隣国マハルニア3 ソフィアナ編2
ソフィアナは、音を立てない様に、牢から出た。そのまま牢の廊下を歩く、他の囚人(?)たちにも見られない様に気をつけて…
ソフィアナが居た牢の少し離れた、場所の牢の囚人は、ござに寝転がっていた。息は荒く、うーうーと、声にならない、唸り声を出し、苦しそうだった。
顔に包帯がされていたが、不清潔にされたこんな場所で、充分な治療もされず、半分取れかけている…
そこから見えた肌は、溶けたように赤黒くグチャグチャに見えた。半分見えただけで、あれだ…。
顔全体は、どんな風になっているのか…。
身体も、よく見ればあちこち、火傷か、傷か…起き上がる事も、動く事もできないのたのでは無いかと言うほど怪我をしている…。
囚人の全体の傷を想像して、ソフィアナは、グッと眉間にシワを寄せた…。
今目の前にいる人の痛みと苦しみを考えたら…
ソフィアナは、ギュと、右手を握った。
右手首にある、ブレスレットを左手で握る…。
『まだ、まだ、壊しちゃだめ。
治してあげたい。でもまだ、逃げる手はずが整っていない…。この牢も、魔法封じのある牢かもしれない…!まだ…まだ…。これを壊したら、反逆罪だ。お父様、お兄様達の命にもかかわる…。壊すなら、ここからも、ブランバード家からも、王家からも逃げる時だけだ…。
でも…この人にとっての、この私の“まだ”の時間は、絶望の苦しみのはず…。自分や、都合を優先して、ごめんなさい…。助ける手段があるのに、自分勝手で…ごめんなさい。』
ソフィアナは、色々と、考えて、胸が締め付けられ涙が滲んだ…。知らなければよかったと…
ソフィアナは、なんとか目をそらし、足を前に進めた。
この人が、どんなに悪い人でも、こんな苦しみの中に居る必要は無いはずだ。逃げる時は必ず、傷を治してから、逃げると誓いながら…。
静かに、警戒して進んでいたため、やっと出入り口にたどり着く。振り返れば、出入り口から、T字に牢が作られているようだ。
「おい。そこの、お嬢さんよ。昨日夜中に、連れてこられた、お嬢さんだろ?ここは、魔法封じの牢だ、若い娘が、ひょいっと、脱獄できる牢じゃない。どうやって出た?」
ソフィアナは、抑えられた、男の声に、ビクッと肩を揺らした。
声の主を探して、キョロキョロ視線を彷徨わせる。
「こっちだ、こっち、そこから、右に進んだ
2個目の牢の中だ。」
『牢の中⁈』
ソフィアナが目を凝らすと、個別牢の入口あたりの柵にもたれかかり、座っている男と目があった。
座っていてもわかるほど、屈強で、獰猛そうな顔付きに、一歩後ろにたじろぐ…。
「オレは、皇太子の近衛だ…。いや、だったと、言うべきかな…。クーデターを起こされた時に、王は殺されたが、皇太子共々捕まった。皇太子はまだ生きてる。だが、必ず殺される。
だから、処刑される前に助けたい。どうやって出たか知らないが、ついでに、オレも出してくれないか?」
「クーデター?」
「あ?あんた、この国の者じゃないな⁈
今、この国は、宰相が連れてきた、王子もどきに、乗っ取られて、中枢は、ぐちゃぐちゃにされ、政治なんて、できちゃいない、至る所で餓死なんて…当たり前だし、街や村も荒んでる…。元々も、民がいい暮らしをしている国ではなかったが、皇太子様は、前王の時から、街や村を少しづつ、建て直していたんだ。やっと、やっと起動に乗りはじめたのに、シメルめ…。皇太子の不在を狙ってクーデターを起こしたんだ…。それからは、街や村、この王都だって、荒れ放題…」
「あの…えっと…。わかりました。わかりましたけど、今夜は、脱獄予定では無いんです。だから、まだ、騒ぎを起こす訳には行かなくて…。秘毒の解毒剤が必要ですし、ここの地図も…。あとは、ここに連れてこられた魔法陣め探さないと…。」
「地図なら、あるぜ。城や牢はもちろん、この国の中なら、ほぼここに…」
と、男は、自分の頭を指差した。
「では、私が協力したら、あなたも、私に協力して下さると?」
「ああ、ここから、出してくれたらな。」
「解毒剤や、魔道具をしまうだろう場所も、見当がつきますか?」
「ああ…」
「では…。協力を…。私は、ソフィアナ。あなたは?」
「オレはトウエイ。よろしくお嬢ちゃん。」
ソフィアナと、トウエイは、トウエイの牢の前で話をはじめた。
トウエイの話では、この牢は、城の地下にあり、出入口は、城からの出入り口と変わらないとの事だ。
見張りも、一階上での階段付近にいるくらいだという。
解毒剤は2階の、医務室と薬剤室がある東側の鍵のかかった、薬剤倉庫にあるだろうとのことだ。
皇太子は3階のどこかの客間だろうとのこと。見張りの有無でわかるが、見張りをどうするかが、問題のようだ。
魔法陣は、4階西の端にある、宝物庫で鍵のかかったへやで、こちらにも、常時見張りがいるとの事だ。
「最優先は、皇太子と解毒剤。騒ぎを起こすのに、時間をかけたら、それだけ、見張りや兵士が集まる。できるだけ、隠密に、わからないように行動しなければならない。」
「じゃあ、人が少ない明日の夜中。」
「ほう。お嬢ちゃん、なかなかの度胸だな。次の解毒剤をもらう5日後の夜にならないかと、ハラハラしたぞ。」
「私は、解毒剤もらえないから…。5日後では遅いのよ。物理的に殺されるのを回避する方が、難しいから…」
「な⁈じゃあら解毒剤なければ、お嬢ちゃん5日後死ぬか…そら急ぐよな…。」
『ま。解毒剤がいるのは、ラワラだし、それもいらないんだけど、もし、5日以内に、脱獄してから、内緒で、ゲラ様に会えなくて、このブレスレットとってもらえなかったら、、ラワラが死んじゃうから、予備には、あったほうがいいのよね〜。
あの魔法陣の布を盗めは、牢のあの酷い状態の人のとこにも行ってあげれるし〜』
ソフィアナは、婚約から逃げている事をすでに、忘れ、目の前のラワラ達の力になりたいと、考えていた。
「それに、私の同じ牢にいる人の、お爺さんも探さないといけないのです。錬金術師と聞いていますが…」
「錬金術師がいるなら、医務室近くだぞ、薬の調合もしてるはずだし、ただ、魔道具の錬金術師は、宝物庫の近くの部屋で、仕事をしている奴もいる。その辺は、どっちで働いているか、孫に聞くか、そっと覗く…。いやいや、夜中だと、居ないんじゃないか?」
「あっ。そっか…。錬金術師達が、寝泊りしている場所わかりますか?」
「人質が居るから逃げないだけなら。使用人用の部屋だろうな。使用人用の部屋は城の裏の、別棟だ。どの順番でまわるか…」
「では、3人で、2階薬剤室に行き、解毒剤を手に入れたら、彼女には、外に出て、使用人用の部屋に行ってもらうわ。使用人用の服は近くにある?」
「それなら、薬剤室の隣が洗濯室でから、なんとかなるだろ。」
「その後、私と、トウエイさんは、3階で、皇太子を探して、4階の宝物庫で魔法陣を持って、城の裏手の使用人用の部屋へ行き、彼女と合流したら、魔法陣を発動させて逃げる。こんな感じかしら…」
「じゃ、明日の夜だな…。」
ソフィアナは、その言葉に頷き、自分の牢へ帰り、ラワラに今の話をした。
その頃、アレクたちは、ハス、ラスのテントや、料理に驚いていた。




