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モテ回復作戦・・・いっしょに学校行こ!

「お兄ちゃん、おはようー。朝だよー」

妹の莉奈に揺り起こされる。


「まだアラーム鳴ってないよ」

「私、部活だからもう行くの」


莉奈はバドミントン部に所属している。家での様子とは対照的に、熱心に活動していて、なかなか強いらしい。


「俺はまだあと30分は寝られるのに・・・」

「『莉奈アラーム』うれしいでしょ?起こしていかないと心配だもの。ね?」

「心配なのはお前の言動だ!」

完全に目が覚めてしまった。


予約していた7:30のアラームを止めようとスマホに手を伸ばすと、すでにメッセージが入っている。

こんな早くにメッセージが来ているなんて初めてのことだ。


〔みなせゆい〕今日いっしょに学校行こ!南公園で待ち合わせね!

〔みなせゆい〕もちろん、作戦の一環としてね


わざわざ待ち合わせて行くのか・・・。そんなことするの小学校以来だぞ。


制服に着替えて、階下に降りて、母さんが用意してくれた朝ごはんを手早く食べる。いつも通り、目玉焼きとサラダ、トースト。


妹はすでに半分食べ終えている。なぜか寝間着姿のままで。


「着替えないの?」

「ん?いっつも朝ごはんの後だよ。よく目を覚ましてから着付けないとね。女の子はおしゃれが大事なの」

制服って着付けするほどのものなのか・・・?

「お兄ちゃん、着付け手伝ってよ」

「誰が手伝うか!!」



5分後・・・。

「いってきます」

「いってらっしゃい」


住宅街のカーブした並木道を歩いて南公園へ。

そういえば待ち合わせ時間書いてなかったけどいいのかな。


案の定、ということか、南公園には誰もいなかった。

少し待ってみるか・・・。


ベンチに腰掛けると、朝の太陽が心地よい。まだ眠いので、スマホをいじる気にもなれず、ぼーっとしていた。


と、植え込みの中から猫が一匹出てくると、あたりを探ってから俺の座っているベンチにぴょんと飛び乗ってきた。

手を伸ばせば触れそうなくらい近い。

そして、もう一匹現れ、さらにどこからともなくもう一匹・・・。


俺ってこんなに動物になつかれる体質だったかなあ。

いつの間にか五匹の猫に囲まれていた。


「おはよー、勇真。わー、猫ちゃんがいっぱいだ」

ブランコの向こうから水無瀬さん。

「お、女神様だ。願いごとをかなえて自らの力を失った女神様だ」


「むうー!・・・勇真は朝一からモッテモテだね。三毛猫たちに」

「いや、こいつらただの親戚だから」

「嘘ばっかり。知ってる?集まってるのみんな三毛猫だよね・・・」

「そうだが?」

「三毛猫ってみんな女の子なのよ。オスの三毛猫って数万匹に一匹しかいないの」


そ、そうなのか?そんな事実があるのか?急になついてくると思ったら・・・これも女神パワーのせいか。恐るべし、女神様の力だ。



水無瀬さんと並んで高校に向かって歩き出す。一人の時と違って、歩調を合わせるのに少し戸惑う。


「勇真、昨日はカレーありがとうね。お礼にって言っちゃあれだけど、今日お弁当作ってきたからいっしょに食べよー」

「え?」

「カップルだから普通でしょ。私だって勇真のカレーに負けていないんだから」

「別に対戦しようって言った覚えはないぞ」

「うぅ・・・嫌ならあげない!」

「いや、もらうよ。せっかくだし、二人分食べるわけにはいかないだろ?」


スーパーの角を曲がり、坂を上ったところに学校がある。あたりは同じ高校の生徒でいっぱいになってきた。

水無瀬さんといっしょに通学してたら目立つかなーと思ったが案外そうでもない。みんな足早に校門に吸い込まれていく。


「みんな私たちをどんなふうに見てるかなぁ」

「別に何とも思ってないだろ」

「それじゃあ、恋人ごっこ作戦にならないじゃない・・・もっと目立たないと」

「どうやって?」

「教室まで手、つないでいく?」

「遠慮しとく。歩きにくいから」


「ほんとは『うん』って言いたいんでしょ」

「どんな邪推だよ。昨日妹に悪い影響受けたんじゃないか」

「じゃあ何で私の右手の方ちらちら見てるの?」

「別に、手なんか見てないよ。見てるのはその下」


「スカートじろじろ見るなんて勇真いやらしいね!」

「スカートで止まるな。足元だよ!靴紐ほどけかけてるよ!!」

「あ、ほんとだ。ちょっとお弁当持ってて」

校門の端で結び直している。俺は若干手持ち無沙汰に待っていた。


水無瀬さんが靴紐を結び終わって、しゃがんだまま手を差し出した。起こして、ということらしい。

しゃーないな。右手をつなぐと、軽く握られた。女の子の手ってこんなにふんわりしてるんだ。手をつないだのも幼稚園以来か・・・。

軽く引っ張って立ち上がらせる。そして、何事もなかったかのように、弁当袋を返した。


「手をつなぎたいのは水無瀬さんじゃないの?モテ回復作戦って結構リスクあるよな。もしかして、そのうち本当に好きになったりとか?」

「そんなことありうるわけな・・・くもないか・・・って私何言ってるの!?モテ取り戻したらこんな作戦すぐやめるんだから!!」

「冗談で言っただけなのに。そんなに弁当振り回したら中身が寄っちゃうぞ」



校舎に入った。高2の教室は3階だ。

ふう、通学するだけでもけっこう事件があった。いつもと違って新鮮な気持ちすらしてくる。


「勇真、さっき言ってたリスクっていうのは確かにあるね。でも、それはお互いさまよ」

「・・・」

顔を見合わせる。一瞬お互いの目に火花が散った。


モテ回復作戦・・・面白くなりそうな予感だ。

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