バレンタイン特別編〜向日葵はただ貴方の隣で満面の笑みを浮かべて①〜
季節物や番外編はこちらに投稿することになりました。
よろしくお願いします。
「バレンタインなどと…お菓子メーカーの陰謀以外なにものでもありません。そもそもそういうモノに頼らなくてはならないのはご自分に自信がないからで…云々かんぬん………」
ああ〜、失敗したなぁ。
そう遠い目をしながらこれがチャンスとばかりに生き生きと語る目の前の人物からそっと目を逸らし虚空を見つめた。
さて、突然だけど、あたしこと蓮名リアは友達がかなり多い方だ。
それに伴ってそこそこ空気を読むのも得意な方だと自負していたりするんだよね。
あたしとしてはやっぱりそこには、一緒にいるなら楽しい方が良いと思う気持ちがあるし、何よりも・う・後悔するような選択はしないよう慎重になって行動している結果だともいえる。
………にも関わらず、そんなあたしをこんなにもあっさりと後悔の念に駆らせるなんて、さすがりっちゃんとしか言いようが無い。
そう、今目の前で企業の陰謀から始まり果ては国際情勢まで語り出した親友の言葉を適度に聞き流しながらあたしは今しないようにと決意していた後悔に現在進行形で苛まれていた。
ーーおかしいな?あたしはバレンタインの予定について軽く聞いただけなのに…。
でもこれ照れてるだけだよね?実は興味ありありだよね?
耳は赤いし、いつもより会話(一方的に喋ることがそうなのかはちょっと疑問だけど)のテンポが少し早いし。
まあそれにしてもその違いは仲が良い人にしか分からないかな?あたしとか、それにあの人とか…。
「・・・リアさん?聞いていますか?」
「・・え!?う、うん。もちろん聞いてるよ〜!やだなー、もう」
いきなり?話を振られてびっくりした。
一応あたしがいる事を覚えててもらえてホッとする。
「そうですか?けれど日本の今後のGDPとアジア経済の関係性に関するお話に対し、そのような締まりのない表情をされるのは些か不思議なのですが?」
不可解な…と眉を寄せたりっちゃんはあたしを見つめて語外に話を聞いていなかっただろうと、非難してくる。
その態度に締まりがない表情をしていたらしいあたしの表情が引きつる。
ていうか……
え?今そんな話になってたの?
バレンタインは?企業の陰謀はどこにいったの!?
「あ、あはは〜」
内心では驚きと疑問でいっぱいだったけど、これに突っ込むとーー仕方ないですねーーって言いつつもう一度最初から聞く羽目になるから笑って誤魔化すことにした。……それと表情筋も鍛えよう。うん、そうしよう!
さて、紆余曲折あったけどりっちゃんはどうやらバレンタインを準備はしないらしい。
それなら遠慮する事なく、あたしは手作りを頑張って作って渡すことにしよう!まだまだ市販品には遠く及ばない出来だとおもうけど、それでもきっとあ・の・人・は喜んでくれる。それだけは今までの付き合いから確信出来る。そうと決まれば……
「……よし!」
りっちゃんと別れたあたしは気合いを入れ直す。
ママに頼むのは……揶揄われるから余りしたくないんだけど、背に腹は変えられない。だから仕方なく、不本意だけど、今回だけは、そう!今回だけは弄らせてあげよう!
何故か上から目線でそう決意してあたしは昇降口へと向かうのだった。
……あと当日は頑張ってデートにも誘っちゃおう。そしたらきっと、絶対に、忘れられない日になるはずだから。