マリー様に依頼
ハンスは、約束通り、1週間に1回は、会いにきた。
その後、毎回沢山の、差し入れを持って来てくれる、ようになる。
さて、ハンスが、帰り。
ソフィアナは、荷物を見渡した。
『荷物を入れてきた木箱。私が入れるサイズは、あれね。』
「アマニ、あの木箱の中身を片付けて、木箱だけは、あの窓際にある、書き物机の隣に置いてちょうだい。」
「賜りました。」
アマニは、呼べば、控室から、スッと現れて、サッと仕事をこなして行く。本当に優秀な侍女だ。
アマニが、片付けをしている間に、
荷物から魔石を漁り、テレッサに頼んでおいた、刺繍糸を取り出した。
1人になっていることをいい事に、
魔石を溶かして、刺繍糸と錬金していく。
光の反射により、七色に色が変わる不思議な珍しい糸ができた。
あとは、(これも頼んでおいた)人が3人乗れる位の布を荷物から探して、魔石を溶かしたインクで、マハルニアで転写した、転送魔法陣を描く。
その他の部分には、普通のインクで、絵を描き、魔法陣を隠す。
魔法陣の本も、差し入れの荷物に上手に隠されていた。
そんな布を2枚作る。
『マリー様に、この錬金した糸を“珍しい色の糸”として渡し、布に模様の様にした転送陣を転送陣という事は隠して刺繍してもらえば、できあがりね。
マリー様に嘘は言いたくないけど、魔力の事は秘密だ。仕方ない。その代わり、マリー様には別の物を用意する予定だ。』
そうこうしていれば、
アマニが、部屋に空になった箱を持ってきた。
そして、言われた場所にセットした。そんなアマニに、マリー様へのお願いの手紙と、布と糸を渡す。
マリー様には、趣味であるから、刺繍して欲しい物は準備できたら、いつ渡してくれてもいいと、言われているので、気軽に頼める。
アマニが、部屋から出ていってから、木箱に、頭を突っ込み、木箱の底に手を着いて、ソフィアナの公爵家の部屋に有るクローゼットに…は、つながず、
繋いだ先は、エスターの部屋のクローゼットだ。
今、脱出経路ができたのかだが、本人が、脱出用と言う認識がないため、気付いていない。
少し便利に、行き来できる…。
そんな程度の感覚だからだ…。
さて、今の時間エスターは、自分の部屋にいるはず…
さっそく、エスターの部屋にいく。
脱出成功である…。が、ソフィアナに、その認識は無い。
驚くエスターと共に、パン屋へ行く。
パン屋では、お米を炊きながら思い出した、メレンゲクッキーの作り方とカスタードクリームの作り方を伝授しておく。
これは、両方ともとても簡単にできるのだ。
メレンゲを作るのにせっせと混ぜるのは、大変だが、意外にも簡単にできるから、高価だが、砂糖さえ手に入れば、大丈夫だろう。
これで、メレンゲクッキーとカスタードパンを作ってもらえる。
ついでに、余ったカスタードは、少し牛乳で伸ばして、焼くだけの簡単プリンにできることも伝える。
あとは、マヨネーズ。
奇跡の調味料。
新鮮な卵を使い、油と酢で、できる。
なんと!なんと!
マハルニアで、おにぎりに使う、塩を借りに、行ったキッチンで、醤油、味噌、酢、生姜を見つけて来たのだ。
転送陣が、出来たら内緒で、買い付けができるよう、トーイに、お願いに行かなければならない。
『早く転送陣が欲しい!』
キッチンで頼み込み、分けてもらったものを内緒で、ラスの鞄で、持ち帰ってもらった。
持ち帰った、醤油、味噌、酢、生姜は、エスターの家にある、セブァセス製の冷蔵庫に、保管していてもらっていた。
今回は、それを使った料理がしたかったのだ。
しかし、城でのキッチン使用は、許可されなかったため、仕方なくエスターのお家のキッチンを借りることにしたのだ。
『白いご飯と、きたら、生姜焼き、唐揚げ、味噌汁。
食べたいじゃん。』
イヤリングで、知らせを受けていた、テレッサとハス、ラスも、他に言われた材料を持って合流した。
城に居るはずの、ソフィアナが居るが、まあ、そこは、ソフィアナだ。連絡を受けた時から、わかっていたし、3人は、あまりビックリはしない。
さて、キッチンで、いざ作る。
まずは、お米を炊く。火加減は、マハルニアで、手伝ってくれた、ハスにみてもらう。
次は、お肉の筋切りをして、少し叩いて、下味をつける…。
酒、醤油、みりん…は、無いので砂糖。生姜
隠し味に麺汁が欲しいが、今は無い。
『そのうち、万能だしを作らねば…。』などとおもいながら、唐揚げの準備と、味噌汁の準備だ。
カツオだしが、取りたかったが、カツオが無いため、キノコだ。椎茸に似たキノコで出汁をとり、具にする。適当にあった野菜を入れて、味噌を溶く。
日本で作る様な美味しさには、まだまだだが、偽れてはいるだろう。
生姜焼き、唐揚げを焼くだけ、揚げるだけで作り、みんなで食べた。
『うんま〜』
生姜焼きと唐揚げだけ、食べる前に、持って帰れるように、少しだけ小分けしておくのも忘れない。
夕食のメニューに困っていた、エスターの母が、この料理を気に入って、すぐに作れるようになってしまった。
流石主婦だ。
だから、残りの材料は、好きに使っていいと、そのまま、エスターの母に渡した。
いつもいきなり、家に押し入っているせめてものお礼だ…。
トーイから買えるようになったら、エスターの母に、もっと、材料を届けて作ってもらおう。
だいたい、やりたい事を済ませれば、お城の夕食の時間が近づいていた。
もう、お腹いっぱいだが、部屋に居ない事がバレては大変だ…。
そう。部屋にいない…。部屋に…。
ソフィアナは、今の状況が、ベルンゲラにバレてはいけないと、思い当たった。
ベルンゲラには、部屋で大人しくしている約束をしている。
そう、約束は、部屋でだ。
今錬金術は、使っていないが、部屋にはいない。
バレたらまずいと、本能が、叫んでる。
気づいたソフィアナは、「またくる」と、言い残し、クローゼットから、城の部屋へ帰る。
木箱の蓋をそっと開けて、出て行く。
「まあ!そんなとこにいらしたんですか!?」
急に背後から、かかった声に、ビックリする。
振り向けば、アマ二がいた。
「夕食の準備をしに、お声をおかけしたのに返信がありませんから、心配いたしましたよ。お部屋にいらっしゃらないので、どちらに行かれたかと、焦ってしまいました。まさか、そんな所にいらっしゃるなんて…」
「いえ、一人で、かくれんぼをしていたら、寝てしまったみたいなの。ごめんなさい…。」
「かくれんぼ?ですか?」
「そう。隠れんぼ…。アマニを驚かせようと…」
なんとか、かんとか言い訳を考える。
「とても、驚きましたよ。良いご年齢の御令嬢が、箱に入るなど…。驚き過ぎて、叱る元気も御座いません。」
嫌味満載のアマニに、苦笑しながら、夕食の準備をする。
久しぶりの懐かしいお料理…。目一杯食べてしまって、お腹は、パンパンだ。
仕方ないので、
「アマニ、先程お菓子を食べ過ぎたみたいで…夕食は、いらないわ…。」と断ると、
「本日は、王妃様がお見えになる予定ですので、同じ席に着き、スープか、紅茶だけでも、召し上がって下さい。」
「え⁈何それか聞いてない。」
「はい。先程言われましたので、今お伝えしました。聞いてなくて、当たり前です。」
アマニは、澄まし顔で、ドレスを整えながら、鏡の中にいる、ソフィアナに目を合わせた。
「はあ〜〜〜。仕方ない…。わかったわ…」
その否と言わせない顔に、負けたソフィアナは、仕方なく、夕食の席につくのであった。
持ち帰ってきた、唐揚げと、生姜焼きは、こっそり警備していた、イワンに差し入れたが、みんなには、内緒だ。




