絶対助けます
前回を少し書き替えて、ソフィアナが8歳になりました。あらすじはかわりません。
ソフィアナは、エスターの家を経由して、ハス、エスター、テレッサとパン屋へ向かう。
パン屋の入り口は、扉が閉まり、カーテンが閉められ、本日休業の看板がかかっていた。
店の脇道から、裏口に周り、ソフィアナは、パン屋の中に入って行った。
パン屋の主人で、リサの母である、カヨは、真っ青な顔で、椅子に座り、周りに、トマスとニジル、ニジルの娘のダーシャが、カヨを気づかっていた。
トマスが、裏口から入った、ソフィアナに気づき、
「あ。ソフィアナ様…。」
と、挨拶をしようとしたので、手でそれを制して、急ぎ足で俯くカヨに、近づいていった。
そして、カヨの手て握り、
「必ず、リサは、見つけるから…」
ソフィアナは、それだけ言い、ニジルと、トマスを見た。
ニジルは、そっと持っていた、紙をソフィアナに渡した。そこには、
《調子に乗るな、娘は、盗賊にくれてやる‼︎》
と言う、文面が、書かれていた。
確実に、文面から、嫉妬ややっかみ絡みの事件だろう。
だが、盗賊とはなんだ⁈
普通なら、身代金か、店への嫌がらせだろうに…
ソフィアナは、首を捻り、ハスをみた…
その目線に気がついたハスは、
「たぶんですが、商人は、荷物を運搬するのに、盗賊に襲われないように、護衛を雇います。その護衛を雇うのにもかなりの、金がかかります。
たまに、護衛を雇えない商人は、女のできるだけ見目麗しい奴隷を買い、荷車に乗せています。盗賊に襲われた時に、その奴隷の良し悪しで、商人達の命が取られずにすむからです。言うなれば、身代わりですね。商人も、毎回襲われるわけではありませんから、毎回護衛を雇うより、奴隷を買い、乗せておいて、襲われたら、商品と一緒に差し出した方が、安上がりと言う事です。」
ソフィアナは、怒りをあらわにしながら、低い声で、
「では、リサを『身代わりにする』と、この紙には、書かれているってこと?」
ソフィアナの言葉に、カヨが、「あああっ」
と、声にならない声を上げて、泣き出した。
ソフィアナは、そんなカヨをみて、
『カヨの前でする話しではなかったわね…』
配慮に欠けた、自分の発言に、反省した。
カヨは、ダーシャにまかせ、一度セブァセス店に、トマス、ニジルと戻る事にした。
セブァセス店に着いた、ソフィアナは、事の詳細をトマスから聞いた。
リサは、昨日の昼間に、買い物に出てから、夜になっても帰らず、心配したカヨが、夜中にトマス達に、相談に来たそうだ。
夜中であったため、すぐに、街の警備に連絡したが、朝までとりあってもらえなかったそうだ。
トマス、ニジル、ダーシャ、カヨで、近所を探したが、見つからず、朝一番に、警備に行き、捜索願いを出してきた。
ソフィアナへの報告は、朝まで待ち、カヨが、警備へ行っている間に、トマスが、連絡機で、連絡したとのことだった。
朝、連絡を聞いた、ラスが、直ぐに捜索に加わり、今は、一度お互いの情報を交換するため、それぞれパン屋に集まり、ラスの帰りを待ちながら、話をしているところだったそうだ。
みんなが、捜索して、パン屋が留守の間に、先程の紙が、パン屋の入口に貼られていたらしく、集まった時には、カヨは、紙を握りしめて、泣いていたそうだ…。
ソフィアナは、どうやって、リサを見つけようか考えていた。
千里眼で、街を探してみたのだが、範囲が広過ぎて、情報量が多く、頭の中がチカチカしてしまい、うまく探せない。目印か何かあれば、別だが、やみくもに探せるものではなかった。
GPSみたいな物があればいいが、こんな事になるとは、考えていなかったから、そんな物持たせていない。
『GPSもどき、考えないとね…』
「ハス、ラスから連絡は?」
「はい。それが…もう、一度は、帰っていて、おかしくない時間なのですが…
何か手がかりを掴んで、離れられないか、逆に何かあったかもしれません。今エスターに、警備に詳細を聞きに、行かせています。」
「そう。では、エスターが来るまで、動きようがないのね…
わかったわ、私、少し、この部屋で、やる事があるの。エスターが来るまで、みんな休んで…。寝てないんでしょ⁈」
トマスとニジルを見やれば、薄ら目の下にクマがある…。
「ハス、こんな時だし、一人で行ったなら、エスターが心配だわ…、迎えに行って。テリーは私にお茶を入れてね。」
みんなを部屋から追い出した、ソフィアナは、テレッサに、魔法陣の本と、ハンカチ数枚と、トマス達に作った、防衛用の布も出すように言う。
言われた通り、ポケットの収納から出していく、テレッサ。
ソフィアナは、位置を示す魔法陣をそれぞれの布に付与していった。
「ハンカチは、テリー、ハス、ラス、エスターに、布は、元々渡すはずだったパン屋と、セブァセス店のみんなに…。いつものように、登録してから渡して…。位置を示す機能があるけど、プライバシーも考えて、緊急時に、意識した時だけ、私に、位置がわかるようにしたわ。テリーたちのハンカチは、ハンカチを握ったり、肌に触れさせたら、発動するわ。
私が、これをもっと早く作っていたら…」
ソフィアナは、そう言いながら、俯いた…
「ソフィアナ様。ソフィアナ様は、何も悪くありません。落ち込む必要も、ないんです。
本当は、私達を心配してくださるだけで、私達は、充分なのです…。
けれど、いつも、守ろうと、心を傾けてくださる…。そんなに、悔やまれる必要は、全然ありませんのに…。そんな優しいソフィアナ様だから、みんな大好きなんですけどね…」
テレッサは、少し困った様に、微笑みながらソフィアナを見つめた。
テレッサの言葉に、ソフィアナは、ゆっくり顔をあげ、
「だって、みんな大事なんだもん。」
少し拗ねたように、呟いた。
『大事にしても、この色々な装備は、やり過ぎだ…』と、密かに思うテレッサだった。
そんな時、エスターとハスが帰ってきた。
手には、ラスの鞄を持って…
その頃、とある部屋では…
ガシャ
金物が、触れ合う音がした。
「これで、お前のことが、わかるのは、私とクラウスだけだ、お前は、ただの少年…。
そうだなぁ…、アレクとでも呼ぶか。なぁ、アレク、しっかり学び、己を磨いてくるといい…。」
豪華な装いの男は、赤茶色のカツラをアレクと言われた、少年に渡し近くの扉から部屋の外に出て行った。
一般に、市民が着るような服を着た少年と、騎士団長服を着た背の高いがっしりとした男は、豪華な装いの男が、扉から消えるまで、腰を折り、敬意をはらっていた。
扉が閉まると、少年は、見事な金髪の上に、渡された赤茶色のカツラをかぶり、隣に立つ、騎士団長の服を着た男を見上げた。
「今日から、よろしくお願いします。クラウス殿」
「賜りました。おそれながら…。私の事は、騎士団長と…私は、この部屋を出た瞬間より、部下として、接しさせて頂きます。御了承下さい。」
「わかっている。遠慮なくたのむ。」
「はい。賜りました。」
握手を交わす少年の腕には、魔石の付いた銀の細い腕輪が、付いていた。




