宝物庫
ソフィアナ達は、みつからない様に、壁際を歩きながら、宝物庫まで、たどり着いた。
鍵は、
「解錠」
と、ソフィアナのアンクレットにより、簡単に開けられ、扉を開けば、中に、ラワラが縛られていた。
「ラワラ‼︎」
ソフィアナは、ラワラを見つけると、急いで駆け寄った。
ラワラは、手足が縛られ、気を失っている。
「なぜ、こんな所に、ラワラが囚われているの⁈使用人の部屋に、居るとヤタカは、言ってたのに…なぜ⁈ラワラしっかりして…」
ラワラに気を取られていたソフィアナの前に、警戒した、サムスンが、サッと、庇うように立つ。
宝物庫の棚の影から、人が出てきた。
ローブをかぶっているその姿は、どこか見覚えがある。
「あなたは…。牢に、解毒剤を持って来ていた人ね⁈」
庇われた事で、人の気配に気が付いた、ソフィアナが、ローブの人にそう話しかけた。
「いかにも。ふむ…ソフィアナ嬢は、悪運が強いようだ…。まだ生きていたか…。だが、あと2日…いや、1日ちょっとの命だの…くっくっくく。」
ローブを揺らし、ローブを着た人は、嫌味に笑う。
ソフィアナは、サムスンの背中に、出来るだけ擦り寄り、サムスンにだけ聞こえる様に呟いた。
「……………。」
サムスンは、目だけをソフィアナに向け、目が合えば、わかったと言うように、頷き返した。
その直後、サムスンは、ローブの人に切りかかる。
ソフィアナを庇っていたサムスンが、居なくなったため、イワンが、サムスンの代わりにソフィアナの前に来た。
ソフィアナは、サムスンの様子をみながら、ハスとラスに、ラワラを助ける様に指示する。
サムスンは、逃げるローブの人を捕まえて、ローブを剥いだ。
剥いだローブの下から出てきた顔に、ソフィアナ以外騎士2人は、息を飲んだ。
「貴様は‼︎なぜここに!?」
ローブを剥いだ男の上に、馬乗りになっている、サムスンが、声を荒げる。
「なぜ…⁈どうゆう事だ⁈」
イワンも、混乱している。
「簡単よ。わが国ロゼスチャー国の裏切り者よ。
おかしいと思ったのは、牢で、私の名前を呼んだ事。そして、今ローブをかぶっている、私をさらに、私だと分かったこと…。
騎士達の顔で、判断したんでしょうね。
騎士達が、助けに来ている事もしっている、それくらい権力がある人。そんなに居ないから…。
ご機嫌よう…。わが国の宰相様。」
サムシンに取り抑えられている、男が、ぎっと睨みつけてくる。
「じゃあ、あのパーティーで、娘が、人質になったのは…」サムスンが、呟く。
「そうね。自分に疑いの目が、向けられない様にする為の演技ね。私が助けずに、連れて行かれても、今、彼がここに居る方法で、助け出せたから。1人で、逃げてきた、事にでもするつもりだったんじゃない⁈」
「そうだ、彼はどうやってここに⁈
ソフィアナ嬢の話しを聞くに、我々よりはやくここに居た様だが…。」
イワンが、怪訝な顔をした。
「あの、今、探している、転送陣よ。これを確かめたいのと、便利で欲しかったから、転写する為に、探していた、魔法陣の布を使って、国を行き来していたのよ。」
ソフィアナの言葉に、2人の騎士は、絶句した。
「目的は、なんだ⁈」
サムスンが、すごむ…。わが国の宰相は、フイッと顔を背ける。
「目的は、第一王子、ベルンゲラ様の婚約者に、自分の娘を着けること、なんじゃない⁈」
「他国まで利用してか⁈」
サムスンの声が怒りに満ちた。
「その辺の、利益や、私欲は、私には、わからないけど、自分は、宰相で、次期国王の妻に、自分の娘なら、まあ、好き勝手できそうだけど…⁈」
「あちらが、制圧されたら、ハンスさん達の所に連れていきましょう。」
「ふん。全部想像じゃないか‼︎
証拠が無い‼︎ははは。誰が、たかが騎士の言葉を信じる⁈
私は、ここに無理矢理連れてこられ、無理矢理ありもしない罪を着せられたのだ…はははは。」
「………。
ハンスさんと、アレクの前で、それ言って下さいね。僕らはたかが騎士なんで…。」
そう言いながら、イワンが、珍しく怒りに満ちた笑顔で、宰相の頭を掴み上げた。
イワンと、宰相が睨み合っていると、宝物庫の扉が荒々しく開かれた。
姿を見せたのは、黒フードをした男を連れたシメルだ。
ソフィアナは、目を見開き驚いた。
黒フードの男2人が、それぞれ、宰相を抑えるサムスンと、近くにいたイワンに切りかかる。
ハスは、ソフィアナの近くへ走り、ラスは、ラワラを抱きかかえて、壁際によった。
シメルは、騎士達をみながら、床に押しつけられていた体を持ち上げている、宰相に近寄る。
「おう、何やってやってんだ⁈」
「いいところに来た。玉璽は、手に入れたのか⁈」
「ああ。だが、騎士達に邪魔されてな…。とりあえず逃げできた。」
「ふふふふ、玉璽さえあれば、この国も我の思い通りだ…。ふはははは…。」
シメルと、宰相の会話を聞いて、顔を引きつらせたのは、ソフィアナだ。
『玉璽を取りに行ったみんなは、無事⁈』
「さて、色々引っ掻き回してくれたね…。ソフィアナ嬢。毒じゃなく、今すぐ殺してあげるよ。」
宰相は、殺気立ちながら、一歩を踏み出した。
黒フードを相手にしていた、イワンが、
「ソフィアナ嬢‼︎にげろ‼︎ハス!連れて逃げろ!」
と叫んだ。
その声に反応したハスは、ソフィアナを抱き上げ走り出した。
そんなハスに、宰相が、振り上げた剣を振り下ろす。
「キャーァァ‼︎」
ソフィアナの悲鳴と、同時に、キーンと、金物が、ぶつかり合う音がした。
恐る恐る目を開ければ、
「それ(抱っこ)は、俺の役目なのに‼︎」
と、悔しそうに呟きながら、剣で剣を受けるアレクがいた。
アレクは宰相を剣で弾き飛ばし、ソフィアナと、ハスの前に立つ。
「ハス。そこの窓を割って、ソフィアナごと飛び降りろ。外に出れば、ソフィアナなら大丈夫だ。」
宝物庫の窓は、明かりとりの為だけなので、盗難防止に、窓は開閉しない。
宰相はニヤリ笑う。
「ここは4階だ。飛び降りたら、ただでは済まない。はははは。」
「心配無用だ。ハスは、魔力持ちだ。それより、何故お前がここに居る⁈」
アレクの言葉に、宰相は、悔しそうに、ハスを睨むが、落下を魔力で、どうこうできるのは、ハスではなく、ソフィアナだ。
「宰相ともあろう人が、国を裏切っていたとは…」
「ふん。たかが騎士達の証言では、ゆるがんさ、その前にソフィアナ嬢が、毒で死んだ責任で、救出に向かった騎士達は、死刑だ。ははははは。」
アレクと、宰相が話しているうちに、ハスは、窓に走り、叩き割る。
同時にそのまま飛び降りた。
「アレク!!」
ソフィアナの悲鳴が聞こえたと、同時に、宝物庫の扉が、荒々しく開かれ、ハンスが駆け込んできた。
「ソフィアナは⁈は!?なぜ宰相が⁈」
「ソフィアナは、そこの窓からハスと脱出しました。宰相は、国の裏切り者です。」
「なんだと!?」
ハンスの顔が、歪む。
奥では、黒フードを倒した、イワンとサムスンが、シメルを捕まえようと、剣で戦っていた。
「ハンスさん。我々は、国に帰ったら、ソフィアナ嬢が、毒で死んだ責任を取らされて、死刑になるそうですよ。たかが騎士の証言では、誰も信じないそうです。どう思いますか⁈」
アレクが、含みを持たせて嫌味な言い方で、ハンスに話をふる…。
「ほう…たかが騎士か…。
我々も馬鹿にされたもんだな…。アレク…」
「ええ、本当に…。
ハンスさんは、公爵家跡取りだと言うのに、たかが騎士扱い…。
では、どれくらいの地位なら、たかが騎士では無いのでしょうね…⁈」
ハンスとアレクが、真っ黒な微笑みを浮かべる。
「ああ…。我々以外、知らなかったからなぁ…。
あなたの正体は…」
ハンスのわざとらしい、セリフに、宰相は、小首を傾げる。
「わが国の、宰相よ。我に見覚えは⁈」
アレクは、かぶっていた、カツラを取り払った。
宰相は、目を見開き、口を開け絶句する。
目の前には、見慣れた、第一王子本人が居る。
「なっななななな…」
全てを悟った、宰相は、真っ青になり、力無くその場に、へたり込んだ。
シメルを捕まえ、玉璽を取り戻したイワンが、玉璽をハンスに渡した。
アレクは、カツラをかぶり直し、サイラスは、シメルを縄で縛りつけていた。
「とりあえず、一件落着かな⁈。玉璽をトーイ様の所に持って行くぞ。」
ハンスの言葉に、皆頷き、宝物庫を後にした。
ラスが、
「まってください。
魔法陣持って行かないと、お嬢様また、一人で、暴走します。」
の言葉に、みな、顔を見合わせて、その通りだと頷きあった。
そそくさと、魔法陣を探しはじめたのだった。




