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作戦失敗だったら一生付き合ってね?

1学期中間試験後の昼休み。


女神様こと水無瀬結衣(みなせゆい)と中庭のベンチで昼飯。

毎日の習慣になっている。


今日は購買の日替わり弁当とコロッケパン(結衣のと二つ)。たまに結衣がお弁当を作ってくれる時もある。

また、俺が購買でふたり分買って来ることもある。要するに、持ちつ持たれつ、ということだ。


「女神ちゃん、最近はモテの調子どう?モテ回復作戦、効果出てきたらいいんだが」

「うーん、そうねえ・・・」

「イケメンからフラグとかなしか?」


「うん・・・ほぼなしかなぁ」

「ほぼってことは?!」


「今朝、岡町くんが声かけてきた。お昼ごはんいっしょにどう?って」

「ああ、あの金持ちボーイね」

大宮さんにモブキャラ扱いされてたけど。


「ん?結衣がここにいるってことは、断ったの?」

「うん・・・」

岡町は大宮麗香(お嬢さま)のお相手にも悪くないと思っていたイケメン、クール、お金持ちなのに(どれか一つよこせよと思ったりしないでもない)。


「せっかくモテ回復傾向なのに、なんで断ったんだよ」

「うーん・・・誘われたこと、全然うれしくなかったし」

モテ回復の兆候を示しているのに、喜ばないとは。乙女心、いや、女神心はわからないなあ。


「あ、そう。でも、モテ回復作戦が効果を発揮してきたんだったら、いい傾向じゃないか。きっと岡町は俺なんかが結衣と付き合ってるなんて不条理だ、自分の方がふさわしいって思ってるんじゃないかな。それなら、作戦の思惑通りに行ってるってことでは?」


「実は作戦のおかげとは違うの。前に遠足の班決めで、勇真がはみってる時に、ちょっと禁じ手を使っちゃったから。それで勘違いしちゃったみたいで」


禁じ手って・・・何をしたんだろう。

気になるが、詮索されたくなさそうにしているので聞かないことにした。あの時は俺を助けるためだったんだし。


「へえ、そうなんだ。でも久しぶりのモテでうれしいだろ?喜べよ」

「別にうれしくない」

「何でだ?」

「どうしてかなぁ。私もわかんないなー」

結衣が弁当を食べる手を止めて、じーっと見つめてくる。ここ毎日いっしょに昼飯を食べているが、こんなに距離が近かったことはなかった。


それだけでなく、不意に、結衣の左手が、俺の右手の上にちょこんと重なった。やわらかい感触が広がる。これは何かを仕掛けてくるぞ・・・。平静さを保たねば。


とはいえ、手を引っ込めたら、きっと「あ、勇真恥ずかしいのー?」とか言ってくるだろうし、そのままにしていたら「勇真が手つなぎたそうにしてたから。バレバレだよー」とか言ってくるだろうし、どうすれば・・・。


考えていると、手の甲をぎゅっと握られた。これは予想外。新技か?


「なんだよ」

「ううん。なんでもない」

なんでもなくって手を握ったりするだろうか。


「通りすがりのやつらが見てるぞ」

「毎日見てるはずなのにね。だんだん、いいカップル、ほほえまー、て感じの目になってきたね」

・・・そうなんだろうか?そんなふうに男子生徒たちが受け入れてしまうなら、「仮想カップル」作戦は上手くいかないのでは?みんなが羨ましがって水無瀬さんにアタックするのが狙いだったのに。


「ねえ、勇真?」

少し陰った声。


「うん?」

「あのね、もし、このままずーっとだめだったら・・・。永遠にモテ復活しなかったら・・・」

結衣の左手が微かに震えている。あ、やばい。いきなり雲行きが怪しくなった。これは水無瀬結衣の泣きフラグだ・・・。



「そしたら・・・そしたら・・・その時は、勇真はずっと一緒にいてくれる?」

すでに目の中に涙がたまっている。


うう・・・どうすれば、初めの一滴が、コロッケパンの上に落ちるのを防げるだろうか・・・。


「うん。俺は、作戦が完了して結衣がモテ全盛期に戻るか、それか、結衣が作戦終了って言わない限り、ずーっと続けるよ。それまで毎日いっしょに昼飯食べような」


結衣がじっと見つめてくる。

「仮に・・・一生でも??」

「そ、それはわからんが」

いきなりスケールがでかくなった!?


「あはは、今のは冗談。でも、私、ちょっと安心した・・・。これからもよろしくね」

右手がぎゅっと握られる。


結衣がまた笑顔になったのでほっとした。コロッケパンも助かったようだ。



・・・

放課後。いつもの通り、水無瀬さんはバドミントン部へ。俺は帰宅部へ。


帰りながら、昼休みの出来事をぼんやりと思い返していた。「もし、このまま永遠にモテ復活しなかったら・・・」という言葉が蘇る。


何で、あの夜以来、結衣がモテを失ってしまったのかは今でもよくわからないが・・・。

元に戻れないなんてことがあるのだろうか。仮にも学校一の美少女なのに。


女神ちゃん、前に「白馬の王子様に出会いたい」なんてこと言っていたが、それもなくなるわけか・・・。


ぼんやりと歩いていると、いつものケーキ屋「サントノーレ」の前まで来ていた。

何かやることがあったような・・・。


そうだ、新作のシュークリームだ。



今朝、例のごとく莉奈が俺の部屋に入ってきて・・・。


「お兄ちゃん、朝だよ。起きてー!」

「うーん。まだ目覚まし鳴ってないよ」

「今日ね、期間限定の抹茶シュークリームが出るんだって」

「あ、そう」

いつもケーキ屋に立ち寄っているのは俺のはずなのに、なぜこういう情報だけ先につかんでいるのだろう。


「それでね、ひとつ買ってきてくれたらうれしいなーって思って。莉奈、お返しにキスあげるから」

「それはいらんから、金よこせよ」


「むぅー。今の傷ついた・・・。莉奈、今日学校いけないかも」

「はいはい、了解です。買って帰ります」

「やったー!ありがとう!!じゃ、行ってきまーす」


・・・

そうそう、莉奈にシュークリーム買って帰らないと。


店の前に何やらカラフルな手書きの看板が置いてある・・・。


 期間限定!デラックス抹茶シュークリーム。500円


500円?!シュークリームだろ!今月は確実に赤字だ・・・。

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