見せられない水着はB70
夏休み最終日。俺は山崎と落ちあって、駅前のプールに向かっている。
宿題の方は、みんなの助けもあって、なんとかコンプした。莉奈の方は、結衣や麗華も頑張ってくれたけど、まだもうちょっとらしい。今日は珍しく、机に向かっているのをいいことに、俺はそそくさと家を出てきた。
あたりはツクツクボウシが鳴き始めているが、この時期にしては驚くような暑さ。山崎もスポーツドリンクのペットボトル片手に、暑そうに歩いている。
「相川さんは一緒じゃないのか」
「おう、プール行こうって誘いづらかった」
「なんでだ?普通に誘えばいいじゃん」
「いや、やっぱその、プールって水着なわけだろ」山崎が目尻を下げている。
「だからどうしたんだ?俺は普通に、結衣を誘ったぞ。水着、着てほしいって言って」まあ、俺の場合は下心あってではなくて、結衣の罠外しのための戦略だったけど。
「水無瀬さんはそれでOKだったのか?それなら、俺も美羽にそう言えばよかった」
「上手くいくかはケースバイケースだから保証はしないけど」そう言いながら、俺は、やっぱり山崎が相川さんを誘わなかったのは正解だったと思った。
というのも、今日のメンツは結衣、麗華、奈緒。この中に俺が加わるわけだけど、さすがに男子一人ではあんまりだからと思って山崎を誘ったのだ。で、もし相川さん連れてきたとして、山崎なら、絶対に麗華や奈緒に目移りして・・・。相川さんを怒らせるに決まっている。これまで、そういう前科多すぎだし。
駅前で少し待ってると、女子勢が登場。俺は山崎を紹介する。
「同じクラスの山崎だ。ま、悪いやつではないから」
「いいやつだって言ってくれてもいいんだぜ?」と山崎。
「胡散臭いなあ。ま、これでも一応彼女持ちだから安心してくれ」俺は麗華と奈緒に向かって言う。
「山崎先輩、大宮麗華です。よろしく、です」と、人見知りの麗華がちょっと、はにかんでいる。
「山ちゃん、よろしくねー。高三の新庄奈緒子です。奈緒って呼んでね。『子』はなしで」奈緒がいつものテンプレ自己紹介をする。
今日、プールに案内してくれるのは、麗華。いつも行ってるところらしい。一同が案内されたのは、駅前の豪華なホテルの3階。
「ここが、私のいつも通っている会員制プールです」
「俺ら会員じゃないけどいいのか?」
「大丈夫ですよー。会員の紹介なら。ここ、人も少なくて安心ですよ。ね、結衣ちゃん」麗華が結衣の方を向く。
この前の心拍数勝負は2勝1敗で俺が勝ったのに、その後も結衣はなかなかプールに行くとは言わずだった。だけど、麗華がどうやって説得したのか、とにかく今日は一緒にいる。
・・・ちょっと緊張気味のようであるが。
「う、うん。人が少ないなら」と結衣がなぜか俺の方を見て言う。
俺は山崎と男子更衣室に向かい、素早く水着に着替えて、プールサイドへ。大きな25mプールと、リゾートホテルにあるような、波波した形の小さなのが一つ。プールサイドもなんか綺麗でリッチだ。小さいプールにはウォータースライダーもあるし。
大きな窓ガラスから光が差していて、水面がキラキラと光っている。
「おー、人少なっ。ほとんど貸切じゃん。こっちの大プールは泳いだり競争したりする感じか。あっちの小プールは遊ぶ感じだな」と山崎。女子勢はまだ現れていない。
「先泳いでようぜ。あ、準備体操は水の中で」俺と山崎は大プールに飛び込んで、ストレッチを始める。一気に暑さが吹き飛んで心地いい。
しばらくして、プールの端からみんなが来た。まず、麗華。ひらひらして優雅なブルーの水着。なんか水着には見えないくらいにひらひらしている。・・・にしても、バストがなかなかである。
続いて、奈緒がスク水姿で。ちなみに、こちらも、麗華ほどではないにしろ、なかなか。
で、奈緒に隠れるようにしているのが、この前の黄色い水着の結衣。奈緒にぴったりくっついて隠れてるので、ほとんど見えない。
「おい、上牧」山崎が準備体操を止めて絶句している。
「な、相川さん連れてこなくて正解だったろ。とにかく、あまりじろじろ見るなよ。ちなみにだけど、麗華はいいとこのお嬢さんだから、手を出したりすると、執事に暗殺されても知らないからな。あと、奈緒さんは喫茶店・・・いや、料亭の跡取りだから、お前みたいにカップ麺とポテチでできてるようなやつは門前払いだから」俺は急いで防衛線を張る。
「みんな、合流できたね」一同、大プールに引き連れてきた麗華、ちょっと得意げ。
「すごい豪華なプールだな」と俺。
「早速泳いでみましょうか。私、背泳ぎ得意なんですよ」と麗華。
「私はそんな上手くないけど、クロールなら」と奈緒。
「結衣、なんでそんな奈緒さんにひっついてるんだ?」俺が声をかけると、結衣はきゃっと言ってもっと奈緒にぴったりくっついた。
「な、なんでって、別になんでもないし・・・」
麗華が隣のレーンにじゃぶんと飛び込んできて、ふわーっと背浮きをして見せる。水着のフリルが水流で広がる。顔だけでなく、胸もちょっと、いや、だいぶ水面から出ている。
山崎が隣で鼻血を出しそうにしている。
「ほらほら、結衣ちゃんも泳ごうよー。恥ずかしがらずにさー」奈緒が結衣を引き離そうとする。
「う、うん」
麗華が背泳ぎでちょっと先に進んだあと、奈緒と結衣が隣のレーンに入ってきた。
「私はクロールかなー。結衣ちゃんは、なに泳ぐ?麗華ちゃんといっしょに背泳ぎとか?」
「い、いや、私もクロール、か、な」結衣が背泳ぎ麗華のバストをちらっと見たのを俺は見逃さなかった。やっぱり、そうなのか。胸コンってやつか。俺は別にそんなふうに思う理由があまり分からない。麗華や奈緒が大きすぎるだけだって。
「おい、山崎、25m競争しようぜ」俺は山崎が麗華に釘付けになっているのを見て慌てて声をかける。
「お、おう」半分上の空。
「じゃあお前、隣のレーン行け」急いで山崎を女子勢のレーンから遠さげる。
「よーい、スタート」
二人とも全力で泳ぎ出す。やばっ。水飲みそう。いつもより身体に力が入ってる気がする。
反対側までなんとか泳ぎ切ると、山崎はとっくにゴールしていて、二つ離れた女子レーンをやっぱり見ている。
「おい、上牧。俺は今日まで生きてきてよかったよ」
「は?」
「俺の分析では、大宮さんがDカップ、新庄さんがDに近いC、水無瀬さんはギリCだな」
「何、分析してるんだよ!」
ん?結衣はBじゃなかったのか?あの水着にはそう書いてあったけど。
実は、まだ水着姿の結衣をよく見ていない。ずっと隠れてるというのもあるけど、なんだか、視線をやりづらい。麗華とか、奈緒とかなら別にそんなことない、というか気にならないのに、不思議である。
「おい、山崎。お前の分析は合ってるのか?」
「なんだ、上牧も乗ってるじゃん。エロゲで鍛えた俺の目をなめるなよ。なんならもっと詳しく、センチメートルでも言えるぜ」自信たっぷりである。
と、いうことは・・・。女神ちゃんはもしかして、もしかして・・・成長した??




