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マリーとドミニク。

ドミニクは、無事万能薬を手にいれ、マリーに飲ませる事ができた。


意識の無いマリーに飲ませるには、誤嚥しないように、体を起こし、支えて一滴づつ口に入れていくしかない地道な作業だ。

もちろん、ドミニクが地道に何時間もかけて、スプーンにすくい、慎重にマリーに薬を飲ませた。



ドミニクが、何時間も、マリーを抱きしめていられる役得を誰かに譲るわけなかったのだが…。



ドミニクのおかげですっかり元気になったマリー。


意識がない間に、何があったかは、

「ちょっと薬を買いに行って来ただけ。」

としか言わない、ドミニクに代わり、ベルンゲラから聞いた。


ドミニクが、公務に行っている間に、マリーは、ベルンゲラを訪ね、何かあったかを質問した。



「やあ、マリー嬢、無事な姿を見られて嬉しいよ。」


ベルンゲラは、快くマリーを招き入れると、ドミニクについての質問にオブラートに包みつつ、ドミニクの気持ちが伝わるよう答えた。


マリーは、

『あまりにも、薬が手に入るタイミングが、良すぎる…。そんな簡単に買いにいけるなら、あんな状態になる前に手に入ったはず。

ドミニクが、何か危険をおかしたか、悪い事をしたか、何かを自分の為に犠牲にしたか…』


そう考えて、気がきでは、無かった。




やはりドミニクは、自分の為に、危険を犯し、無理をしていた…。


全てを諦め、別れを願った自分の為にだ…。


マリーは、複雑な顔で、胸の前で、両手を握りしめた。


「これから、私は、未来を夢みていいのですね…。明日を当たり前に、思って眠りにつける…。

ドミニク様…に…、ドミニク様に、気持ちをお伝えしたく思います。」


マリーは、ヘルンゲラの話しが終わると、そう言いのこし、ドミニクを訪ねたが…。


ドミニクには、忙しいと、面会を断られた。


それから、マリーは、ドミニクと顔は合わせるものの、2〜3言、話すと、のらりくらりと、スススーっとマリーの前から居なくなる。


マリーは、なかなかドミニクとの会話の席を設けられずにいた。


マリーは、空いた時間には、いつものように、窓際の日当たりの良い場所で、刺繍をしていた。


今日も、ドミニクが、式典で使うタイに、刺繍していた。

恋人や、妻からのタイへの刺繍には、特別な意味がある。

“貴方にくびったけ”

“あなたは、私の物”

など、独占欲を表す意味合いがある。以前は、いつ居なくなるかわからない自分が、ドミニクを独占する様な事をする事に気が引けていた、マリーだが、自分の未来が、切り開けた事で、ドミニクに、今まで黙っていた、心を伝える決心をした。


だから、タイへ刺繍し、プレゼントしようと考えたのだ。図案は、以前ソフィアナから身代わりの魔法陣の図案をもらった時に、ずっとお互いを近くに感じられるおまじないと、言われた魔法陣の様な、花の様な図案だ。

もちろん、あの不思議な糸で、刺繍するように言われていたので、それで刺繍していた。


光の加減で、色が変わる糸は、とても綺麗で、見ているだけでも飽きない。図案に仕上がれば、それは、なんとも素晴らしく、自分で施しておきながら、マリーは、いつもうっとり見つめてしまう。


倒れる前に頼まれた、2枚の大きな図案も、完成して、あとは、ソフィアナに渡すだけなのだが、大きな布に、キレイな糸で、施した、キレイで不思議な模様は、また、見ていて飽きない物であった。



ドミニクのタイも、それは、キレイに仕上がり、丁寧に箱に詰めて、これまた、刺繍をした、可愛らしい、リボンで結ぶ。


それを見ていた、侍女のサラが、

「誰にさしあげるんですか?そちらのタイ。」

と、ニヤニヤ、マリーに意味ありげに聞いた。


「わかったてて聞いてるくせに!秘密よ。」


真っ赤になり、マリーは、言い返していた。


そんな風景をマリーの部屋の外で、ドミニクは、見ていた。セヌッシュを思っているとわかっているマリーと話しをする勇気は無いが、顔は見たくなったのだったが…。


「秘密か…。セヌッシュへのタイを僕の婚約者が、堂々と作れるわけがないからな…。そうか…。あのタイは…」


マリーが、色々話をしようと、面会に行くのだが、断り続けているため、ドミニクは。おおいなる勘違いをあの返事から、していた…。





出来上がったタイを詰めてラッピングした箱を持ち、数日後に、

もう一度、ドミニクの部屋を訪れたが、やはり、面会を断られてしまった。




マリーは、悩み、ソフィアナに、相談したいと、ベルンゲラの執務室を訪ねた。


そこで、マリーは、ソフィアナが今、面会謝絶である事を初めて知った…。


「ベルンゲラ殿下…。ソフィアナ様は、大丈夫なのでしょうか⁈私…知らなくて…。」


「マリー嬢…。ソフィアナの事は、あまり公には、されていない。気にするな。命に関わるほどでは、無いそうだ。また、会えるようになれば、こちらから連絡を入れるよ。」



マリーは、当てにしていた友達に会えず、肩を落として廊下を歩いた。


しばらく歩いていれば、偶然に、ドミニクに会った。



お互いに動揺が隠せない…。



「ドミニク様…。」


マリーは、色々言いたい事が溜まり過ぎて、上手く言葉にならず、ついつい無言になってしまう。


ドミニクも、ドミニクで、何をどう話せばいいのか…。

また婚約破棄をマリーから頼まれてしまえば、もう、あやふやにはできないと、焦る。


「病気が良くなってしまったから………」

『もう、マリー、君は、僕に遠慮なく、思い人の所にいけるね…。でもまだ…。まだ、僕の心の準備が…』


考えあぐねて、言葉が途中で、止まるドミニク…。


『え…病気がよくなってしまった…って…。私が病気でいた方が、あなたはよかったの?やはり、みんなが噂する通り、あの時、私が倒れた責任だけで今まで?

病気が治ったから、もう!?私でなくても良くなった…?なら、どうして、危険を犯してまで薬を取りに…?でも、一つだけわかる…私の事は、もう…』

「ドミニク様が、言いにくい事をおしゃりたい事が、わかりました。ドミニク様の判断に任せます。

もう、今までのように、尋ねて行くなどは致しません。申し訳ありませんでした。」


「君が謝る必要は無いよ…。(君を自由にしてあげれなくて)謝らないといけないのは…僕だから…」


『謝らないといけない…って…。やっぱり、もう、私とは、一緒にいられないと言う事…⁈

これ以上、迷惑は、かけたくない…』


マリーは、ポケットにあるタイを服の上から握りしめ、なんとか笑顔をつくり、挨拶をして部屋に帰った。


『このタイどうしよう…。』



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