バレンタイン特別編〜向日葵はただ貴方の隣で満面の笑みを浮かべて②〜
普段とは違う恋に悩める乙女をご覧ください。
悩み過ぎてキャラ崩壊してますが……ば、番外編なので大目にみていただけたら嬉しいです!
授業終わりのチャイムが鳴り、静寂に包まれていた教室に徐々にいつもの賑やかさが戻ってきた。
今日は2月13日。
どきどきわくわくなバレンタインの前日だ。
いくらか気分の早い人達はそわそわ落ち着きのない様子を見せている。
……いやでも、本当にちょっと早すぎない?
前回りっちゃんと別れた後、直ぐにママにお願いをしに行った。
ママは迷うことなくオッケーしてくれたけど、案の定というか、なんというか…かなり揶揄われてしまった。正直かなり恥ずかしい思いはしたけれど、これでチョコレート作りに関しては安心である。
残るミッションは彼をバレンタイン当日に誘うことだけ……
「…だったんだけどなぁ」
いつもの遊びに誘うのなら問題なく誘えるのに、なんていうかいざそ、そのデートといいますか、そういうのを意識すると途端に誘い辛くなっちゃったんだよね。不思議だよね!うん!
「うぅ…」
そんな言い訳をしながら自分の不甲斐なさに情けない声を出しながら机へと突っ伏す。
「変なうめき声出して、一体どうしたんだ?」
生気なく机で断末魔を上げていたあたしへと頭の上から声がかかった。
顔を上げるとそこには今回あたしを悩ます原因である雪にゃん、後ろには最近仲良くしてる秋司くん、その幼馴染である奈緒ちゃんもやってきた。
「あたしは今、悩める乙女なの〜。雪にゃん優しくしてよ〜」
「なんだそりゃ?何かあるなら聞くぞ?」
訝しげな表情で雪にゃんはあたしに尋ねてくる。
あたしだって悩んだりするんだよ〜?というか当たり前のように心配してくれるなんて…
もう、そういうところだよ!
「もう、そういうところだよ!」
「え?何がだよ?」
おっと心の声が出ちゃったみたい。
「何でもないよ。と、ところでさ…明日の放課後って空いてたりする?」
うぅ〜…しどろもどろになっちゃった。
でも聞いてやったよ!さあ!あたし達の邪魔をする人はいないよ!笑ってオッケー出してくれていいんだよ!
「明日?……ん〜…すまん、明日の放課後は秋司と遊びに行こうって話してたんだ」
わりいな。って申し訳なさそうに雪にゃんが謝ってくる。あたしは当然オッケーが来るものと思い次の言葉を準備していたんだけど…
……。
…………。
………………。
……………………。
いたよー!邪魔する人!すっごく近くに予想外の人がいたよ!
バレンタインに男2人なんて全くの予想外だったよ!秋司くんダークホースもたいがいだよ!?
ばたんっと今しがた顔を上げた机へとまた頭を落とした。
まさかヘタレてた弊害がこんなところで出るなんて…。
「……そ、総堂君!その事なんだけどごめん!その日は奈緒と出かける予定だったの忘れてて…だからその日は遊べそうにないんだ!」
あたしが絶望に打ちひしがれていると秋司くんが慌てた様子で雪にゃんにお断りの話をしていた。……ん?お断り??
さっきとは真逆にパッと勢いよく顔を上げる。
「…ん?そうなのか??あー…まあ約束があったんなら仕方ないな。また時間ある時に遊びにいこうぜ?」
そう言って雪にゃんは何でもないように返事を返す。
……なに、この大人な対応!相変わらずかっこいい………じゃなくて!!
「へぇ…明日秋くんは私とお出かけのお約束を……ん?
ワタシト、アキクンガオデカケ……?
ええ!?私いつの間にそんな約束したのです!?
初耳なのです!?これは事件なの……むぅ!?」
「はは!奈緒もうっかりさんだね?少し前に約束したの忘れちゃったの?思い出してくれると嬉しいかな?」
(こくこく!)
秋司くんは奈緒ちゃんの方を向いてるから表情は読めないけど、あの奈緒ちゃんの必死な頷き様から何となく想像できちゃうな…。
…でもこれって、うん。もしかしなくても、秋司くんあたしに気を使ってくれたんだよね?
あはは〜・・でも、なんだろ?こういうのすっごく嬉しいな!
「……ぷはぁ!・・・でもでも、リアさんも凄いなのです!バレンタインにデートに誘うな……むぅぅ!?」
「………奈緒、お願いだから少し黙ろうか?」
(こくこくこく!!)
奈緒ちゃんはやっと解放されたと思った矢先、邪気の無い笑みで特大の爆弾を放り込んできた。
秋司くんが直ぐに口を塞いだけど流石にこれは…
「あー…確かにバレンタインか…。でもリアは良いのか?そんな日に俺と出かけて?」
バレますよねー?恥ずかしいからあえてそこは明言はしなかったし、そういう対応になるだろうなって思ってたから…でもね!だとしてもだよ?その日に誘ってるんだから流石に察してほしいかな!?
あたし達が原因のひとつでもあるって自覚してるから強くは言えないけど、その鈍感な所、絶対に元からの部分もあるよね!?
だからあたしは
照れを悟られないようにする為とその果てしない鈍感さに対して
「良いに決まってるでしょーーー!!」
大声を上げるのだった。
何はともあれ、約束は出来たし、ミッション達成……かな?




