おとり困惑中
『これは、どうしたものか…』
おとりの計画は、上手くいった。
計画通り、馬車は襲われ、アジトらしき場所まで連れて行かれた。そこまでは、よかった。
だが、今まさに、ソフィアナは、困惑していた。
困惑の理由は、盗賊の馬車と、人質が閉じ込められている牢と、場所だ。
まず、計画では、襲われて拉致され、その間、風魔法で、ソフィアナからの、連絡をテレッサが、受け取り、ハンスに伝える計画であった。
ソフィアナの魔力については、秘密なので、騎士団には、少し離れた所で、数人に、尾行してもらい、その後は、人海戦術で、見つける予定だ。
襲われた所までは、風魔法は、使えていた。
しかし、馬車に乗せられた瞬間から、魔法が、何も使えなくなった。
一緒に捕まった、イワンとアレクは、元々使えないらしいから、体感がないようだが…。
『何があっても、魔法使えるから、何とかなる』と、思っていた、ソフィアナは、冷や汗しか出てこない…。
「この馬車…普通の馬車と、何か違う⁈乗った瞬間から、何か違和感が…」
『違和感では、無く魔法が使えないのだが、私は、世間には、魔力無しと思われているから、そう言うわけにもいかない…』
手足を縛られ、座らされている馬車の中で、それとなく、小声で呟くと、向かいに座らせられていた、イワンが、
「この馬車は、騎士団でも使う、護送車で、犯人に魔力がある場合もある為、人が使う魔力や、魔法を無効化する機能を持っています。魔道具類は、無効化できませんが…」
と、小声で、教えてくれた。
ソフィアナは、一瞬、何を言われたかわからないほど、呆然としてさまった…
『そんな物あるとか、知らなかった…。
いや、あるよね…。そらそうだ…。
魔力無効化しなかったら、捕まえても、すぐ逃げたり、被害に遭うものね…。
あー私のバカ、冷静に、少し考えたら、わかるわよね…。
私の持っている、私の作った魔道具は、微量だけど、肌に触れる事で、魔力を吸い使えるものだから、この場合、魔石の付いてない私の作った魔道具も、あてにならないって、ことか…』
ソフィアナは、ガックリ肩を落とした…。
「無効化は、馬車の中だけ⁈」
「はい。今のところ…。ただ、予想ですが、捕まえた後、これから入れられる、牢にも、そういった物がある可能性はあります。」
『牢もか…なら、連絡のチャンスは、馬車から降りて、牢に入る迄の間ね…』
「イワンさん、アレクさん、ここがどこだかわかる⁈」
「ホーエン山を迂回して、東に向かっているのは、拉致された場所と時間、太陽の位置からわかりますが、細かい所までは…。大丈夫ですよ。尾行班がしっかり尾行しているはずですから…」
イワンは、小声だが、いつものように明るい口調で微笑んだ。
そして、現在、イワンの言った通り牢でも、魔力が使えず、ソフィアナは、すごく不安になっていた。
連れてこられた場所は、ご丁寧に、ワーグナー男爵の屋敷だった。
馬車から降りて、牢までの間に、その事と、牢の場所と、魔法が使えないことは、テレッサに連絡済みだ。
後は助けを待つだけなのだが…
どうにも不安を拭うことはできなかった。
牢には、数人の大人と子供、リサとラスもいた。
ソフィアナは、
「リサ、ラス!」と2人にかけよった。
「な!?ソフィアナ様!?」
2人は、目を見開いていた。
助けを求めたラスだが、『魔法で、場所など突き止めて下さいるだろう』とは、思っていたが、実際に動くのは、ハスか、トマス、警備辺りだと思っていた。
その為、ソフィアナ本人が、来るとは思っていなかった。
「2人とも無事?よかった…。」
「いえ、あの、ソフィアナ様、リサは足を怪我しています。」
「あっ。そっか…。」
ソフィアナは、周りを見渡し、声を潜めて、ラスに言った。
「今、この牢では、魔力使えないから…」
あんに、今は、治癒魔法で、リサを治せないと告げた。
「リサ、痛みは⁈できるだけ、楽にしていてね。必ず助けるから…」
「ありがとうございます。」
「それにしても、捕まった人をこれからどうするのかしら⁈」
「牢の前の見張りに、聞いたのですが…。
ホーレン山中腹に、竜の巣ができていて、そこで、竜の滴が、取れるそうです。希少な素材なんで、高値で取り引きされるものです。
われわれは、それを取りに行く、盗賊達が、無事に取りに行けるように、めくらましに使われるようです。
数人づつ、檻に入れられ、竜が、檻の中の人で遊んでいるうちに、竜の巣の中に入り、竜の滴を取ってくるようです。
だいたい、1か月に一回程行われているようで、次回は、明日です。
竜の滴は、竜が居なくなれば、採取できなくなるので、竜を討伐せず、密かに盗賊に取りにいかせているんだと思います。」
「竜は、国では、騎士の討伐対象ですから、報告をしていない、時点で、違法です。
竜は、大きくなりすぎると、強くなり過ぎて、討伐できず、大災害となります…。
竜の滴を生産するために、放置し、人を攫っているとなれば、大犯罪ですね…」
ラスの話しを聞いていた、イワンが、そう言いながら、珍しく険しい顔つきになった。




