表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/142

2人の奴隷

使用人のテレッサに、風属性を付与してしまったから、流石に、それを隠す事は出来なかった。


公爵家で働く以上、身の上や、魔法など、きちんと当主に報告義務があり、報告せず働くなどしたら、謀りの罪や、偽証の罪など、てんこ盛りで、罰せられちゃうからだ。


でも、ソフィアナの力は、隠しておきたいので、魔方陣は、幻影魔法でかくし、テレッサは、最近魔力に目覚めた事にした。


たまに後天的に、魔力が宿る者もいるので、それにすることにした。

拾われた時に、一度鑑定はしているため、初めから魔力持ちにはできないのだ。


テレッサは、まだ、風属性を使いこなしてはいない。昨日の今日では、流石にむりだ。だからちょうどいい。

なんか風を起こせるとか、遠くの話が聞こえるとか、言って、父に報告させた。

父は、鑑定士を呼び、テレッサをもう一度鑑定させ、稀な風属性持ちだと、喜んだ。


風属性持ちは、情報収集に長けている。この貴族社会も情報には、大きな価値がある。

それを集める能力のあるものが、自分の手の内に居る事を喜んだのだ。


テレッサには、優秀な魔導師が付けられた。

ソフィアナは、テレッサと魔導師のやり取りを少し離れた所から、いつも見学していた。


ソフィアナは、魔力の使い方について、常識を学びたかったが、魔力の無い自分に魔導師は付けてもらえない。したがって、テレッサに教えているのをこっそり隣で、学ぶ事にしたのだ。



そんなある日

ソフィアナは、父オスターに呼び出された。

「5歳になった、ソフィに、プレゼントだ。」


と言って、渡されたのは、なんと13歳と9歳の少年2人の奴隷だった


「珍しく、奴隷に、魔力持ちがいたから、買ってきたんだ。ソフィアナの護衛兼雑用係かな。教育や、護衛技術はこれから教えるが、まずは、奴隷契約しなきゃならないから、とりあえずそこに座りなさい。」


ソフィアナは、目を丸くしながら、怯えている2人の少年をみた。



恰幅のいい奴隷商人らしき男が、何やら鉄の棒を手渡してきた。

棒の先は印の様になっていて、そこに奴隷契約の魔方陣が彫られていた。


「こちらの棒を彼らの胸に押し当ててぐださい。少し重いですが、1人でもてますか?こちらは、1人で持たないと主人契約ができないので…」


魔方陣が彫られている鉄の部分は、煌々と赤く熱せられていた…。


「え?こんなの押し当てたら、火傷してしまいます。」ソフィアナは青ざめながら、嫌々をした。


「火傷により魔方陣が、体に定着いたします。その傷がある限り、奴隷として、主人の命令には、絶対服従となります。主人は、その印を付けた者となる為、お嬢様の奴隷となりますと、お嬢様が、印を押さねばなりません。ささ、目をつむり、押し付ければ終わります。」


『なんて酷い。こんな事しないで!』

ソフィアナは、涙を浮かべながら、嫌々をするが、父オスターは、さらに酷いことを言い放った。

「ソフィ。君が奴隷としないのなら、私が奴隷として、使い捨てよう。買う契約と、代金は支払い済みだ、私の護衛はいるからいらないね。すると彼らは、もういらないから、捨てる事になる。捨てられた奴隷はどうなるか知ってるね?その場で、殺されるよ。」


「ソフィ、酷いと思うかもしれないが、この国の法だ、奴隷をどんどん使い捨てては、奴隷で街が溢れてしまい、治安も街も、悪くなる。

上に立つ者は、今この場の最善を尽くすしかないんだよ。

さて、彼らにとって最善とは何かな?

私の奴隷となり、捨てられることか?

いっときの激痛に耐えソフィの奴隷となり、護衛技術を学ぶことか?さあ、ソフィどちらを選ぶ?」


『お父様いくらなんでも、5歳児にする質問じゃないよ!』


「わっ私が、私の奴隷といたします。」

ソフィアナは、目をつむり唇を噛みしめながら、そう呟いた。


「では、では。」





「うわわわわわわ」

「ぎゃぁぁぁぁぁ」

という、けたたましい叫び声をあげ、2人の少年は、気を失った。

ただ2人とも、己の運命は悟っており、抵抗はしなかった。


「ごめんなさい。」

ソフィアナは、泣きながら2人に駆け寄ったが、ジョセフにより、2人は、医務室へ連れていかれた。





ソフィアナは、泣きながら部屋に帰った。待っていたテレッサが、驚いて駆け寄った。


ソフィアナは、テレッサに、今あった事を話した。


「2人は、幸せだと思いますが…

確かに激痛は、かわいそに思いますが、奴隷には、それはそれは酷い仕打ちをなさるご主人様もみえるとか…。それこそ、鞭打ちし、ストレスを発散する為だけに買われる者もいます。

ソフィアナ様は、その様な事をなさる方ではありません。むしろ、今も痛がる2人を心配している。そんな心優しいご主人様に使えれる2人は、幸せだと思います。」

テレッサの言葉に、顔をあげる。

『違う。私そんな優しい くない。私、自分が、人を傷付けた自分の嫌悪だけを悲しんでた。そうだ、2人はまだ、痛みに、苦しんでる…。』


「ありがとう。私のお友達テレッサ…。いいえ、お友達は、愛称で呼ぶものね…テリー。大好きよ。テレッサっじゃなくて、テリー、そろそろ、ソフィーって呼んでね。じゃ、私、行ってくる。」


「愛称で呼ぶのは、ご容赦下さい。もし普段に出てしまえば、私は、ソフィアナ様の側にいられません。で、どちらへ?」


「私を誰だと?全属性もちのソフィーよ。」

ソフィアナは、テレッサにウインクしながら、微笑み、涙を拭いて立ち上がった。



窓を全開にして、風魔法の千里眼で、外の護衛や見張りの状況を確認して、医務室の窓までの最短距離を考える。

屋敷の裏側にある医務室は、ソフィの南側の部屋の東よりの裏側になる。

屋敷を飛び越えるのが、1番近道だと、考え、護衛の目が無い瞬間を見計らい、次の瞬間に、風魔法で、浮遊し、一気にジャンプして屋敷の屋根の上に上がる。

そのまま東に走り、医務室の上あたりから、地面に向かいジャンプ。浮遊魔法で、まるで高速のエレベーターにでも乗っているように降りて、窓の前に降り立った。窓の鍵も風魔法で開け、窓から侵入する。


医務室には、先ほどの奴隷2人以外は誰もいない事は確認済みだ。


2人とも目を覚ましており、痛みにもがいていた。

だが、意識ははっきりしていて、ソフィアナが来たことに驚いていた。


ソフィアナは、人差し指を唇の前に立て、静かにするようジェスチャーでつたえた。


「驚かせてごめんなさい。2人は、私の奴隷。私の物が痛がってるのに、ほってなんて、おけないわ。

さっきは本当にごめんなさい。

いまから、2人とも治すから、私がいた事、した事は、誰にも言わないこと。あと、痛くなくても、1週間くらい痛い振りをする事。いいわね。これは命令よ。」


と優しく微笑み。2人の真ん中に立ち、右手、左手それそれをそれぞれの魔方陣の火傷のある胸の前に手をかざす。

そして、2人はその瞬間に痛みを感じなくなった。


だが、恐る恐る傷をみると、酷い火傷の状態は変わらなかった。

「その火傷、幻影なの。もう痛くないでしょ?」

ソフィアナは笑いながら、幻影の火傷を触った。


「感触は、ちょっと、生々しくないけど、これくらいなら、わからないはず〜。

奴隷印まで、消してしまいたいけど、消してしまうと、また、付けられるから、そのままにしてあるわ。

貴方達が、大人になり、自立できるようになったら、消しましょうね。」

そう言うと、ソフィアナは、呆然とする2人を残しスタスタと窓に歩いて行った。


「もうすぐ、お医者さんが戻ってくるから、私は、行くわ。またね。」


そう言うと、まどから、ふわっと浮いて、上に向かって飛んで行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ