社会勉強
短めです。
ガシャ
金物が、触れ合う音がした。
「これで、お前のことが、わかるのは、私とクラウスだけだ、お前は、ただの少年…。
そうだなぁ…、アレクとでも呼ぶか。なぁ、アレク、しっかり学び、己を磨いてくるといい…。」
豪華な装いの男は、赤茶色のカツラをアレクと言われた、少年に渡し近くの扉から部屋の外に出て行った。
一般に、市民が着るような服を着た少年と、騎士団長服を着た背の高いがっしりとした男は、豪華な装いの男が、扉から消えるまで、腰を折り、敬意をはらっていた。
扉が閉まると、少年は、見事な金髪の上に、渡された赤茶色のカツラをかぶり、隣に立つ、騎士団長の服を着た男を見上げた。
「今日から、よろしくお願いします。クラウス殿」
「賜りました。おそれながら…。私の事は、騎士団長と…私は、この部屋を出た瞬間より、部下として、接しさせて頂きます。御了承下さい。」
「わかっている。遠慮なくたのむ。」
「はい。賜りました。」
握手を交わす少年の腕には、魔石の付いた銀の細い腕輪が、付いていた。
アレクが、クラウスに案内されたのは、騎士団の寮だった。
寮は、相部屋で、ルームメイトは、騎士団長の二番目の息子14歳のイワンだった。
小型犬を思わせるような、騎士団長とは真逆の優しい顔立ちのイワンは、どうやら母親に似たのだろう。
態度や、話し方もおおらかで、気が利き優しそうだ。
アレクは、クラウスに、団員は、身の回りの事は、全て自分でこなすため、何かわからない事、できない事は、イワンに聞くように言われた。
少ない荷物を、イワンの使っている、ベッドと反対側のベッドサイドに置き、室内を見回した。
ベッドに、机、椅子に、荷物をしまう簡単な棚、クローゼットと、共同のトイレと風呂があるだけの簡単な作りの部屋だ。
ざっと、イワンから部屋の使い方、騎士団のルール、普段の時間配分、食事や、洗濯についてなどの説明を受けた。もっと細かくは、明日から生活する中で、教えていくと言われ、夜も更けていたため、アレクは、荷物をクローゼットに片付けて、風呂に入り、ベッドに入った。
騎士団の朝は早く、基礎体力をつける訓練を朝食前に行う。10歳のアレクには、なかなかついて行くのもやっとのメニューだ…。
イワンは、そんなアレクを気遣いながら、側で、アレクに合わせてくれる。アレクは、嬉しい反面、申し訳ないのと悔しさで、歯を食いしばり、弱音も吐かず、訓練について行った。
それが済めば、朝食。
朝食の後は、事件や、要請が無ければ、休憩と、掃除、洗濯。
その後は、剣の訓練が、始まる。昼食前は、個人での訓練、昼食と休憩の後は、団体での訓練、夕方からは、体術の訓練、夕食後は、騎士や政治、地理に着いての授業だった。
ヘロヘロになってからの、勉強は、中々頭に入る物ではないが、その辺りの勉強は、元より理解しているので、あまり大変ではなかった。
そんな訓練をして数日、アレスは、訓練開始と同時に、訓練場に入る部屋に、騎士団長と話をしているハンスを見つけた。
遠目で、何を話しているかは、わからないが、ハンスと、騎士団長と、もう1人が、訓練場に降りて来ようとして、足を止めた。
剣の打ち合いの、順番待ちのアレスは、ぼーっと、その様子を眺めていた。
訓練場に入る部屋のドアが開き、綺麗な黒髪をなびかせた、女神か天使に見間違わんばかりの幼い少女が、淑女の礼をとり、ハンスに話かけていた…
『あの珍しい髪の色…。あの顔立ち…。
彼女は、まさか…⁈』
アレスは、黒髪の美少女に釘付けになっていた…。




