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初恋は中庭のベンチで

1時間目後の休み時間、隣の席の相川さんが話しかけてきた。


「上牧くん。この前は教科書にいろいろ落書きしちゃったりしてごめんね。私、直接言いにくくて・・・」

「別に、気にしないでくれ。俺の教科書も初めて役に立ったことだから」

「よかったら・・・これからも友達として付き合ってね」

「おう」

「で、早速相談なんだけど・・・」


大宮さんに続いて相川さんか・・・。頼むから激務にするのはやめてくれ。


「・・・山崎くんの欲しそうなものとかって知らない?今度誕生日だから」

お、そう来たか。いい感じだ。これは山崎-相川カップルの誕生も遠くはないぞ。


「そうだなあ・・・。山崎が最近欲しがってたのはナーサリーライム・セカンドっていうゲームかな」

俺も以前はまっていたエ◯ゲ。俺は引退したが、山崎はまだやっているらしかった。


「え?それってマイナーなゲーム?」

「いや、ごめん。なんでもない。誕生日プレゼントなら、Tシャツとかどうだろう。サイズはLで。持ってて損はないし、山崎は休みの日はTシャツが多いからな」

「Tシャツか・・・いいね!考えてみる。ありがとう!」



さてと、問題は相川さんではなくて、麗香嬢さまの方だが・・・どうしたものだろう。好かれたいっていうならまだしも、好きな人が欲しいってなかなかの無茶振りだな。「モテないと言うと嘘になりますが」と言っていたところからすると、きっとすごい理想が高いんだろう。


たぶん、大宮さんの理想とするところは、イケメンで、スポーツ万能で、お金持ちで・・・。梅田さんのような執事(バトラー)の一人や二人は家にいるような人でないといけないかもしれない。


ってそんなやついるかよ!うちは良くも悪くも普通の高校。大宮さんがなぜ今の高校を選んだのかはわからないが、似つかわしい男子など学校中探してもいるだろうか。


他に紹介できるような人でもいればいいのだが、俺はあいにく知り合いも少ないしなあ。軽々しく約束してしまったけれど、どうやらできることはなさそう。



いつの間にか2時間目(数学、服部先生)に入っていた。

この前のテストが返される。


53点だった。まあ、あの時は他に告白という大事なことがあったし、よしとするか。

ちらりと結衣の方を見る。ちょうどテスト返されたばかりで、一人で答案を見ながらにっこりしている。いい点数だったんだな・・・わかりやすい。


そうだ、大宮さんのことは結衣に相談しよう。本人はモテ療養中だから相談には乗らないとか言っていたけれど、そのこととはわからないように、間接的に相談してみよう。何か方法が思いつくかもしれない。


「結衣?テストどうだった?」

まだテスト返却中で、クラスは騒々しい。

「92点だった。勇真は?」


「俺は53(ゴミ)だった。今日昼ごはんいっしょにどう?俺は売店で買ってくるから。午後から晴れるって予報だし、雨止んでたら中庭で」

「いいけど。珍しいね。勇真の方から誘ってくるなんて」

「ま、作戦だから。毎日いっしょに食べた方がいいかなと。そしたらみんなが羨ましがって結衣はそのうちモテモテに」

モテ回復作戦、というのに加えて、本当は大宮さんの方の作戦を考えているのだが。


「うん!いいよ!毎日いっしょに食べよ!」

テストがよかったからか、いつもよりテンションが高い。



「こら、上牧!いつまでしゃべってるんだ。浮ついていられる点数か!」

服部先生の怒鳴り声が飛んで来た。俺だけ怒られるのかよ。いつの間にかテスト返却終わってるし・・・。

二人とも急いで席に戻った。



昼休み。購買に駆け込んで、コロッケパンとおにぎりを買う。


中庭のベンチは結衣が先におさえてくれていた。五月雨もすっかり上がり、雲の間から日が差している。


「やっぱりここは落ち着くねー。日光があったかいし、みんなカップルだねーって目で見てくれるし」

俺は全く落ち着かないが・・・。注目を集め慣れていた結衣は違うんだな。さすが、学校一の美少女だ。


「カップルといえばだけど、結衣はさ。初恋ってどんな感じだった?」

「急にどうしたの?」

「いや、モテ回復作戦にあたっての情報収集。結衣のモテが故障する前の話も知っておいた方がいいかなと思って」

「それがどうして初恋の話になるのよ?」

「最初が肝心って言うだろ」

「意味わかんないー」


「そんな言えないような恋だったのか?じゃ、勝手に想像しておこうかな」

「まさかまさか。勇真にはちょっと言いにくいだけ」

「どうしてだ?」


すると、結衣がお箸を置き、少し近づいて座り直した。目を合わせてくる。


「どうしてって、今が初恋だからよ♡」


不意をつかれた。これは想定していなかった。しかも膝がくっついてるし・・・。やばい、顔が火照ってくるのを感じる。


「またまた、ご冗談を。作戦の一環としてって先に言っといてよ」

「よくわかったねー。だいぶ慣れてきた?」

膝が離れた。


「ま、まあね。一瞬焦った」

「勇真、顔に出るからねー。ま、作戦の一環はこのくらいにしておいて、特別に私のピュアな初恋の話、してあげよっか」

「いいのか?」


「うん。初恋といっても去年の話だよ。私は、クラスのある平凡な男子が好きになりました」

「平凡な男子?去年といえば、モテ全盛期だったはずなのに?学年中の名だたるイケメンが取り巻いていたのに?」

高校に入って、しばらくの間、水無瀬さんのモテ方は実際、半端なかった。水無瀬さんがことごとく振ってしまったことで、夏くらいにはいくらか落ち着いてきたとはいえ、その後も折にふれて告白合戦(玉砕)が繰り広げられているという話を聞いている。


「うん。勇真にはわからないかもしれないけれど、そういうふうにアタックしてくるイケメンを好きになるってことは滅多にないことよ。押せば引くんだから。逆に引けば押すんだけど」

「なんだ?その矛と盾みたいなのは」

「恋ってそういうものなの。でも私が好きになった人は目立たないけど、優しくて、人の困りごとは放っておけない性格で、家族思いで・・・」

ちょっとうつむいて目を閉じている。


「そんないいやつなら付き合えばよかったのに。去年結衣が付き合ったていう話は聞いたことなかったな」

「うん。その子は私のことに別に興味はないみたいだったから。私から告白するなんて、負けたみたいで嫌だもんね」

「勝気だなあ。結衣らしいけど」


「そうでしょー。でも、片想いも楽しかったなぁ。勇真にはわからないかもしれないけれど、好きな人が出来たら、一日中落ち着かなかったり、夢に見たり、想いに任せて身を投げ出したくなったりするんだよ。実際その子の前で泣いちゃったことあるし・・・」

夢見るような表情になっている。


「ちなみに誰だ?そんな素敵なやつは」

「それ聞くの??・・・そうだねー・・・勇真もよく知ってるクラスの子」

だんだん声が小さくなる。そして、なぜか真っ赤になっている。隣で体温を感じるほどだ。


「なんだ、山崎か。あんなやつのどこがいいんだ?」

「え?山崎くん?・・・もう!勇真には教えないっ!!」

突然ですが、登場人物の名字にはどういう法則があるでしょう?

わかった方はコメント欄にどうぞ

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