温泉リフレッシュ・・・その前に、期末テスト!!
「ねえ、勇真」
結衣がいつものように話しかけてくる。相変わらず、かわいい顔に、かわいい声で。
学校一の美少女が俺に話しかけてくるなんて・・・数ヶ月前までは想像もできなかったが、結衣は話しかけてくるどころか、この前は、あんなことまで・・・。
「何をぼーっとしてるの?」
「女神ちゃんに見惚れてるだけ」
「またまたー。すぐ軽口叩くんだから」
そう言いながら結衣がちょっと赤くなる。
「勇真いくら持ってる?」
「1000円くらいかな。昼飯代に」
「財布じゃなくて、口座に」
「さあー?何で?」
「バイトして随分貯まったんじゃないの?」
「いやー、そこそこ使ってるからなあ」
「添い寝リフレなんか行ってるんじゃないでしょうね」
「それ、何でしょうか??」
「ううん。何でもない・・・。えっとね、聞いたのはね、昨日、麗華と話してたんだけどね、お金も貯まったしリフレッシュに温泉旅行でも行かないかなーと思って。奈緒も誘って」
「へえー、リフレッシュか・・・。いいね」
結衣と麗華と奈緒と温泉旅行か・・・。いいねー。
って、ん??男子は俺一人か?!
「いや、やっぱ遠慮しとく」
「何で遠慮するのよ。いいねって言ったじゃん」
「何となく。三人で女子会してきたらいいだろ」
「勇真もバイト仲間なんだから来てよ。・・・もしかして女の子と旅行するの、恥ずかしいとかー??」
早速からかってくる。
「いや、普通に困るだろ。部屋割りとか、温泉とか。気を遣ってもらうのもリフレッシュに悪いし。俺は全然いいから三人で行ってきてよ」
「そうお?勇真がそう言うならいいけど・・・。ちなみに男子は他にも来るけど。ま、勇真がいいなら四人で行くわ」
「四人?男子って誰??」
「あははー、食いついてきた。勇真には教えないー。行かないんなら」
楽しそうにしている・・・。ぐ、そんな手を使って来るとは。しかし、誰だろう。結衣、麗華、奈緒とハーレムしたいなんていう下衆なやつは。
「勇真めっちゃ知りたそうにしてるねー。顔に出てるよ?」
「う・・・」
「一緒に来るなら教えてあげてもいいけど」
「はい・・・わかりました。行くので教えて下さい、女神さま」
「・・・もう一人の男子は梅ちゃんでした。麗華の護衛として」
「なんだ、そういうことか。初めからそう言えよ」
梅ちゃんを忘れていた・・・。まんまと引っかかってしまったな。
「あははー。勇真がヤキモチ焼いてるの楽しいんだもん」
「別に焼いてないけど・・・」
「うふふ・・・。ま、勇真も来るってことでいいね。行き先は有馬温泉で。期末テストの最終日から、一泊二日ね」
「そうだ、明日からテストか・・・」
温泉リフレッシュの前に立ちはだかる壁があった・・・。
「うん、テストだねー。どうしようー。私、全然準備できてないわ。放課後勉強教えてよ」
「絶対嘘だろ。中間テストも学年一桁台だっただろ」
「まあね。でも・・・どうしよー。今回は全然準備できてないわ。放課後勉強教えてよ」
「ほんとは余裕なくせになぜ繰り返した?!そのセリフそのまま返すよ!」
「おっけーよ!じゃあ、放課後ね。私が優しく教えてあげる!」
結衣がにっこりとする。
「は?何のことだ??」
「勉強教えてよって言ったじゃない」
「言ってない。ん?いや、言ったのか?どっちだっけ」
「あははー、勇真面白いね。じゃ、今日は部活ないし、図書室でね」
・・・なんだかんだわからないうちに勉強教えてもらうことになっていた。
・・・
「じゃ、次の問題解いてみて。できなかったらビンタ10回ね」
「別にSMを依頼した覚えはないけど」
「じゃあ、解けたら肩揉んであげよっか」
「司書さんに追い出されるから遠慮しとく」
「それも高校のいい思い出になるわよ」
・・・集中できない。一人で勉強した方がましそうだ。
結衣は机の下でスマホいじりだしたし。
神妙な表情でいるかと思えば、くすくすと笑いをかみしめたりしている。
「余裕そうだな」
「うん。テストは余裕だから」
「何調べてるんだ」
「温泉」
「まだテスト始まってもいないのに。楽しみにしすぎだろ」
「うふふ・・・。今調べてる旅館、『惑い』って部屋があるわ。勇真がここに泊まったらどうなるかなー?惑ってしまって変なことしないでよね」
「円居の間違いだろ。ほら、キャンプファイヤーで歌うやつに『まどいせん』ってあるやつ」
「あ、『遠き山に日は落ちて』ってやつね。小学校のキャンプファイヤーで歌った!懐かしいなぁ。♪いざや・・・たのし・・・まどいせん♪」
「図書室で歌い出すな!」
「温泉楽しみねー。勇真、さっさと勉強して早く温泉行こうよ」
「テストが終わるまで行けないから!」
最後まで勉強に集中できなかった・・・。




