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Dear my sister

「ただいま」

家にて。いつもより1時間も遅くなった。学校から家までは徒歩で20分弱。近い上に帰宅部なので帰ってからたっぷりと時間がある。家は4LDKの戸建で、両親と妹がいても狭くは感じない。


「お兄ちゃん、今日は遅かったね。どこ行ってたの?」

今月から中学2年生になった妹の莉奈が出迎える。今日は部活がないのか、珍しく俺より早く帰っている。なぜかエプロン姿だ。


「別にどこにも」

「またまたー。莉奈ずっと待ってたのに」


「お、おい。急にどうしたんだ?」

「何がー?」

「いや、この前まで俺が帰っても一言も口きかなかったじゃん。難しい年ごろはどこへ行った?」

「うーん、わかんないなぁ。お兄ちゃん、今晩何食べたい?」

「お前が作るのかよ」


ちなみに、妹は料理がド下手である。卵焼きひとつでも焦がしてしまうくらいで、今までまともにできたものと言えば、牛乳を温めて作ったココアくらいだ。

「うん、今日はお母さん遅いから、何か作っておいてだって」

それって、母さんは間接的に俺に作れって意図してるな・・・と思いながら、ため息をついた。


「お兄ちゃんの好きなもの何でも作るよー」

「じゃあ、カップラーメンで」莉奈にはちょうどいいレベルだろう。


「わあーん、せっかく意気込んでるのに、見くびられてるう!」嘘泣きをする。

「そりゃそうだろ!他に作れるのかよ」

「お兄ちゃんいじわるだから、もう作ってあげない!」

「すぐに拗ねないの。小学生か!・・・わかったからいっしょにカレーでも作ろう」

「やったあ」


中身はほんとに小学生だ。


それにしても、つい最近まで俺が何を言っても「うん」か「は?」のどちらかのリプライしか選択肢がなかったものが、どういうわけだろう。

これも、例の女神様の力に違いない。


このまま、莉奈が「お兄ちゃん、大好き」とか言い出したらどうしよう。女神様にとんでもない力を授けられてしまったものだ。


「お兄ちゃん、大好き」

早速かよ・・・。

「なんだ、そのいきなりステーキみたいな唐突さは」

「今晩ステーキ食べたいの?」

「会話のやり方知ってるか?」

「言葉のキャッチボールでしょ?ボールを受けたら投げ返すっていうやつ。簡単じゃない」

「ボール受け取るごとに他のボールにすり替えてるだろ!そのまま返せよ」

「いいよ!わかった!お兄ちゃん、大好き。はい、『莉奈大好き』って返して」

「もういいわ。カレー作ろう」


じゃがいも、にんじん、玉ねぎ・・・あとは牛肉にカレー粉(ルーではなくて、粉のやつ。我が家のこだわりだ)。

「まずは牛肉を炒めて、と」

手早く鍋を加熱して油をひく。

「莉奈は玉ねぎ切っといて。手を切らないでね」

「わかったー」


牛肉の香ばしい香りが立ち込めてくる。その間に俺はじゃがいもとにんじんの皮をむいて角切りにした。

莉奈の方は・・・。


「おい、いつまで玉ねぎ切ってるんだ。それじゃみじん切りじゃないか」

「莉奈ギブアップ。さっきから涙が止まらないんだけど。助けてー」エプロンで目を拭っている。

「あとはやっとくからスマホででも遊んでいなさい」

いわゆるスマ保育。何で俺の年齢でスマ保育してるんだ!?普通忙しい主婦だろ、と、そんなことを思いながら濡れたエプロンを取り上げてキッチンから追い出す。


ふう、やっと邪魔がなくなった。野菜(じゃがいもとにんじん)とみじん切りの玉ねぎを加えて煮込みながら一息ついた。



「お兄ちゃん、『みなせゆい』って誰?」

「え、何で知ってるの?って勝手に人のスマホ触るなー!」

「スマホで遊んでてって言うから」

「誰が人のスマホで遊べって言った!てか何で暗証番号知ってるの?」

「お兄ちゃんの誕生日知ってるもん」


ドヤ顔で言うな。


・・・

カレー粉を加えて、隠し味にウスターソースをちょっと。チョコかヨーグルトも入れてみようか。


家中がいい香りでいっぱいになってきた。もうすぐ7時。順調、順調。

鼻歌を歌いながら鍋を混ぜる。



莉奈が急に静かになった気がするが・・・。リビングで何をやってるのだろう。


「ねえ、お兄ちゃん。今日みなせゆいっていう子とデートしてたでしょ。お兄ちゃんの裏切り」

ふくれている。


「違うって。困りごとがあるって言うから相談に乗ってただけ・・・。ん?何でお前が知ってるんだ?あ、俺のスマホが」

急いで莉奈の手からスマホを取り上げる。

「あー、いいとこなのに」



スマホで映画でも見ている、と言うわけではなくて、開いているのはメッセージアプリ。

俺になりすましてトークをされていた・・・。


〔みなせゆい〕さっきはおごってくれてありがとう。メロンソーダおいしかったー。明日からよろしくね。

〔上牧勇真〕なんのこと?

〔みなせゆい〕上牧の作戦

〔上牧勇真〕それって何だっけ?急に忘れた

〔みなせゆい〕とぼけてるってことは・・・急に恥ずかしくなったんだね!実行するのが

〔上牧勇真〕今日カレー作ったんだけど、食べに来ない?

〔みなせゆい〕は?

〔上牧勇真〕今日妹と二人だけなんだけど、作りすぎちゃって

〔みなせゆい〕うーん、ちょっと考える



「莉奈、勝手にトークをして、いったいどういう気だ。え?」

「あー、ごめんごめん。怒らないでー。お兄ちゃんに彼女できたなんてあんまりびっくりして・・・。ねえ、明日からもう莉奈と一つ屋根にいられないの?新居はどこ?」

「何でそうなる?だいたい彼女じゃないって言ってるだろ!調子に乗ってると痛い目にあうぞ」

「わあーん、莉奈を叩かないで」

「じゃあ、晩ご飯抜きで」

「えーん」


めんどくさい奴だ。

それより、早く水無瀬さんの誤解を解かないと。といっても、なりすましの被害に会ってましたとも言いにくいし、困ったな。

とりあえず、「ごめん、今のはちょっとした手違いで」と打ち始める。


ところが返信するより早くに・・・。

〔みなせゆい〕うちもオッケーだから今から行くね!


「莉奈、お前が返信したせいで水無瀬さん来るって」

「よかったー。あたしもお兄ちゃんの彼女に知り合っておかないと。お互い秘密はなしでね!」

「だから、彼女じゃないって!!」


もうどっちでもいいか・・・。

作者はポイントを食べて生きております・・・


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