I am sweet on you
「今日の部活の後、告白されたんだ。生まれて初めて」
「・・・」
まじかよ。これは予想外だった。
そっか・・・考えてみれば普通にありうるよな。
兄としてのひいき目があるにしても莉奈はたぶん、クラスでもかなりかわいい方だと思うし、勉強の方は微妙かもしれないが、バドミントンでは全国大会目指してるレベルだし。
うーむ。しかし、それにしてもなんだか複雑な気持ちだ。どうしてだろう。
「お兄ちゃん、固まっちゃってるけど、どうしたの?もしかして、ジェラシーなの??莉奈、うれしいなぁ」
「違うって。そうじゃない。そういうことじゃない」
「じゃあ、どうしたの?」
「いや、ただ、どんなやつなのかなと思って。相手は。クラスの子か?」
「ううん。クラスは違うけど同じバドミントン部の中2」
「そいつはまともなやつなのか?てか、莉奈はOKしたの??」
「お兄ちゃんが珍しくぐいぐいくるねー。やっぱりヤキモチでしょー。莉奈もっとくっついてあげよっか」
「やめろって。勘違いするな!ただ兄として気になるだけだ」
「うふふ。告白にどう答えたでしょー?」
「いや、それを聞いてるんだが」
「試しにお兄ちゃん、あたしに告白してみてよ。そしたら、今日の放課後の通りに答えてあげるから!」
「なんでわざわざ実演する必要があるんだよ!?」
「えへへ。私の返事、知りたくない?」
莉奈が四つん這いで近寄ってくる。こいつ・・・いつの間にこんな能力を・・・?そのうち、結衣顔負けのテクニシャンになりそう・・・。
仕方がない、ここは取引に乗ろう。
「わかった。やってやろうじゃないか。その代わり、莉奈は今日した返事を変えるなよ。秘密はなしで」
「うん!もちろんよ。一文字も変えないから」
「じゃあいくぞ。『莉奈。きみが好きだ。付き合ってくれ』」
「ちょっと待って・・・。なんか違う。なんというか、棒読みって感じ」
「そう答えたの?」
「あはは、まさかねー。今のはカットっていう意味。もっとほんとらしくやってよ。これも持って」
バドミントンのラケットを手渡される。
「まじかよ。そいつはラケットなんか持って告白したのか?」
「部活のあとだから」
「なるほど、なんとなく状況分かってきた。じゃあいくぞ。『莉奈、今日はお疲れ。あの・・・ちょっと言いたいことがあって・・・あとで、体育館裏まで来てくれる?』」
・・・俺は妹相手にいったい何をやってるんだ!?
「う、うん。いいよ。じゃ、着替えてすぐ行くね!」
莉奈うれしそう。放課後もほんとにこんな感じだったのか・・・?
・・・
「あ、勇真くん。早かったね。いったい、どういう御用?」
「莉奈、えっと・・・いきなりでごめん。好きです。よかったら、俺と付き合ってください」
部屋の壁を背にした莉奈に向かって告白・・・してしまった。
「え?」と莉奈。
え?・・・YESかNOで答えろよ。まだこれを続けなきゃいけないのか・・・。
「うん。部活でいっしょになった時から好きで・・・。もう1年も経って、気持ちははっきりしてるんだ。莉奈、愛してる」
なんでこんなことを言わないといけないんだよ!!
「う、うん。あの・・・突然でびっくりした。返事だけど、ちょっと待ってくれる?次の試合が終わるまで」
「おう、俺はいつまでも待ってるぜ!世界が滅ぶまでな」
・・・
「お兄ちゃん!一番最後、棒読みだった。『莉奈、俺の気持ちは変わらない。返事、待ってるよ』が正解なのに」
「そいつがどんなこと言ったか俺が知るかよ!」
「でも、最後以外はほとんどおんなじだったよ。お兄ちゃん、すごいな。どうしてわかったの?」
「たまたまだろ。だいたいワンパターンだし。それより、返事延期したのかよ」
「うん。あたし、ほんとにどう答えていいかわからなかったの。こういうの、初めてだから・・・」
「こういう時は、断るならすぐ断った方がいいよ。無駄に期待させると相手もつらいから」
「お兄ちゃん断ってほしいんだ。やっぱりジェラシーねー。莉奈うれしぃー!!」
抱きついてすりすりしてくる。
「やめろって。ジェラシーって言うのが目的かよ」
「返事、延期しちゃったけど、私ほんとはこう言おうと思ったの。『私と付き合いたいのなら、バドミントンで私に勝ってからにしなさい!私のあこがれは「シャトルを追って」の花屋敷さまだからね。私のスマッシュが顔面に当たるようではまだまだよ!』って」
「完璧すぎるセリフじゃないか。なんですぐに言わなかったんだ。マンガみたいなことが言える滅多にないチャンスだったのに」
莉奈、部活では案外ドSなのか!?妹とはいえ、家とのギャップに萌えてしまいそう。
「えへへー。口の先まで出かかったけど、女の子としてあんまりな言い方かなーと思ったから。お兄ちゃんがいいと思うなら、明日にでも言おうかなぁ」
「いや、すぐ言うならまだしも、返事伸ばしておいてそれはないだろ。さすがに」
「そうだよねー。じゃあ、さっきのセリフはしまっておく」
「おう」
・・・
「お兄ちゃん、さっきはどきどきした?告白で」
「するわけないだろ。仕方なしにやっただけだし、第一お前は妹だ」
「あたしはちょっとどきどきしたけど。お兄ちゃんがめちゃくちゃそれっぽいから」
「別にそれっぽくはなかったし、お前はどきどきするな」
「えへへー。心の中は自由だもんね。お兄ちゃん大好き♡」




