あとしまつ…
「おっかしな。ブランバード家のご令嬢は、魔力無しと、もっぱらの噂なんだけど…⁈」
イワンがいつもと変わらない明るい声で、そういいはなった…。
「・・・・・・。」
ソフィアナは、背中を滝のように流れる汗を感じている…。
そんなソフィアナの背後に近づき、コソコソと耳打ちしたラス。
目を見開くソフィアナに、ニッコリ悪い笑顔で、微笑んだ。
「でも、もしかしたら、命に、かかわるかもだし…」
小声で、ラスに首を振るソフィアナ。
「昔からの憧れなんですよね…。あれ…。テレッサさんの事があって…
『もうやらない』って、言われたと、聞きましたが、今はソフィアナ様を守る為に、必要な事ですから…。それに…こんな機会なかったら、奴隷からお願いなんて、できませんしね…。」
と、ラスは舌を出しながらソフィアナにたたみかけた。
ラスの表情は、笑っていたが、目は真剣そのものだった。
「本気の、本気⁈」
「今、死ぬ事になっても構わないくらい、本気です。」
ラスと、ソフィアナの、利害が一致した。
ラス、テレッサ、ソフィアナは、3人丸くなり、こそこそとしていた。
その様子をソフィアナに、置かれた場所から見ていた、イワンと、アレクだったが、
他の囚われた人の事もあり、3人に近づいていった。
「なんだか、お取り込み中、申し訳ないが、向こうの檻を壊したいんだ。侍女さんさっきの剣か?なんかわからなかったが、すげ〜武器貸してくれないか?」
イワンが、そう声をかけると、テレッサが、さっと立ち上がり、イワンに一礼してから、他の檻に走って行った。
檻の中の意識のある人に、出来るだけ背面の柵に、倒れた人を抱えて、近寄るよう声をかけてから、一つ一つ壊した。
「この武器は、私しか使えませんので、イワン様ご容赦ください。」
と、イワンに謝罪した後、檻にいた人に向かい直り、
「あと、もうしばらくしましたら、ワーグナー男爵…いえ、もう男爵ではありませんね…。旧ワーグナー邸の始末が済んだようです。そろそろ騎士様がおみえになります。皆さまお待ち下さい。」
テレッサの至って冷静な言葉に、捕まっていた人達は、気が抜けたのかしゃがみ込んだ。
イワンとアレクに、ラスとコソコソ話していた、ソフィアナが近づいて行った。
「あっ…あの…。この状況は、私は、命の恩人ですよね⁈」
ソフィアナの、少し震えている声をききながら、「まっ、そうだな。」と軽く返答して、イワンとアレクは、ソフィアナの話の続きをまった。
「お願いです。今この状況は、ラスの魔力の暴走と言う事にして下さい。」
勢いよく頭を下げるソフィアナに、二人は、一瞬面食らった…。
恩があるから、何かしろと、脅しの様に言ってきたかと思えば、まさかの、状況詐称…。いや、魔力詐称。
「いくらなんでも、無理がないか⁈」
アレクが、ポツンと呟いた。
「おとりをするにあたり、色々調査して、行方不明のラスが木の属性持ちなのはわかっている。だから、余計、暴走にしても、水の上位魔法が、使えたらおかしいだろう?」
イワンも、話の矛盾に、突っ込まずにはいられないようだ。
「お二人が、私がやったとさえ、言わないでくださるなら、他は大丈夫なんです。
ええっとぉ…。ラスは、恐怖のあまり、後天的に、水の属性にも、目覚めましたから…。
なんと、2属性持ちになってしまいました。王子様もびっくりですね。だから、そう。
2属性目まで、目覚めたから、魔力が、暴走しちゃったんです。
そう、目覚めて、すぐだったから。うん。混乱?うん。混乱したんです。」
途中まで、目線は斜め上で、棒読みのような言い方だったが、目覚めたあたりから、今思いついたかのような、話し方に、2人は、目をひそめるしかない…。
「あの。…水を出したら、証明になりますか⁈
氷は、できるかわからないですが、やってみます。」
ラスは、右の片手を前に出し、水を溜めるために、たわませた。そして、水をだした。
その後、左手で、ソフィアナからもらったペンダントのトップをそっとにぎり、出した水を縦長にして、手の方から、徐々に凍らせていった。
その状況に、イワンは、目を点にしていたが、アレクの視線は、両手を胸の前に組んで見守る、ソフィアナに、懐かしさを乗せた眼差しで、向けられていた。
「僕はいいよ。黙ってる。って言うか、何が起きたかわからなかった。って言う。
けど、なんで、隠したいのか、その理由は教えて。
普通、貴族なら、こんな力があれば、喜んで吹れて回ると思うんだ。けど、ソフィアナ嬢は、あえて隠したい。その理由がすごくきになる。」
イワンが、頭をかきながら、質問する…。
「わっわたしも、わからなかったと、報告いたします。が、イワンさんが、言われたように、理由が気になります。」
アレクも、イワンと同じ事を質問した。
ソフィアナは、ためらいがちに、
「内緒にして下さいますか?魔力を隠す理由…。」
そう言って、ソフィアナは、おずおずと2人をみた。
その視線に、2人は、うなずいた。
「まず、家族が隠した理由は、余りにも過度な力は、トラブルを自身に起こす可能性があるため、過保護にも、産まれた時の評価のままにしていてくれます。
そして、私自身は…。
王子の婚約者候補に、名前があがりたくなかったからです。」
「王子の婚約者とかは…、名誉な事では無いのかな⁈」
口の端をピクつかせながら、アレクが、聞いた…。
「光栄な事なんですが………。
私、好き勝手したいんです。
王族ともなれば、やれ社交や、やれ教育や、やれお茶会や、やれパーティーだ、食事会だ…。責任や、公務も…考えただけで、これだけあるんです。
知らない事は、この倍あってもおかしく無いと思うんです。だから無理ですね。」
「っ…。たとえば、努力しようとか思わないのか⁈」
「…まず、コミュニケーションが苦手なんです。王族の方は、人とばかりあって、話すのと、笑って居るのが、仕事みたいなものじゃないですか…。苦痛ですね…。根本、私の性格にあっていないんです。」
苦笑いしながら、言うソフィアナに、アレクは、言葉を失った。




