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温泉リフレッシュ・・・お風呂でドッキリ?!

「あ、結衣ちゃんと勇真くんだ。二人きりで何やってたの?」

「奈緒さんの期待することなんか起こってませんよ」


奈緒と麗華がロビーの売店で買ったお土産袋を抱えて部屋に入ってくる。


「上牧先輩、炭酸せんべいをたくさん買ってしまいました。いろいろな種類があったものですから。プレーンにチョコに、抹茶に、ブルーベリー、黒ごま・・・」

麗華が一つずつ取り出す。


「全種類コンプしたのか?」

「あ、先輩、お見事です。ついつい買ってしまいました」


そういえば、俺も帰るまでにお土産買わないと。莉奈がうるさいから。今回の旅行でも、バイトのリフレッシュ旅行だって言うのに、「私も連れてって!」とか、「私だけはみってるぅー」とか、「お兄ちゃんのケチ!!」とか散々騒いでたからな。



「これから部屋で何する?」

と奈緒。

「私、キャンプファイヤーしてみたいです!」

「いいけど、麗華ちゃん、旅館が燃えちゃうよー」


「トランプとかでいいんじゃない」

俺がまともなのを提案する。

「悪くはないけど、普通すぎるよねー」

と結衣。


「梅ちゃん何か面白いアイデアない?」

麗華が、困った時の梅ちゃんを発動する。梅田さんは、ソファに座ってシャンパングラスを傾けながら、どこから手に入れてきたのか、キャビアに舌鼓を打っている。


「面白いアイディア、でございますか?そうですね・・・お部屋の露天風呂など、いかがでしょうか。お一人ずつお入りになり、残っている方は出て来られたタイミングでドッキリを仕掛けるなどされては、ユーモラスなご遊戯になるのでは?」


「梅ちゃん、やっぱり天才だね!」

麗華が喜んでいる。

「それ、面白そう!」

結衣と奈緒も賛成する。


「梅ちゃん、酔ってないよね」

俺はほとんど空になったボトルを見て尋ねる。


「どうぞ、ご心配なく。私は身の程程度に嗜んでおりますから」

「上牧先輩、梅ちゃんはめちゃくちゃお酒に強いからね」

身の程が常人レベルではないんだな・・・。



「じゃあ、誰から入る?あみだくじで決めようか」

結衣がホテルのメモ帳に線を引く。


「はい、どうぞ」


あみだくじを引くと・・・。


1番 俺

2番 奈緒

3番 結衣

4番 麗華


に決定した。


「勇真からか。お湯、汚さないでね」

と結衣が釘をさす。

「掛け流しだから大丈夫だろ。お湯、循環してないから。夕飯からあまり経ってないし、すぐ出るぞ」


タオルを用意して、部屋に特設の露天風呂に入る。



ふうー。リラックスするなあ。大浴場のように広くはないけれど、ここなら一人だし、誰にも邪魔されずリッチな時間を過ごせそう。

ちょうど満月が美しく輝いている。日常を忘れてしまいそうだ。テストも終わって、もうすぐ夏休みだし・・・これが「今」なんだな。素晴らしいひと時だ。


すぐに出ると言ったものの、つい長湯してしまいそうだ。



ガラリ・・・と、どこからか音がして・・・。


「うわーっ!!覗くなよ!」

「うふふ、もういいかなと思って。五分後くらいに出てきてね」

結衣の顔が消える。


湯船に浸かっててよかった・・・。全く、この世で心休まるところはないのか・・・。後で同じこと絶対やり返してやる!ってそれはいけないか・・・。



風呂を上がり、再び浴衣を着て部屋に戻ると・・・。

真っ暗だ。


なるほど、お化けか何かのふりをして驚かそうって言うのか。そうは行くか・・・心の準備はできている。どこからでも出てこい!



しかし、誰も何もして来ない。物音一つしないし。ん?もしかして、誰もいない?


「おい、電気つけるぞ」

暗闇に話しかけて、ブルーに光る照明ボタンを押す。


「うわ!!!」

床に奈緒と麗華が倒れている。顔と髪にべったりと血がついているし。



・・・ケチャップの匂いがひどいが。


死んだふりか。ベタだなあ。


「おい、起きろよ。絨毯にケチャップ付いたら怒られるぞ。だいたい、どっから手に入れたんだ?」

奈緒と麗華を突っつく。


「勇真くん、意外と冷静だったね」

「先輩、もっと驚くかと思いました!」

普通にびっくりして声を上げたけど・・・。二人はどんなリアクション期待してたんだ?


「えーっと、俺の番は終了な。ん?そういえば、結衣は?」

「結衣ちゃんの出番もあるよ。ほら、ベッドの中!」

奈緒が指差す。確かに、掛け布団が少し盛り上がっている。


「あれめくったらまだドッキリがあるのか?」

「さあー?どうでしょう??それはお楽しみ」

奈緒が楽しくて仕方ないという顔をする。


めくりにくいな・・・。いったい、どんな姿でいるんだ?脱いでさえなければ何でもいいけど。



別の意味でドッキリしながら、掛け布団をそっとめくってみると・・・。


普通に浴衣姿だ。眠っているふりをしている。

一人だけケチャップも付いていないし。


両手をお腹の上に組んで、なぜか、かじりかけの青リンゴを一つ握っている。


「・・・ちょっとわからない。何でリンゴ持ってるんだ?」

奈緒と麗華の方を見ると、二人とも顔を見合わせて、真っ赤になってクスクス笑っている。

「何だよ?俺は全然わからないが」

「えー?勇真くん、知らないの?白雪姫のお話」

「白雪姫?確か、毒リンゴ食べて死んだやつ?それで、リンゴ持ってるのか。死んだふりにしても、わかりづらすぎだろ!」

そういえば、女神ちゃんはメルヘン大好きだったな。忘れていた。


後ろのケチャップ顔の二人がますますクスクス笑いをする。


「勇真くん、早くしてよ」

「そうです。先輩。白雪姫を早く起こしてください」


「結衣?早く起きろよ。ネタはわかったから」

腕を突っつく。



「・・・」

起きない。


「勇真くん、それではダメですね」

「先輩、ダメですね」

麗華が真似する。


「はあー?何を期待してるのか?」


「お話、知らないの?」

「起こし方、知らないんですか??」


白雪姫、白雪姫・・・。小さい頃、ディズニーか何かで見たっけ。確か、王子さまが現れて、キスをすると、目がさめる・・・。


うわっ!やられた!!そんなことが出来るかよ!まんまとはめられた。


「あ、思い出したみたいね。赤くなってるから」

「先輩、思い出しましたね」


そんな期待顔されても・・・。うぐ、仕方ないな。乗るしかないのか。

このアイデア出したやつ、後で覚えてろよ!!


ベッドにかがみこんで、結衣の頰に軽くキスする。うう、恥ずかしい・・・。後ろで奈緒と麗華が「おー」とか言って手を叩いてるし。


「おはよう、勇真。いい湯だった?」

結衣がぱっちり目を開く。


「・・・そこは、『王子さま、助けてくれてありがとう』だろ!はい、俺の番終了な。早く次行こうぜ」

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