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女神様のベッド、結衣の夢

果たして、結衣はベッドに横たわっていた。目を閉じて、微かに寝息を立てながら、本当に眠っているようだ。演劇上手いな。


「水無瀬結衣。私は万物を統べるもの。お前の願いをかなえてつかわす」

ぐわー!中二病満開だ。俺はいったい何をやっているんだ!?


結衣が目を開けた。

「ありがとう。願いごとか・・・。私、突然モテパワーがゼロになっちゃったの。このままじゃお嫁にいけないわ。お願い・・・私のモテを返して!」

すごいな。演技とは思えないクオリティ。・・・演劇部入ったら、メインヒロインできるぞ。


「お、おう。承知した」

俺はおもむろに杖を取り上げて、先端部分で結衣の額を軽く叩く。


・・・ちょっと弱すぎたかな。


もう一度、今度は強めに叩いた。


「水無瀬結衣よ。これでお前のモテは復活した。行け!平和の裡に。道行く先から、王子たちが振り返るだろう。お前の瞳に映ることを求めて」

「は、はい!」

「だが、力を乱用するでないぞ。真の王子はただ一人がゆえに」

つい、調子に乗ってしまった。そこまでなりきることなかったのに。



「・・・こんな感じでよかったか?」

「ありがとう!素晴らしかったわ。なんだか効きそうな気がする。勇真すごいね。真に迫ってて」

結衣が感動したように、杖を持った右手を握りしめてくる。報酬にしては充分過ぎるくらいだ。

「久しぶりに中二病発動しただけ。気にするな」


「学校休みだからすぐに効果を確かめられないのが残念ね」

結衣が起きあがって、ベッドに座りなおしながら言う。


「いや、確かめられると思う。妹がいるから。あいつが普通に戻っていればいいんだ。女神パワー以来おかしくなってたから」


と言った矢先に・・・ドアがバタンと開いて・・・。


「お兄ちゃん!どこにいるのかと思ったら、こんなところで結衣と二人きりで・・・何やってたの?杖なんか持って!?」

あ、またやってしまった。莉奈の入ってくるタイミング悪すぎだろ!

「な、何もしてないよ?」

「何をしようとしてたの?莉奈、結衣ちゃんに嫉妬しちゃうなー!!」

「こら、抱きついてくるな!顔をすりよせるなって!」


「よかったー。結衣ちゃんのにおいついてない。結衣とくっつく前にギリギリ間に合ってよかった!!」


莉奈のやつ・・・何を言い出すかと思えば・・・。前より過激さが増している!?


・・・演劇作戦はどうやら効果がなかったようだ。




結衣、莉奈、大宮さんとダイニングで昼ご飯。


朝の残りに加えて、大宮さんが新たに作ったビーフシチュー。


「おいしいー。大宮さん、すごいね。いつの間にシチューまで!?」

「いえいえ。圧力鍋で作ったので。10分で煮込める上に、よく味がしみ込むんです」

「へえー。確かに、一晩寝かしたみたいに味がしみ込んでいる。朝飯に続いてありがとう」

「気にしないでください。こちらこそ、さっきはバドミントンに付き合ってくれてありがとうございます。上牧先輩と対戦出来てとっても楽しかったです」

「先輩って言われるほどのものでもないけど」


「上牧先輩は結衣の仮想彼氏なんですよね」

急に目が輝く。

「知ってるのか?」

「はい。結衣とは親友ですから」


「莉奈も?」

「うん。結衣ちゃんからこの前聞いたよー。モテ失った話から全部。・・・私、ちょっと安心した。お兄ちゃんはまだしばらく私のものだなーって。結衣ちゃんと本当のカップルになるまでは」

「何で結衣と本当のカップルになる前提なんだ!?」

「上牧先輩は本当の彼女はいらないんですか?好きな人とかは?」

大宮さんぐいぐい来るなあ。目がきらきらしている。さっきまでクールで控えめな感じだったのに。きっと恋バナ好きなんだ。


「そうだなあ、今のところはいないかなあ」

ちらりと結衣の方を見る。

「な、なんで私の方見るのよ」

「いや、結衣はいるのかなと思って」

「私は・・・勇真だけど。えっと、ま、作戦としてではあるけれど」


「今のは正式な告白と捉えていいかな?」

「まさかねー。『仮想告白』ってところだよ」

結衣がにっこりとする。


「そのセリフ、いいですね!私も仮想カップルやってみたいです!」と大宮さんが食いついてくる。

「大宮さんは普通に好きな人と付き合えるだろ。結衣みたいなモテ回復作戦やってるわけじゃないんだし」


「私、うちが厳しくて・・・実はこれまで付き合ったこととかないんです。好きな人もいたことなくて」

「へえー。お嬢さまって感じだなあ。大宮さんこそ、白馬の王子さまが似合いそう」

「それって私への当てつけ?」結衣がむっとする。

「まあまあ。二人とも喧嘩しないでください・・・。次行きましょう。次は、莉奈ちゃん?莉奈ちゃんは好きな人いるの?」

大宮さん楽しそう・・・。家が厳しいと反動として外で自由奔放になるのだろうか。


「私の好きな人はお兄ちゃんと、『シャトルを追って』の主人公、花屋敷さまです!」得意げに言う。

「莉奈、頼むから現実に付き合えるやつを好きになってくれ。将来が心配だ」



・・・

「勇真、ちょっと・・・ベランダでMTG」

昼ごはんのあと、結衣が手招きする。

「ミーティングだっけ。さっきの作戦の反省会?」

外に出る。


広いベランダで、寝椅子まで置いてある。

駅と住宅街一帯が見渡せる。北の方には高校も。


「莉奈と大宮さんがガラス越しに覗いているけど」

二人とも小学生のようにひたいをガラス戸にくっつけている。


「二人は放っておこうよ。ねえ、勇真。やっぱりさっきの作戦は失敗かなぁ」

「むしろ、成功すると思っていたのか」


「少しは・・・。やっぱり夢の中じゃないとだめなのかな」

「え?」


「ねえ、今度は夢の中でさっきのやってみようよ」

「まだやるの!?しかも夢の中でなんてできるわけないだろ!」

「今日一日中、私といても私の夢見れないー?」

「もし見れたとしても、杖もって部屋に押しかけて願いをかなえるっていう展開には絶対ならないと思う」


「ふうん、今日の出来事を寝る前によく思い返せば、そのまま夢でたどれたりしない?」

「たぶん、結衣がシャワーして、バスタオル巻きで出てきて、うっかりと落ちてしまったところで夢は終わりそう」


「勇真!!どんな夢見るつもりなのよ!!」

「ごめんごめん。今の発言はなかったことにして!」

危ない危ない。油断してうっかりセクハラ発言をしてしまった。俺としたことが。そんなに結衣に気を許してしまうほどになったのか・・・。



「勇真は休みの日、いつも何時に寝てるの?」

「1時くらいかな。休みの日には。なんでだ?」

「いや。なんでも。そっか・・・勇真の時のように、夢の中で願いをかなえるっていうのは難しいか・・・」

「残念だが俺は女神様、いや、神様になる夢、見れないぞ」


「ねえ、勇真。じゃあ、試しにだけど・・・一緒に寝てみるとか?そしたら、おんなじ夢見られるかなぁ」結衣が上目遣いをする。


「一緒に!?まじで言ってる!?」

一瞬耳を疑った。


「あはは、同じ時間に寝たらっていう意味だよ。それとも・・・もっと別のことしたいとか??」

「い、いや。おっしゃる通り、時間の話です・・・」

「あはは、紅くなってる。今日の借りは一つ返せたね。また、学校始まったら『仮想カップル』作戦で行こうか!」


結衣のやつ、一人楽しそうにしていた。


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