イワンの憂鬱
まさか、公爵令嬢から、魔物狩りを依頼されるとは思わなかった。
魔物狩りと言うより、狩場への案内の方が正しいかも知れないが…。
必死で、考えを変えてもらおうと、説得してみたが、あの竜3体を瞬時に倒した実力を言われてしまえば、言い返せなかった…。
しかも、討伐並の魔物狩りを“サクッと日帰り”扱いで、言ってくる…。
ピクニックと、勘違いしているのだろうか…。
確かに、自分も、物事を軽く考えているが、彼女には、負けていると思う。
そんなことをグダグダ考えていても、はじまらない。
何故なら、既に、引きずられるように、馬車に乗せられ、出発していた。
目指しているのは、魔物の洞窟だ。
洞窟の中には、大小様々な、魔物がいて、とても広く、どこまで続いているかわからない場所だ。
狩や、鍛錬のために、たまに、浅い所は、騎士や兵士の訓練に使われる。
一般人が間違えて、迷い込まない様にと、洞窟から、魔物が出てきてしまった時の為に、出入り口には、常時、兵士の見張がいる。
魔物の強さに合わせて、兵を増やせるように、近くには、小さな、兵士1個隊分の駐屯地もある。
間違っても、貴族のお嬢様が、入る事はできないところだ。だが、兵士や騎士、冒険者やハンターなら別だ。
小遣い稼ぎや、鍛錬で、利用する者も多いし、魔物が出てこないようにする為にも、ある程度の間引きは、必要であり、名前さえ書けば、洞窟には、自由に出入りできる。
貴族の令嬢には、入れないが、男装して、騎士と一緒にいれば、入れるのだ…。
そう…入れてしまうんだ…。
「ところで…なぜ、ソフィアナ様は、あの洞窟をご存知だったのですか⁈」
ため息混じりに質問した。
「え⁈お兄様が、前に、訓練の話してくれた時、話しの中に出てきたのよ。なんか、ゲームみたいって思ったから覚えていたの…」
犯人は、ハンスさんか‼︎
それにしても、知らない言葉だ…
「ゲーム?」
「あ。いえ、その……。宝探しみたい。って、意味よ。言葉を間違えたわ…」
『言葉間違い⁈…宝探しね…。』
まあ、深く考えても、お嬢様の考えている事は、わからない…。
討伐レベルをピクニックには、僕は考えられない…。
洞窟の入り口付近には、さほど強い魔物はいないが、中へ入れば入るほど未知だ…。
ソフィアナ嬢は、どこまで入る気でいるんだろう…。そう思えば、青ざめずには、居られない…。
うだうだ考えている間に、洞窟まで到着してしまった…。
そう、訓練に使える程。王都からも近いのだ…。
入口の兵士に、軽く挨拶し、代表で、自分の名前を書いて、男装したソフィアナ嬢と、ハス、ラス、僕とアレクで、洞窟へ足を踏み入れた。
洞窟独特の、しけったカビ臭さが、鼻をつき、肌寒い風が肌を撫でた。
明かりはない。
火の属性を持つものがいれば便利だが…。
「今、ランプをつけます。」と、携帯用ランプを鞄から出そうとすれば、周りが明るくなった。
顔をあげれば、何か、光る物が、頭上に浮いていた。
「これは…。火の属性魔法…ではないですね…。え⁈光⁈光の属性か⁈
伝説級の光魔法!こんな浅い所に、強い魔物か!?いや、魔物の光属性なんて聞いたことがない‼︎」
「あ…あの…。」
慌てて周りを見渡していた僕に、ソフィアナ嬢が、おずおずと声をかけてきた。
「あの、イワンさん驚かせてしまいすみません。私です。ご存知の通り、私全属性もちなんで…」
「な…⁈」
『何⁈全属性もち⁈何だそれ⁈聞いてないぞ。水属性の上位使用者じゃなかったのか⁈秘密にしろとは言われたが、氷が作れる程の魔力がある事じゃなかったのか⁈』
あまりの衝撃に、カチコチに固まった、体をなんとか動かし、機械みたいな動きで、隣のアレクをみれば、同じように、目を見開いて、固まっていた。
『だよな、知らなかったよな⁈
もー、何がどうなっても、驚かないぞ…』
「あれ⁈ご存知でしたよね⁈竜の事件の時に…あれ⁈あれ⁈あれ⁈
え⁈もしかして、魔力持ちって言うのだけをご存知で、属性とか、そう言うのは、ご存知なかった…とか⁈」
ソフィアナ嬢が、しまったっとバツの悪い顔をした。本人は、魔法を使った事で、全てがバレたと勘違いしていたらしい。
迂闊すきるだろう…。大丈夫か…?
ハンスさんが、やたら過保護なのも、わかる気がする…。
洞窟は、まだ、入口のあたり、数歩なのに、どっと疲れた…。




