兄を訪ねて…訓練場へ
一度、みんなで、屋敷に帰った。
テレッサが、執事のジョセフよりハンスの居場所を突き止めてきたからだ。
ハンスお兄様は、今日から、長期休暇となっていたため、昼近くに、一度ソフィアナの部屋を訪れたが、引きこもり中につき、拗ねて、城の兵士訓練場に向かったとの事だった。
「まあ。知らなかったから、お兄様には、悪いことをしてしまいましたわ…。
では、私は、今からお兄様の所に向かいます。
テリーと行くと、危機感が無いとか、ハンスお兄様に叱られるから、ハス、護衛とお供、お願いできるかしら…⁈」
「たまわりました。すぐに、馬車を準備してまいります。」
ハスはそう言うと、部屋を出て行った。
「では、ソフィアナ様、お着替えを…」
「え?」
「訓練場とはいえ、お城です。その様な軽装では…。ソフィアナ様は、公爵令嬢ですので…」
テレッサが、困り顔で、呟く…。
エスターは、うんうん。と相槌をうっていた。
しかたなく、あまり派手にならないように、外出着に着替えさせもらう…
『う…胸が苦しい…。う…お腹が…。毎回思うけど、絶対ドレスは、体によくないと思う…。』
毎回と言うほど、外出もしないのに、窮屈さに、文句しか思い浮かんでこないセフィアナ…
着飾り終わった頃には、ぐったりしていた…。
城に通じる門で、用事を伝えると、訓練場は、門に近いため、馬車をここで、預ける様に言われた。
ソフィアナは、なぜか、赤ら顔の門番兵に、見送られながら、訓練場までの道のりをハスと共に、別の案内専門の門番兵の後に続いていた。
この門番兵も、何か、天に向かい、涙目で、感謝を捧げていたが、意味がわからない。
チラチラと、後ろを振り返って、目が合うので、微笑み返すと、真っ赤になり、プイッと勢いよく、顔を背ける。
『私何か嫌われているのかしら⁈
それとも、どこか、変⁈何かついてる⁈』
「ハス…私何か変かしら?」
気になり、小声で、ハスに尋ねると、苦笑いと共に、
「普通の公爵令嬢様は、我々や、門番兵など、下々の方とは、お話しいたしませんし、微笑まれる事も、稀かと…
きっと緊張なさっているんです。不敬罪には、なりたくありませんでしょうから…」
と、ハスも小声で返してきた。
『ソフィアナ様は、ご自分のご容姿には、無頓着…こんな可愛らしい、令嬢に微笑まれたら、いくら幼くても、見惚れてしまうだろうに…。』ハスは、気の毒そうに、門番兵たちを見た…
しばらく歩くと、訓練場につながる部屋に着いた。
部屋に入ると、何故かハンスお兄様だけで無く、グロスターお兄様、さらに、数人の兵と、少し顔にしわのある、ガッシリとした渋いダンディーイケメンの3人が、待っていた。
他人も多い事から、兄達に恥をかかせるわけにもいかず、小さなころから、教え込まれている淑女の礼をして、部屋に入った。
数人が、探るように、赤い顔でジロジロ見ていて、居心地が悪かったが、何か恥ずかしい間違いをしてしまったかと、心配になりながら、それよりもと、一刻を争うお願いをハンスにする為に、ハンスに語りかけた。
まず、側にいた、渋いイケメンは、騎士団長のクラウス・アサリー子爵で、昔は、父の部下で、現在は、父の友人で、兄2人の剣の師匠であると、紹介された。
信用できる人物であり、そのまま話をすることなった…。
「お兄様…………。」
ソフィアナは、ハンス達に、パン屋の娘とラスが誘拐された事を話した。
盗賊が、ホーエン山近くで、出ているが、街の警備は動いてくれず、“盗賊は、出ていない事”と、なっていて、市民との情報との矛盾があり、おかしい状態である事を説明した。
襲われる馬車も、準貴族や、平民、商人の物ばかりで、貴族の紋章付の馬車は襲われないと言う噂も加えて報告した。
騎士団長のクラウスも、そんな話は知らない。
現在そんな、盗賊類の報告を受けていないか、すぐに、部下に確認しに行かせたが、受けていないと再報告された。
話しを聞いていた、ハンス、ブロスター、騎士団長が、怪訝な顔になる。
ソフィアナが、思ったとおり、警備で、情報操作できるほどの力のある者が、関わっているのではないか…と、それぞれ、口にはしないものの思ったからだ。
「ホーエン山の辺りは、ワーグナー男爵の領土か…」
クラウスは、低い声で呟いた…
「お兄様、私その、ワーグナー男爵が怪しと思ってこちらに伺ったのです。私が、紋章のない馬車で、おとりになりますので、盗賊を捕まえて頂きたいのです。」
「バカな!なっ何をいっている!?」
「貴族の馬車を襲わないのは、握り潰せないためだと思うんです。私なら、公爵家の娘です。堂々と、近衛の方や、騎士団の方が、捜査におもむけると思うのですが⁈」
「いや、妹君。その通りだが…。
それは、いささか、危険すぎますぞ…!」
「私なら、大丈夫です。少しなら、お兄様から、剣も習っておりますし、危険はあまり…ないかと…」
そういいながら、ソフィアナは、ハンスを下から上目遣いにみた。
『私は、全属性持ちだから、なんでもできちゃうって、知ってるでしょ⁈だから、危なくないって、お兄様。』
心の中で、そう呟きながら…。
ハンスは、その瞬間、寄せていた眉間に、さらに深い二本のシワを作った…。




