Sweets for my sister
今日も、学校帰りにケーキ屋に寄る。昨日に続いて、今日も妹から「帰りにシュークリーム買ってきてね」と連絡が来たからだった。
妹曰く、自分は部活をやっているが、俺は帰宅部なので暇だろうということだった。
まあ、だいたいいつも俺の方が先に家に帰っているし。暇と言えば暇なのだが、こんなのが習慣になると俺の小遣いが・・・。
そんなことを思いつつも、今日も莉奈の好きな抹茶シュークリームを買ってしまった。
家に帰ると、いつもは部屋でお菓子をつまみながら、マンガを読むのだが、今日は先に宿題を上げることにした。
明日は数学の小テストがある、ということは別として、さっさと片付けて、明日予定している結衣への告白作戦を考える必要があるからだ。
数学の問題を解きながら、同時に答えも照らし合わせつつ、手早く済ませていく。効率の鬼になりそう。
午後6時、宿題おわり。パタンと問題集を閉じる。
さてと、告白かあ。「作戦の一環」なので、別に緊張する必要はないだろうが、いざ水無瀬さんの前に出ると、やはり少しは緊張するだろう。
なんせ、学校一の美少女、自称(?)女神様なのだし。
山崎の手前としても、焦ったり、舌をかんだりせずに、卒なくこなしたい。
こういう時は、いちいち手の込んだことを考えずに、シンプルに行くのが一番だろう。
「結衣、急に呼び出したりしてごめん。実はちゃんと言っておきたいことがあって・・・。好きです。俺と付き合ってください」
難しいことはないはずだが、経験のないことを抜かりなくこなそうとすると、意外としくじったりするかもしれない。
軽く練習しておくか。
「好きです。付き合ってください」
棒読み過ぎるかなあ。
「好きです。俺と付き合ってくれ」
なんか違うか。次の手行こう。
「今から言うことは作戦の一環じゃないよ。好きだ、付き合ってくれ」
「最初に会った時を覚えてる?あの時から好きでした」
「月が綺麗ですね」
「一生君のこと支えるよ。付き合ってくれ」
「シュークリームやるから付き合えや!」
バタン!突然部屋の扉が開いて・・・。
「お兄ちゃん、そんなにあたしのこと思ってくれてるの?」
莉奈が感動したように飛び込んでくる。
やばっ、まさかの告白誤爆だ!
「おい、こら、抱きついてくるな!!」
「これって、血縁を超えた恋?莉奈は禁断の恋でもオッケーだよ!」
「誤解するな。誤爆しただけだから!!」
「さっきの中では『一生君のこと支えるよ』っていうのがあたし、気に入ったわ」
「そりゃお前が依存症なだけだろ。てか、人の部屋の前で立ち聞きするなよ」
「早速デート行く?」
「だから誤爆だって言ってるだろ!これはお前じゃなくて、水無瀬さんに・・・」
「へえー、まだちゃんと告白してなかったの?」
やっと妹が離れてくれたのでほっとした。
「ま、正式には。・・・いろいろと訳があって」
「告白するならちゃんと練習した方がいいんじゃない?私、相手するよー。さっきの続きやって!」
「遠慮しとくよ。それより、シュークリーム買っておいたよ。冷蔵庫にあるから」
「やったあ!うれしいなー」
莉奈が出ていった。ふう、シュークリームで気を逸らせられたか。買って帰ってよかった。
と思ったら、1分後、今度はそろりとドアが開いて・・・。
「俺の部屋で食べるつもりか」
右手にシュークリーム、左手にほうじ茶をもってそろそろと入ってきた。
「シュークリーム、一つしか買ってないじゃない。お兄ちゃんの分は?」
「俺は別にいいから。特に好きってほどでもないし」
嫌いでもないが、小遣いがなくなっちゃうから。
「じゃあ、半分こしよ!」
「いや、ほんとにいいって。遠慮するな」
莉奈がベッドに腰かけて美味しそうに、シュークリームをほおばっている。
「お兄ちゃん、告白上手くいくといいね」
「あ、ああ」
本当は作戦の一環なんだけどなあー。なんか莉奈が本気にするので、作戦ってことを忘れてしまいそうだ。
「お兄ちゃんから見た結衣ちゃんってどうお?」
「どう?って、そうだなあ・・・ま、かわいいことは間違いないな」
「どれくらい?」
「どれくらいって、そりゃ学年一ってことは他のみんなも認めるところだな」
「莉奈よりも?」ふくれっ面をする。
「お前は比較対象に入ってないから!」
何で張り合ってるんだ!?
「じゃあ、結衣ちゃんは莉奈の次にかわいいってことだね」
「まあそういうことでいいよ」
「うふふ」
「何だ?」
「結衣ちゃん喜ぶなー。さっきの聞いたら」
「いや、いっつも自分で言ってることだよ。結衣は勝気だから」
「かわいいことはいいことだもんね。罪なことじゃないもんね」莉奈が目をぱちぱちさせて言う。
「今の自分に対して言っただろ?まったく、結衣もお前もすぐ調子に乗るからなあー。性格も大事だよ。むしろ、そっちの方が」
「へえ、結衣ちゃんは性格悪いの?」
「そりゃあもう。なんせ女神様だからね」
「そんなに?」
「うーん。いや、今のは誇張しただけ。要は優しくはないってこと。本人も言ってたけど」
「ふうん、そっかー。お兄ちゃん、シュークリームどう?まだ半分残ってるけど。莉奈のかじりかけなら食べる気になる?」
「なりません!」
「莉奈は優しいでしょ?」
「競争するなー!・・・はいはい、優しいね」




