人体実験
「おはようございます。ソフィアナ様」
「おはよう。テレッサ」
「ソフィアナ様、どうされたのですか?お顔の色が…」
寝不足で、目の下にクマを作っているソフィアナに、テレッサは、顔を青くした…。
「テレッサ、大丈夫よ。ちょっと夜ふかししちゃっただけだから〜」
「ところで、テレッサ、最近なんで、侍女服を着ているの?」
「はい。私、ソフィアナ様のお役に立ちたくて、ソフィアナ様の侍女になろうと思ったのです。平民の私には、御屋敷に置いてもらうのに、お嬢様のお友達では、肩身が狭いのです。ですから、足も治ったので、旦那様と、侍女長様にお願いして、仕事をさせてもらう事にしました。まだまだみらないですから、やれる事は、限られていますが、頑張ってお嬢様のお役に立ちます。よろしくお願いします。」
テレッサは、勢いよくソフィアナに、頭を下げた。
「そうなの…」
『テレッサって、5歳よね…なんてしっかりしてるの?でもなんか、私に縛りつけてしまって申し訳ないわ…。成人するまで一緒に育ったら、好きにしてもらうつもりだったのに…。テレッサの力になれたら…』
「ねえ、テレッサ、侍女になっても、お友達は、辞めないでね。」
「はい。ソフィアナ様。」
「じゃぁ、テレッサ、こっちに来て、ここに立ってくれない?」
テレッサは、言われた通り、ソフィアナの近くに立った。
すると、テレッサの周りに風が巻き起こる。
テレッサが、不思議に思い、ソフィアナの顔をみると、ソフィアナの目が茶色に輝いていた。
ソフィアナの、産まれもった目と髪の色は、この世界には、珍しい黒だった。
いつもの目の色と違う事を不思議に見つめていると、
「で〜きた。」
と、ソフィアナの声がした。
「?ソフィアナ様?何ができたのですか?」
「ふふ、テレッサ、鏡を見て、ほらここ。」
ソフィアナは、テレッサを鏡の前に立たせて、肩越しに顔覗かせ、テレッサの胸元を指差してた。
「テレッサ無断でごめんね。
あなたに、風属性の魔力を付与したの。魔力量も多目にしたから、これで、テレッサは、風属性が使えるわ。
女の子な胸元に魔方陣の跡が残って申し訳ないけど、幻影魔法で、隠せるからゆるして。人への付与には、心臓近くじゃないといけなくて〜」
ソフィアナは、にっこり笑ってみせた。
「この世界は、魔力により将来が決まるわ。テレッサは、これで、この先何かあっても、就職先には困らない。これは私から、テレッサへの日頃の感謝よ。気に入ってもらえたかしら…?」
呆然と立ち尽くすテレッサは、ソフィアナの心配気な顔が覗きこんできた事で、正気に返った。
「な。ソフィアナ様。ありがとうございます。これで、ソフィアナ様を守れます。」
「え?違う。そうじゃない!」