勇者とかビックリよりビックリ
爆破を起こし、小鬼を吹き飛ばしながら、村に近づいてくるそれは、どうやら、数人の人間だった…。
初めは、何か、大きな魔物が現れたかと、ハンスが、1人で、爆破を起こしている、村の出入り口に、討伐に向かった。
しかし、ハンスが、迎え撃つつもりで、構えた所に、現れたのは、3人の冒険者の旅人だった。
ただの旅人なら、良かったのだが…。
小鬼を爆破で吹き飛ばしながら、進む者たちが、ただの旅人なはずはなく…。
旅人の1人が、勇者と名乗った。
そのため、現在…。
“偶然”お忍びで、居合わせたベルンゲラのみが、正体を旅人3人だけに明かした。
王妃の近衛3人と、ハンスと侍女にふんした、ソフィアナと宿屋の一室で、対面していた。
「で、君たちが、勇者だとは本当か!?」
ベルンゲラが、旅人3人に聞いた。
「おそれながら…。発言の許可を頂いてもよろしいでしょうか…?」
3人の旅人のうち、眼鏡をかけた、他の二人より一回り小さな学者と、言う方が似合うだろう風貌の中年男性が、発言を求めた。
彼は、カクヤと名乗った。
勇者と言われているのは、3人の真ん中に、どっしりと構えた青年だった。
通った鼻筋に、キリリとした目、彼の勇ましく頼もしい姿に、世の女性達は黄色声援をあげるとか…。
ベルンゲラ、ドミニク、ハンス、グロスターなど、美形を普段から見ている、ソフィアナには、まあ、普通の男性に見えているが…。
勇者は、名前をミトと名乗った。
もう1人、勇者の隣には、魔導師の様な格好をした、勇者と似通った年頃の青年が居た、そちらは、スケンと名乗った。
発言の許可を得たカクヤが、
「我々は、魔王討伐の為、旅しています。
南の端にあるランカー国から、来ました。その途中で、こちらの村が、小鬼に囲まれていたのを見つけ、助けに参上したわけです。」
「魔王?だと…?」
「はい。わが国には、ランカーの巫女と呼ばれる、神託を賜る巫女が居ります。
その巫女が、16年前に魔王の器が産まれたと宣言なさいました。
そして、7〜8年ほど前に、力に目覚めたと神託をなさいました。同時に、勇者ミトについても、神託が為され、我々は、左肩に、女神の痣を持つミトを見つけました。
それから、我々は、ミトに勇者の修行をさせながら、魔王の器を見つける旅にでています。」
勇者の証の話を言われたミトは、腕の服を前に引き、左肩を見せた。
「なるほど、それが、勇者の証か…。
では、魔王の器の神託⁈とは、どのようなものなんだ!?」
「はい…。」
ベルンゲラからの質問に、カクヤは、しばし考えてから、
「神託の内容は、本来は、ランカー国では、王族をはじめ、地位の高い者しか知らない事でございます…。
ですから、その…。秘密をお教えするだけの対価を…」
「ああ、そういうことか…。わかった。」
ベルンゲラは、側にいた近衛に、砂金を取りに行かせた。国を跨ぐ旅人や冒険者へのお礼は、お金ではなく、どの国でも、使える物で渡すのが、お約束だからだ。
近衛が戻ってきて、袋に詰まった砂金を渡せば、それを確認したカクヤが、話しはじめた。
「はい。
神託では、魔王の器は、七つ全ての属性と莫大な魔力を自在に操り、原理、原則なく魔法を駆使して、理りを覆えし、世界の均衡を揺るがし、知識ある魔物を従える。世界を破滅させうる存在…だ、そうです。」
その神託を聞いた瞬間…。
ソフィアナの、背中に嫌な汗が、流れる…。
ハンス、ベルンゲラの視線も、ソフィアナに向けられる…。
「それだけか!?魔王の特徴は⁈」
ベルンゲラは、つとめて冷静に聞き返す…。
「はい。器としかわかりません。
人間であるのか、動物であるのか…、魔物であるのかすら、わからない状態です。」
「では、どうやって見つける!?」
「人間であるなら、魔力を隠して生きて居るとは考えにくいので、噂を頼りに探していきます。
人であるなら、全ての属性を自由に、使える力をわざわざ隠す阿呆は、おりません。
ですから、見つけるのは簡単かと…。
ただ、人以外だった場合は、こちらの魔導具を使い、魔導具が反応するかしないかで、判断いたします。
まあ、こちらは、人間にも使う事は可能なのですが…。先程の理由から、まず、いらないと考えています。頻回に使えれば、いいのですが、厄介なことに、使うのに、なかなか大量の魔力が必要なんです…。」
「なるほど…。」
ベルンゲラは、色々と考えを廻らせ、3人に聞いた。
「で、今回、そなた達は、小鬼をなんとかしてくれる為に、わざわざここに来た、と言うことでいいのか⁈」
「あ…。はい。こちらも旅には、色々いりようでして、お礼を頂けるなら、3人で、村を守ります。」
「こんな小さな村だ、大した蓄えはないだろ、礼は、私がしよう。
先程と同じ量の砂金だ。あと、村人が怪我でもしたら大変だ、僕とハンスも君たちと戦おう。
これでも、なかなか強いんだ。」
『はやくこいつらをソフィアナから、離さなければならない。野放しにもできん。僕やハンスが奴らを見張り、側にいればなんとかなるだろう。』
「え!?王子殿下がですか!?」
『おいおい、王子様かよ…。
足手まといになるだけだろうに…。
騎士様だってよ〜。女にモテる為に、なるようなもんだろ⁈戦えるのかよ…。』
ミト、カクヤ、スケンは、3人同じ事を思ったのだった…。
さっそく、勇者一行と、ハンス、ベルンゲラは、小鬼の討伐に向かった。
ソフィアナは、出かける前に、ベルンゲラから、あの3人の前では、魔封じの腕輪をするように言われた。
あと、一緒に小鬼討伐に、行くと3人に色々バレる可能性がある為、このまま宿に残り、王妃を守って欲しいとも言われた。
3人がいる時は、必ず魔封じの腕輪をする様にしようと、心に決め、ソフィアナは、王妃様を守るために、王妃様のそばに戻った。
そして、ソフィアナは、思う…
『私って、魔王だったのかな…。
私には、そんな気は、全然無いんだけど…。
私…見つかったら殺されるのかな…。
世界が、敵になるのかな…。まわりは、みんな敵?
世界を壊しちゃうのかな…。
私は、何で、わざわざ前世の記憶まで持って、生まれ変わってきたのかな…。』
流石のソフィアナも、落ち込まずには、いられなかった…。




