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思い出の写真たち@サントノーレ

次の日、朝目を覚ますと、11時半。ベッドから起き出して来て、部屋のカーテンを開くと、携帯が鳴った。

「もしもし?」

「もしもし?お兄ちゃん?莉奈でーす。起きたばっかしだね。早くサントノーレに来てよ」

「サントノーレ?今日、月曜だけど、店定休日じゃないのか?」

「うん。お休みだよ。だけど早く来て。もうみんな集まってるから」

みんな集まってるって?よく分からんがこれ以上の説明を求めても無駄だろうし、行ってみるか。

急いで着替えて、髪を撫でつけ、大急ぎで歯を磨いてコーヒーを一杯飲んでから自転車に飛び乗る。


街路樹から蝉の声がすさまじい。今日も夏休み、明日も明後日も・・・。素晴らしいな。


奈緒のケーキ屋兼喫茶店「サントノーレ」に到着。店が休みなので、喫茶店側の裏口から入る。


「おはよう」

「あ、勇真くん来た。今みんなで昨日の反省会してるところだよー」奈緒が陽気に言う。喫茶店の真ん中のテーブルを占拠して、莉奈、結衣、奈緒、麗華がいる。テーブルにはシュークリームがたくさん乗ったお皿と、なぜか百円玉がたくさん積み上げられている。


「反省会って?」

「ほら、勇真も見てみて。昨日の写真がたくさんあるから。どれも素晴らしくよく撮れてるよ。莉奈ちゃんセンス抜群だね」

インクジェット紙に印刷された写真がテーブルにたくさんある。


結衣とまむし汁の大鍋を覗いている写真

奈緒に目隠しされてかき氷食べさせられてる写真

麗華と散歩している写真

奈緒が膝に乗ってる写真

結衣と手を繋いで歩いている写真

・・・


「こ、これ、全部莉奈がこっそり撮ってたのか?!」たまげてしまった。そうか、これが莉奈の策略だったのか。

「お兄ちゃん、ご名答。でも莉奈とっても寂しかったよー。みんな楽しそうにしてるのに、私は写真係なんて・・・」

「でも、結衣ちゃんと上牧先輩が花火見てる間、ずっと一緒に縁日回ったでしょ!かき氷も、たこ焼きも、りんご飴も、まむし汁も食べたし」と麗華。

「うん、いろいろ奢ってくれてありがとう。昨日はほんとに楽しかったよ!」

「勇真くんは知らないだろうけど、私も三杯目のまむし汁飲んじゃった。麗華、帰り道でいちゃいちゃしちゃってごめんね」奈緒が楽しげに謝っている。


「ええーっ?みんな莉奈がいたこと知ってるのか?俺は妹が来てるなんて知らなかったぞ。誰か説明してくれ」

「じゃあ、私が」と奈緒。

「・・・始まりはね、莉奈ちゃんが『私もどうしてもバイトしたい!』って言い出したことよ。夏休みで金欠なんだって。でもうちでも中学生はバイトできないし、それで私、うまい仕事を考えついたんだ。みんな夏祭りで『自然な』写真撮ってもらったら買ってくれるんじゃないかなって。で、莉奈ちゃんが撮った名作、一枚百円なの」

それで、百円玉がいっぱい積み重なっているのか・・・。それにしても、奈緒はいつも悪知恵に欠かないからなあ。


「奈緒さん、つまり、奈緒さんが妹に隠し撮りを教えた。で、なぜか知らんがその写真を欲しいってやつがいる。つまりそういうことなんですね」

「隠し撮りって人聞きが悪いねえ。あくまで自然な写真よ。ほら、カメラ向けられるとどうしてもそういうの撮れないでしょ。これとかすっごい上手いと思わない?」

奈緒が俺の上に乗っている写真・・・。


「奈緒さん、それは一番に焼き捨てないといけないやつです」

「大丈夫、ここの写真は全部ここにいる人たち限定だから。ね?」奈緒が見渡すと、みんなが頷いている。


「そういう問題じゃないけど」無視して俺が反論する。

「ま、せっかく行った夏祭りだし、勇真もじっくり見てみたら?一つくらい気に入るのがあるかもよ」結衣がテーブルに散らばった写真を束ねて手渡す。



いろんな写真があるなあ。やばいのもあるけど。だいたいみんな笑顔だ。莉奈が麗華や奈緒と写っている写真も多い。みんな楽しそうに、りんご飴や、綿菓子を手に写っている。

まむし屋のじいさんがニコニコして俺と握手してる写真まであるし・・・。「商売神の化身」とかなんとか言われたやつ。これもちゃっかり撮られてたのか。全然気づかなかった。


ん?最後の一枚でふと目が止まった。結衣と一緒に河原で撮った写真。これは莉奈じゃなくて、結衣が撮ったはず。わざわざ一枚だけ印刷してきたのだろうか・・・。


こうして改めて見ると・・・女神ちゃんやっぱりかわいいな。こんな子と花火見ていたなんて・・・ちょっと信じられない。それにしても昨夜は不思議だったなあ。記憶の底から出てきた、あの大泣きしていた少女が結衣だったなんて。


あまり眺めていると心を読まれそうなので、急いで写真をまとめて莉奈に返した。


「どう?勇真、気に入ったのあった?」結衣が期待顔で尋ねる。

「そうだなあー。一枚だけ持っとこうかな」財布から、昨日のお釣りの百円玉を一枚取り出し、莉奈の前に置く。

「え?どれどれ?」莉奈が写真を広げる。

「私と一緒の写真に決まってるでしょ」と奈緒。

「上牧先輩は、私とお散歩している写真が一番気に入ってます」麗華が口を出す。


「俺が気に入ったのはこれだけど・・・」


引き出した写真は・・・「まむし屋のおやじと握手している写真」


「えーっ?!それなの?」

「上牧先輩、意外すぎます」

みんなの驚く顔を眺めながら俺はその写真を大切にカバンに入れた。



帰り道・・・。

結衣が俺の方をちょっと見ながら歩みを緩める。


「ねえ・・・」他のみんなと少し距離が開いたところで、耳元に囁いてくる。

「ん?」

「あの・・・花火と一緒に撮った写真・・・」結衣がちょっと傷ついたような顔をする。

「・・・あれ、ほんとにいらないの?」そう言って結衣が急に真っ赤になった。



「・・・そうだな。あれは莉奈が撮った写真じゃないだろ。だから莉奈に百円払わなくてもいいかなと思って。後で結衣に送ってもらおうかなと思ってたから」

「・・・」

「なんだよ?」

結衣がもじもじしている。真夏の太陽が、首筋に眩しい光を投げかける。


「うん!それじゃ、後で送るわ」結衣の顔が輝いた。

「おう、よろしく」

「うん。それと・・・また一緒にお出かけしようね!夏休みもその後も・・・」

読んでいただき、ありがとうございました。

また会う日まで!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しそうに書いていらっしゃると感じました。 私も見習いたいと思います。 [気になる点] 物語として完結していないように感じます。 またいつか続きがあることを期待します。
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