。てか、随分可愛い服着てるね」

「う。これは…色々あってな。そ、それより、奈月も武器の練習?何使ってるの?」


 蓮は苦笑いをして目を逸らし、あまり服の事について聞かれたくなかったので話題を変える事にした。


「私?私は大鎌だよ」

「えっ、マジ?俺も大鎌なんだけど!」


 思いもよらなかった偶然に、蓮は嬉しそうな声で言った。癒枝は先ほどと同じ調子で「そうなんだ」と言うと、腰を上げて体を伸ばす。


「じゃあ、教えてあげようか。大鎌の使い方」

「えっ、いいの?でも、奈月もここにいるって事は練習中なんだろ?悪くない?」

「さっきまで練習してて、もう感覚取り戻したし、問題ない」

「そ、そうか…それなら、よろしく頼む」


 こうして、第二の魔法使い修行が始まった。



 

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