温泉リフレッシュ・・・秘密の部屋割??
「へえー、ここが源泉か・・・」
大きな釜のようなものがあり、そこからパイプが何本か伸びている。あたりにはもうもうと湯けむりが上がっていて、温泉のにおいがする。
「有馬温泉の源泉は数ある温泉の中でも珍しく、90℃もあるんだって。しかもあたりに火山もなくて、どこから来ているのか謎らしいよ」
「へえー、奈緒さん博識だなあ」
「太平洋の海底火山から来ているって説もあるよ」と結衣。
「ほんとか?こんな遠いところまで?」
「地底人が運んでくれてるんじゃない?」と麗華。
「あははー。確かに地下はつながっているからね」
「ねえ、勇真。地表は海と陸に分けられていても、地下ではつながってるなんて、なんだかロマンチックじゃない?」
結衣が一歩近づいて囁く。
「そうかな?あまりわからないけど」
「もうっ。勇真は風情がわからないのね。ほら、私たちの関係みたいじゃない?って言ったら少しはわかる?」
「俺たちの関係?ますますわからなくなった・・・」
「勇真?ほんとはわかってるんでしょ・・・」
結衣が耳元で囁いてこっそり手をつないでくる。
源泉でも必殺技発動かよ?!落ち着いていられない・・・。全身が火照ってくるのを感じた。
「ちょっと、やめろって。みんなが見るって」
「じゃあ、あとかな??」
畳み掛けてくる。やばいやばい。麗華と奈緒は源泉に張り付いていて気づいていないけど。後ろには観光客がいるってのに・・・ん?なんかまた見知っている人影がしたような?
山崎と相川さん?やっぱり来てたのか?
「ねえ、あっちに水まんじゅう売ってるって。食べてみようか!」
奈緒が目をきらきらさせている。
「水まんじゅう?わかんないけど、行ってみよ」と結衣。
「・・・なるほど、葛粉の中にあんこが入っているのね。すっごい透明でほんとに水みたい〜」
「素敵ねー。サントノーレも和菓子に進出してみようかしら。和洋折衷で、水まんじゅう&ほうじ茶ラテとか」
「いいですねー。ちなみに制服も和服になるんですか?」
「うん。フェア期間中は制服も刷新しないとね!麗華ちゃんは和服着れるの?」
「いいえいいえ。私は和服はちょっと似合わないので」
視線を胸に落としている。なるほど・・・胸大きいし、確かに麗華&和服はちょっと違うか・・・。
結衣は雰囲気が和服って感じじゃないし、奈緒が一番似合いそう。物腰が落ちていていて大和撫子って感じだし・・・。
「勇真、何ぼーっとしてるの?」
結衣に責められる。
「いや、結衣の和服姿想像してたら、案外似合わないなって」
「もうっ、失礼ね。私、勇真が思ってるよりはおしとやかなのよ」
「ごめん、それはおてんばの言い間違い?」
「ううー、勇真のくせに・・・」
「あはは」
「そういえば、梅ちゃんは?」
いつの間にか梅ちゃんの姿がない。源泉まではいっしょだったはずだが・・・。
「あ、先に旅館行くって。車停めなきゃいけないし」
「じゃあ、俺たちもそろそろ行こうか。温泉街も一通り回ったし」
みんなで予約しておいた旅館「泉豊荘」。ちょっと高めだけれど、普段のアルバイトとテストの骨休め(?)だし、麗華は安宿不可仕様だからな。
古めかしい門をくぐり、小さな庭園の飛び石を渡って玄関に入る。
梅ちゃんが出迎える。
「泉豊荘にようこそ、おいでくださいました」
「宿屋の主人になったの?」
「は、今日限りでございますが。麗華嬢さま、みなさま、チェックインは済ませておきました。早速お部屋へどうぞ」
「えっと、予約したのは和室Aを二部屋だったな。確か2階だったような」
テスト合間にみんなで集まって三人部屋(女子部屋)と二人部屋(俺と梅ちゃん)を予約しておいたのだった。
「上牧さま、和室Aを一部屋と、スイートルーム『円居』を一部屋でございます。どちらも2階なので、往来には便利かと」
「え?スイートルーム??」
「は。失礼ながら、麗華嬢さまと私は『円居』に宿泊するようにと麗華嬢さまご母堂からご指示いただいたので」
「えーっ?!麗華は梅ちゃんと泊まるのか?それじゃあ、俺は・・・」
「勇真、それ聞いてないわ。梅ちゃんに上手いこと言って勇真が仕組んだんでしょ。これ」
「結衣、それは違うって。まじで」
「あははー、冗談だよ。ま、でもいいんじゃない?部屋割の微修正くらい」
「全然微修正じゃないだろ!俺一人部屋取るよ」
「勇真、破産するわよ?ちなみに他は満室だって。スイート以外」
何と都合のいい、いや、都合の悪い。
「私も別に同じ部屋でオッケーよ!」と奈緒が親指を上げる。
仕方がない・・・ま、奈緒もいっしょなら大丈夫だろう。真面目だし、しっかりしてるから。
「結衣ちゃん、二人で勇真くんをさんざんからかおっか?」
違った?!奈緒がいたずら顔をしている。
「いいねー。トランプで負けるごとにビンタね」
「勝手な計画するな!!」
今夜が心配だ・・・。
「すっごーい、これがスイートルーム?ほんとに二人部屋?五人くらい泊まれそう」
結衣が驚いている。広い洋室にクイーンサイズベッドが二つ。テーブルにはシャンパンボトルとグラスが二つ用意されている(これは梅ちゃん専用になるだろう)。
何より、絨毯の踏み心地がとてつもなく柔らかい。靴を履いていても裸足のような快適さだ。
窓の外のベランダには・・・。
「露天風呂もあります。もちろん、源泉掛け流しです。一晩中気兼ねなく入ってられますね」
麗華嬉しそう。そういえば、麗華嬢は大のお風呂好きだっけ。
「寝るまではみんなこっちの部屋で遊ぼうよ」と奈緒。
「いいね、早速何する?」と結衣。
「勇真くん、なんかアイデアある?なかったら三人で勇真いじりで」
「奈緒さん、調子に乗りすぎですよ。バイトの時とキャラ変わりすぎです」
「あははー。だってリフレッシュ旅行だから」
「それならとりあえず温泉入りませんか?ご飯までまだあるし」
「え?私と?」
「奈緒さん!!」
「あ、ごめんごめん。結衣ちゃんとだったね」
「結衣、奈緒の様子がおかしいからどうにかしてくれ」
「うふふ。みんな温泉旅行って雰囲気になってきたね」
「どこがだよ!?」




