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モテ回復作戦・・・二人でお昼ご飯食べようね!

「あ、そうそう。作戦の一環としてだけど、私のこと結衣って呼んでいいよ。特別に許してあげるんだから」校舎に入ったところで上履きに履き替えながら言う。


「了解です。女神様」

「ねえ、私の話聞いてたー?もしかして恥ずかしいとかー??」


「了解です。結衣ちゃん」

「『ちゃん』はいらない!許可してない!」



玄関を上ったところで、友人の山崎建人(やまざきけんと)に出くわした。あ、今の馬鹿みたいな会話完全に聞かれてたな・・・恥ずっ。


「おい、上牧」

教室に入って、自分の席につき、ようやく水無瀬さんから解放されるなり山崎が話しかけてくる。

「水無瀬さんと、いったい何があったんだ?あんなに馴れ馴れしく。・・・もしかして付き合ってるとか?」声をひそめている。

「えっと、うん、まあ一応は」水無瀬さんのモテ回復作戦だから、この際イエスと答えるより他ない。


「へえー。上牧についに彼女ができるとはな。何でもっと早く教えてくれなかったんだよ」

「実は昨日の放課後からだから。急に決まって」

「そうなんか。ほんと急だな。告ったのか?」

「うーん、厳密には違うけど、まあそういうことかな」

「歯切れが悪いな。ま、よかったじゃないか。彼女ができて」

「まあな。うらやましいだろ?」

「いや、別に」


「山崎は相川さんが好きなこと知ってるけど、仮に相川さんがいなかったとして、それでもうらやましくない?」

「うん。どうしてうらやましいんだ?」

「だって学校一の美少女だぜ。この前までお前も騒いでたじゃないか。今年も同じクラスになれたー、やったー!とか喜んでたのに?」

「そうだっけ」


・・・どうも想定していたことと違う。俺が水無瀬さんと付き合えばみんなうらやましがると思ってたのに。これではモテ回復作戦は上手くいかないのでは?


既に好きな人のいる山崎だけの話だろうか。しばらくの間もっとカップルらしく振舞ったら、山崎以外のやつらはうらやましがるだろうか。



「それより上牧。お前でさえ彼女持ちになったところで、相談に乗って欲しいのだが」

「ん?なんだ?」

「俺もそろそろ相川さんに告りたいと思う。非モテのお前に聞くのもどうかと思っていたが、彼女持ちになった現実を前にするとアドバイスを乞うしかないだろ。どうやったら上手く行くと思う?」

なるほど、彼女ができたらそういうアドバイスを求められるようになるのか・・・。何だか斬新な気分だ。


相川さんか・・・。昨日は俺の教科書に「好きです」とか落書きしてきたやつね。(←1.2話ご参照ください)


ってなかなかハードル高くないか?何で山崎は先週告白しなかったんだよ。俺がモテ出す前に。

「何で先週、決心しなかったんだよ!?状況はよくないぞ」

「ええー!?そうなのか、いったいどうして?」

「えっと・・・いや、やっぱ今の忘れて。いい方法がないかちょっと考えてみるよ。早速1時間目の授業中に」


「おう、頼んだぞ。いやあ、非モテの上牧にこんなこと相談する日が来ようとは思ってなかった。上手く行ったらカラオケか飯おごるから」


山崎が相川さんと付き合えるハードルを上げてしまったのは、女神様のモテパワー転移のせいだが、俺にも責任がないとはいえない。まさか本当に叶うなんて考えもせずに、「モテモテになりますように」なんて浅はかな願いごとをしてしまったのだから。


ここは山崎のために何とかしないと。



1時間目、現国。いつもはぼーっと過ごす時間だが、今日は珍しく頭を使っている。

相川さんは山崎のことをどう思っているんだろうか。高1の時も二人は同じクラスで、その時は仲がいい印象だった。文化祭で焼きそばの模擬店出したり、期末テストの勉強したり、たまに部活の後いっしょに下校しているという話も聞いたことがある(俺は帰宅部なので直接見たことはないが)。


そういった数々の出来事もあってか山崎は相川さんを次第に好きになっていったようだった。

一方、相川さんの方は・・・正直よくわからない。俺はあまり関わったこともないし、山崎のことをどう思っているかなど見当もつかない。

まずは、現状がどのくらいいいのか、悪いのかを知らないと作戦の立てようもないしなあ。


そんなことを考えているうちに、現国の時間は終わってしまった。うん、山崎-相川さんの考察ができて有意義な時間だっただろう。少しは国語の成績あがるかも。


2時間目、数学。昨日は水無瀬さんに泣かれてしまったことでやむなくさぼってしまったし、今日は真面目に授業聞くか・・・と思ったが、教科書を開いた途端に、その気が奪われた。


昨日の相川さんの書き込みが目に入る。「上牧くん、好きです。付き合ってください。相川美羽より」


消しておくんだった。


山崎よ、これは厳しい戦いになるぞ。


「今日は三角関数の続きをやるぞー。教科書は58ページ」

数学の服部先生。中年のおっさんであまりぱっとしない。たまにキレることもある。


58ページを開く。「三角関数」が一瞬「三角関係」に見えた。・・・毒されてるなあ。

さらには、ページの下の方にまたしても書き込みが・・・!


 上牧くん、昨日は突然ごめんね。返事はゆっくりでいいから、待ってるよ♡

 相川美羽より


数学の教科書も想定外すぎる使われ方をして、たまったものじゃないだろう。隣の席の相川さんにちらりと視線を向けると、向こうでも気になっていたのか視線が合った。


相川さんは恥ずかしそうに目を逸らしてうつむく。

俺は水無瀬さんと(形式上)付き合っているのに・・・。その事実をどうやって知らしめたらいいのだろうか。


モテるってこんなに大変なことだとは考えもしなかった。

山崎には何とか頑張ってもらって、うまく山崎-相川カップルを誕生させて事態の収束をはかるしかない。


そんなことを考えているうちに、数学の時間も終わってしまった。


20分休み。中庭でキャッチボールをしたり、こっそり早弁したりする生徒もいるが、俺は体力温存ということでトイレに行くだけ。


廊下の端で水無瀬さんに会った。

「ねえ、勇真。今日、二人でお昼ご飯食べようね!お天気もいいし中庭で」

「お、おう」

「もちろん、モテ回復作戦の一環としてだけど」

「はいはい、一環でも二環でも何でもいいよ」

一環一環って言い過ぎだろ!

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