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モテ回復作戦・・・私たち、もっと仲良くなろうよ!

「その後、相川さんとはどうだ?上手くいきそうか?」

次の日の朝、山崎に尋ねる。


「昨日二人で昼飯行ったが・・・少なくとも告白するような雰囲気ではなかったな。脈ありサインがないなあ」

「教科書に書き込みとかってない?」

「はあ?書き込み??」

「いや、やっぱ何でもない」

相川さんの脈ありサインは教科書だからな。



「上牧、お前はいったいどうやって水無瀬さんと付き合えたんだ?つい最近まで非モテ男子の代表取締役だったのに」

「別にそんな肩書はいらん」

「参考にするから、どうやって落としたのか教えろよ」

「うーん、喫茶店で契約しただけだから、参考にはならないかなあ」

あくまでモテ回復作戦として契約しただけだから、落としたというと語弊がある。


「いや、非モテの元取締役が学校一の美少女の水無瀬さんを落とすなんて何か普通でない手を使ったんだろ?」

「誤解するな、裏の手なんか一切使ってないって」

「じゃあどうやったんだ。あとで二人で実演して見せろよ。水無瀬さんもそれくらい許してくれるだろ」

「いや、絶対許してくれないから」



少しずつ、ではあるが、俺が水無瀬さんと付き合っているといううわさが、男子生徒の間にも広まってきたようだ。

水無瀬さんによると、女子勢には一瞬で広まったようだが、それに比べるとだいぶペースが遅そうだ。


非モテの上牧が水無瀬さんと付き合えるなんてありえない、とそう思い込まれているのかもしれない。


その日の20分休み(2時間目と3時間目の間)、水無瀬さんが俺の席にやってきた。

「勇真、ちょっと、隣の教室でMTG」少し声のトーンが低い。

「MTGって?」

「ミーティングのこと。つまり、作戦会議」

「マジック・ザ・ギャ◯リングかと思った」

「そっちは知らない!」


隣の空き教室に入る。今日も文字通り空き教室。他の教室より湿気たにおいがして、やや薄暗い。


「勇真、作戦の状況はどう?」

「そうだなあ、少しずつだけど男子の間でも広まってきたかな。俺たちが付き合ってるってこと」

「少しずつかぁ・・・」

少ししょげた口調。そして、ちょっとため息をついた。


「・・・私、今日朝から勇真以外の男子に一回も話しかけられてない」

「なんか問題あるか?」

「問題ってほどでもないけど・・・。このまま、だれにも相手されなくなるのかなとちょっと心配で」


いつもの勝気な水無瀬さんとは打って変わって、うなだれた様子。机の端に腰掛けて肩がガックシしているし。


一番最初にこの部屋で水無瀬さんが急に泣き出した記憶がよみがえる。


「そんな大げさに考えるなよ。これまで結衣があまりにもモテてたから慣れないだけだろ。俺なんか1日どころか1週間も女子と一言もしゃべらなかったことあるぞ。ちなみに妹も含めてな」


「勇真はそれで構わないかもしれないけれど・・・」

少し声が震えている。当たり前かもだが、俺を引き合いに出してたところであまりなぐさめにならなかったようだ。


やばい、泣きフラグが立ちそうだ。


「えっと・・・そうだ。モテ回復作戦だけど、もっと派手に、というか自然な感じでやったらいいんじゃないかな。ほら、俺は地味で目立たないから結衣の彼氏だなんて、他の男子からするとまだ半信半疑だし。やっぱり喫茶店で急に取り決めて自然なカップルになるっていうのも難しいよな」

「どうすればいいの?」

顔を上げて上目遣いで聞いてくる。

「3時間目にでもいい方法考えとくから!任せとけ!」


「うん、よろしくね。ねえ、勇真の言う通り、私たち、もっと仲良くなろうよ」


・・・別にそう言う意味ではないけれど。

とにかく、泣きフラグは立ったけれどなんとか回避できたようだ。



3時間目、歴史。

日本史の曽根先生は、もうそろそろ定年の人で、尋常ではない歴史マニア。歴史の先生だから当然か。歴史上の人物の性癖まで事細かに知っている、といううわさもあるくらいだった。

眠たげな声で授業が始まる。


だが、俺の関心は過去の人物ではなくて、今現在の人たちだ。

山崎からは相川さん告白作戦なんていう無理ゲーを押し付けてくるし、水無瀬さんの方はモテ回復作戦なんていうこれも無理ゲーとまではいわなくても、さっきみたいにせっついてくるし。




そうだ、面白い作戦を思いついた!


この際、俺も水無瀬さんに真正面から告白すればいいのでは?もちろん、水無瀬さんの言う「作戦の一環として」だけど、そんなことをあらかじめ言わなくていい。


次のようなプランである。


まずは、水無瀬さんを呼び出して、上手いこと告白する。

万一上手くいけばリアルカップルとして疑似恋人からバージョンアップする。そうなれば、もっと迫真の演技ができるようになるだろう。モテ回復作戦の成功につながるというものだ。


もし告白した結果がOKでなかったとしても(こちらの方が100万倍可能性が高いが)「これも作戦の一環として」なんてことをほのめかして、いい具合に演技してもらう。

喫茶店での契約じゃなくて、正式に告白してみた方が「もっと自然な感じで仮想カップルになれるから」とか何とか言って。


そして、俺の告白作戦はうまいこと山崎が目撃するようにする。元はと言えば、山崎が参考にしたいから「実演して見せろよ」と言ったことだ。

山崎も俺が真っ向から勝負する姿(?)で奮い立つだろうし、その気で相川さんにアタックすれば、案外うまくいったりするかもしれない。


山崎と水無瀬さんをダブルターゲットにした作戦!完璧では?!


3時間目いっぱいを使っての結論は、「決行あるのみ」だった。

マジック:ザ・ギャザリング(Magic: The Gathering)の効果は不明です。

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