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女神様の家、結衣の部屋

「あ、あそこに女神様の杖があるぞ!」


俺は壁に立て掛けてあるプラスチックの杖を取って水無瀬さんの前につきつけた。

「結衣ちゃん乙女チックだなあ。これ持って女神様になりきるなんて・・・かわいいなー」どうだ、これはボディブローのように効くだろう。さあ、恥ずかしがれ。


「えっと、それは・・・小さい頃好きだったアニメのだから。ずっと昔の話。気にしない気にしない」焦っている。

「へえ、それにしては大事そうに保管してるんだね。埃一つ付いていないし」

「う、うちは綺麗だから。高いとこの物取るのに便利だから置いてるだけ」結衣が真っ赤になる。


莉奈が杖を取ってしげしげと眺めた。


「あ、わかった!これ『おジャ魔女どみそ』のステッキだね!私、今でも好きだよ」

「莉奈ちゃんすごーい!よくわかったね。私も大好きなの。どみそ、かわいいよねー。勇真も見てみたら??」


開き直ってしまった・・・。ま、莉奈の神フォローが入るまでは一発効いたし、ひとまずよしとするか。



「じゃあ、お昼までちょっと下でバドミントンしよっか。4人いるからダブルスができるね」莉奈が誘う。

「うん。麗香の特訓もかねて」と水無瀬さん。

「ありがとう・・・私、邪魔にならないかな」

「平気平気、勇真よりは上手いに決まってるから」

「帰宅部をなめるなよ!本気でいくから」

「私も頑張ります!ところで、ラケット足りるでしょうか?結衣ちゃんは持ってるけど、あとの人は・・・?」

「私も部活のやつ持って来たよー!」と莉奈。


「俺はない」

「これ、代用する?」

莉奈がおジャ魔女のステッキを差し出す。


「そんなの振り回してバドミントンできるかよ!」

「『ポロン』をなめちゃだめよ」水無瀬さんが言う。

「へえー、その杖、『ポロン』って言うんだ。詳しいな。女神様、じゃなくて、どみそちゃん」

「ま、まあね。詳しくて悪い?」

「いいえ、別に。どみそちゃん」

「その言い方やめて!!」

ふふ、これはしばらく使えそうだ。



「ところで、ラケットは安いものだけど、階下でも借りられるから」と莉奈。

「知ってるんなら代用とか言う必要なかっただろ!」


エレベーターで3階に降りて、渡り廊下を進むと、プレイルームがあった。卓球台もあるし、バスケットボールのゴールもあり、小さな体育館のようだ。


「チームは戦力バランス的に私と勇真、対、莉奈・麗香でいいかな」

「おう」

「オッケー!」

「了解です」



ぽん、と軽くサーブを入れる。大宮さんがパシリ、と打ち返して来て・・・。


バシーン!!!!


ちょっと聞いたことがない音がして、水無瀬さんのスマッシュが打ち込まれる。それを莉奈が、右手いっぱい伸ばして打ち返して・・・。


「うわ」

俺の耳元をかすめてラインぎりぎり内側に落ちた。


「勇真ー!素早く反応してよ」水無瀬さんに怒られる。

「シャトルが見えなかったぞ・・・今のほんとに莉奈が打ったのか?」

「うん、あたし全国大会目指してるから」

莉奈が得意そう。


妹とバドミントンするの初めてだが・・・そんなに強いとは知らなかった・・・。普段の妹とのギャップが・・・。


よし、本気モードで行くぞ!


なるべく莉奈のいないところを狙って打ち返せば・・・ってどこにでもいる!?

まるで瞬間移動のよう。

それどころか、大宮さんが空振りしたり、捉え損なったシャトルですらも、たやすく掬い上げて返してくる。反復横跳びしたらものすごい記録が出そうだ。


「ちょっと、勇真。そこ邪魔」

こちらは、水無瀬さんとぶつかりそうになる。



終わった・・・。

21対8で完敗。水無瀬さんも充分強いが、莉奈はさらに一段上だ。

両チームとも水を飲んで休憩。


「ふうー、ダブルスって難しいね。いつも莉奈ちゃんとシングルスやるときは17点くらいまではいけるんだけど。調子いい時で」

「ちょっと想像以上だった・・・。ほんとに中2か?莉奈は怪物だったんだな」完全に息が切れてしまった。

「莉奈ちゃんはめちゃくちゃ強いわよ。歳下とは思えないくらい」

「いや、結衣も充分強すぎるから。大宮さんは今のでバドミントン部入る気なくすんじゃ?」

「それなら大丈夫。莉奈ちゃんがこれから優しく甘く手ほどきしてくれるから。さっき料理教えてくれたお礼に、って言ってたわ」

「そうか、大宮さん料理もできるし、すごいな。今日の朝ごはん素晴らしかった」

「勇真は浮気しちゃだめよ。私たちが『仮想』カップルだからといって」

「何であらかじめバリア張ってるんだ」

「べ、別に。ただ、モテパワー乱用したらだめだよってこと!」


「大宮さんとは小さい頃から仲いいの?」

「うん。私と麗香は家も隣の隣だし、同じ幼稚園、同じ小学校だったからね。小さい頃からとっても気が合うんだよ」

「なるほど・・・」

「どうかしたの?」

「いや、なんでも」

幼馴染で親友ってことは、水無瀬さんの過去をいろいろと知っているわけか・・・。今日知り合いになっておいて損はなかったかもしれない。



水無瀬さんと話しているうちに、コートでは莉奈が大宮さんに打ち方の基本を教え始めていた。莉奈がコートの左右にシャトルを打って、大宮さんが追いかけている。


「私たち、先に戻ってましょうか」

「おう」


14階に戻る。


「汗かいたからちょっとシャワーしてくるね。勇真は私の部屋で待ってて。廊下入ってすぐ右側」玄関を入ったところで囁いた。

「部屋で?なんでだ?」

「今日なんで勇真を呼んだと思う?」


なんだか、さっきと様子が変わっている。これは何か技を出してくるサインだ。警戒しないと。

「なんで呼んだかって?俺の黒歴史暴いて、それからバドミントンでボコボコにするためだろ」

「ま、それもあるけど。勇真今日やられっぱなしだから、ちょっとやり返したいでしょ?」

「はあ?急にどうした?俺は結衣の秘密のおもちゃ見つけただけで充分だけど」


「あれ、実はわざと置いといたの。そう簡単に一本取らせるわけないでしょ」

「わざと?なんでだ??」

「やり返す機会をあげるから、さっきのステッキ持って部屋で待ってて」

水無瀬さんが囁く。


やり返す機会って・・・?この杖で結衣をもっと恥ずかしい目にあわせられるのだろうか。

結衣は、腑に落ちないでいる俺を後にして、さっさとバスルームに入ってしまった。

おジャ魔女どれみ 20周年おめ

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