ソフィアナ少女を拾う
3日間意識不明だった為、一週間は、部屋から出してもらえなかったが、引き篭もりな、ソフィアナには、苦痛ではなかった。
安静期間が過ぎても、部屋に引き続き、引き篭もっていたくらいだった。
こもりきりな娘を心配した、オスターは、街に買い物に行くと、ソフィアナを連れて出かけた。
4歳のソフィアナも、29歳異世界人にも、街の様子や雰囲気は、普段とは違い楽しく、興味を引く事が多かった。
馬車から、街をキョロキョロ見渡して楽しんでいた。
カフェで、美味しいお菓子やお茶を頂き、路地を散歩していると、ソフィアナと同じくらいの女の子が、厳つい男に、殴られ、倒れた。
29歳保育士には、無視できない光景だった。
なんせ、車道に飛び出した見ず知らずの子供をかばって死んだくらいの子供好き…
ソフィアナは、倒れた女の子に駆け寄った。
「なんだてめは」
倒れた女の子を更に足蹴にしようとしていた、厳つい男は、駆け寄った、小綺麗なお嬢様を怪訝な目で見た。
その行動に、息を飲んだのは、オスターだ。
「私の可愛いソフィアナが、危ない!」
オスターは、まだソフィアナには、何もしていない、厳つい男に、ファイアーボールをぶつけた。
厳つい男は、背後にある壁まで吹っ飛んでいった。
「ソフィアナ大丈夫かい⁈」
目の前の惨事にソフィアナは、目が点になっていた…。
「お父様…
ありがとうございます。大丈夫です。ですが、あの者は、まだ、私に何もしておりませんでしたのに…」
「なんだてめい、なんて、汚い言葉をソフィにかけたら、不敬罪だよ。」
父のあまりの貴族ぶり理不尽に、ソフィアナは絶句した。
「それより、ソフィ、その子は知り合いなのかな⁈」
オスターは、そう言いながら、ソフィアナが、抱き起こしている女の子を除きこんだ。
「いっいいえ…。ただ、叩かれて痛そうで…」
「知り合いでもないのに、助けに行ったのかい⁈
僕の可愛いソフィは、心まで天使だね。でもね、こんな汚い子に、心をわけてあげることはないんだよ。
ほら立って、ソフィ」
ソフィアナは、父の冷たい言葉に、目を見開いた。
そして、引き剥がされる前に、
「あなた家族は⁈お家は⁈誰か、迎えに来てくれる⁈」
と、早口に聞いた。
少女は、首を横に振り、今暴力をふるわれた男の元で、働いていたが、足を骨折して使えないからと、丁度捨てられた所だった。ことを説明した。
「いくあてはないの⁈」
と、聞くソフィアナに、少女は、コクリと頷いた。
「さあ行くよ。」
と、ソフィアナの腕を引き上げる父に、
ソフィアナは、うるうるした、上目づかいで
「お父様、私、お友達が欲しい。」
「お友達かい⁈いいよ。確かルイターニュ公爵家に同じくらいの令嬢が…」
「お父様、違うの、あの子がいい。ご令嬢は、お家に帰ってしまうけど、あの子は、お家が無いって、だから、お家に一緒に帰れば、ずっと一緒居られるわ〜」
「う…だが…」
「お父様…お願い。」ダメおしに、胸の前で手を組みお願いポーズ。
「う…う…。はあー。仕方ない。」
「おいそこの男」
オスターは、先程ファイアーボールで、吹っ飛ばした男に声をかけた。
オスターも無益な殺生はしない。ファイアーボールもちゃんと手加減されていた。
壁にもたれるようにうずくまる男の服が、若干焦げ、腹は軽く赤い…が…、あれくらいで済んだのは、ファイアヤーボールで吹き飛ばしたのではなく、ファイヤーボールを放つ衝撃波の方に重点をおき放ったのだろう…。
器用な手加減だが…。
そんな手間かけるくらいなら、わざわざ魔法使わずに、言葉か、手を使えばいいのに…。と、思わないではない…。
声をかけられた男は、痛みに腹を押さえながら、オスターの前に膝まづいた。
「この娘をもらい受けたいが、いいか?この娘を譲るのであれば、お前の不敬罪は、無かった事にしてもいい。」
男は、オスターのその言葉に、顔をあげ、笑顔で何度も頷いた。
元は骨折して、使い物にならなくなった小間使いで、今しがた捨てようとしていた者が、不敬罪の代わりになるなんて、願ってもない事だった。
不敬罪は、市民には、莫大な罰金や、奴隷落ちや、処刑されても文句いえない罪だ、それが、見捨てようとした、少女1人ですむなら、安いものだからだ。
こうして、その少女は、屋敷に連れ帰られた。