お店が欲しかった
「先日は、どうもトマスさん。」
「あっあなたは、こないだのお嬢様…。」
フードを取ったソフィアナを見て、
トマスはびっくりして、目を見開いていた。
「おっ、お嬢様…。
借金を肩代わりしていただき、ありがとうございます。ですが…私には、返せるあてが…ありません…。」
トマスは、俯き悔しそうに拳を握った。
「トマスさん。借金は、追い追いゆっくり返して下さればいいですよ。その代わりと言っては何ですが、私に力を貸して下さいませんか?」
「え⁈…わっ私にできることがあるなら、是非にでも…」
トマスは深々と頭を下げた。
「こんな恩を売るようなやり方で、断れないのをいい事に、申し訳ないのですが、私のお店を切り盛りしていただきたいのです。」
ソフィアナは、お店を作りたいが、商会に入らなければ、商売ができない。商会に入れるのは、成人以上だし、登録金もいる。
お金は何とかなっても、成人して無いソフィアナには無理だと、エスターの家で、クッキーを作った日に、ハスに教えてもらった。
なら、はじめから、商会に入っている人に、商売してもらえばいい話で…
なら、トマスはうってつけだと、トマスの話を聞いた帰り道に思っていたのだった…。
「あの…お嬢様…」
声をかけてきたのは、トマスが働いている、店の店主だ。
「この店も、この有り様で、営業を再開しても、きっとさっきの奴らに、嫌がらせされるでしょう。
それにもとは、この店も借金のかたに、とられていました。
ですから、この店は、お嬢様の物です。
そうなりますと、私と、娘の行く場所が、無くなってしまいます。もしよろしければ、私どもも、トマスと一緒に雇っていただけませんでしょうか…。」
店主は、深々と頭を下げた。
ソフィアナには、願ったり叶ったりの申し出だ。
店は、もとから、店主に返すつもりでいたが、確かに嫌がらせなどされる可能性もある…。
ソフィアナは、しばらく考えてから、口を開いた。
「わかりました。私は、ソフィアナ。まずは、お2人の名前教えて下さい。」
二人は、店主が、ニジル36歳。娘は、ダーシャ16歳。と名乗った。ニジルは離婚して独り身であるが、あと他に従業員が、5人居ると言う。
しかし、最近は、借金取りが来て危なかったので、休ませていたらしい。
どうせなので、その人達も、本人が、了承したら、そのまま働いてもらう事にした。
「この店が、私の物という事なら、まず、この店を売ったお金で、孤児院のある近くに、手頃な店を購入して下さい。しばらくの間の生活費、資金、従業員のお給料には、こちらをお金に変えて使って下さい。」
ソフィアナは、残っていた、解毒の指輪を店主にわたし、指示を出した。
店主は、一瞬ためらいを見せたが、その指輪の袋を受け取った。
「言わなくても、分かるとは思いますが、一度に売らず、少しづつお金に変えて下さい。あと、出所は、秘密ですから、よろしくお願いしますね。」
ソフィアナは、後の処理と手続きを店主とトマスに任せて、クローゼット経由で屋敷に帰った。
店には、以前ハスが、エスターの為に作った、送受信器の送信器を置き、何かあったら、話しかけるように、言い聞かせた。
これで、店の準備ができたら、連絡が来るはずだ。
屋敷に着いて直ぐに、夕食の時間であった為、急いで準備をして、食堂へ行くが、いつもの様に、グロスターお兄様しか居なかった。
ハンスお兄様も、お父様も最近忙しいらしい。
「グロスターお兄様。あの、こちらのアンクレットを付けて頂けませんか?
これ、家族で、お揃いにしようと思ってまして…。
アイデアは、私、お金はハンスお兄様で、グロスターお兄様には、協力をして頂いて、お父様のプレゼントにしようかと…。どうでしょう?」
「ソフィアナは、協力がプレゼントなんて、上手いこと言うね…。僕も、父上の誕生日どうお祝いしたものか悩んでいたから、その話乗らせもらうね。」
「グロスターお兄様ありがとうございます。これは三人からのプレゼントなんです。協力して頂いて、感謝します。絶対、毎日身に着けて下さいね。」
そう言いながらソフィアナは、ニッコリ微笑んだ。
それから数時間経って、ハンスお兄様が、帰ってきた。出迎えに間に合ったソフィアナは、帰ったハンスに、駆け寄り抱きついた。
「ハンスお兄様、お帰りなさい‼︎」
ハンスは、駆け寄るソフィアナを抱き上げながら、極上の笑みだ。
「僕の可愛いソフィアナ。ただいま。」
「お兄様、アンクレットと骨、ありがとうございます。早速できました。」
そう言いながら、ハンスの分を渡した。
「ありがとう。大事にするよ。」
「グロスターお兄様にも、もう渡してあります。機能については、伝えてありません。家族で、お揃いにするプレゼントだからと、協力をお願いする形にしました。」
「わかったよ。話は、合わせておく…。」
ハンスは、ソフィアナを抱き上げたまま、廊下を話をしながら歩いた。
「ハンスお兄様ばかり、お金を使わせてしまいましたから、お詫びをしたいので、次のお休みの日に、私に時間を下さいますか?」
「お詫びなんかいらないが、私の時間なら、いくらでもソフィアナにあげるよ。」
終始笑顔で、ご機嫌な、ハンスは、ソフィアナを部屋の前で下ろすと、おやすみのキスをして、自身の部屋へ向かって行った。
その晩、寝る準備をしていたソフィアナに、テレッサが、
「ソフィアナ様…。よかったのですか⁈借用書もなく、指輪を渡し、さらにお店のあれこれと…」
「トマスやニジルが、踏み倒すって⁈
ふふふ。私、それなら、それでいいと思って…。
ただ、ハスが作った送受信器だけは、私の物じゃないから、心配だけど…。
まあ、でも、あんな指輪見せられたら、商売人としては、目先のお金より、未来をみて、一緒に店をやってくれると思うわ。店ができても、アイディアは、渡せても、私が手伝えるわけじゃないから、彼等にやる気がなければ、続かないから…。だから、私は、彼等を信用して、掛けてみたの。」
にっこり自信満々に笑うソフィアナを見て、テレッサは「出過ぎた事を申しました。」と謝った。
そんなテレッサをみて、
「心配してくれてありがとう。あと、そんなに、トマスを嫌わなくてもいいと思うのだけど…」
と、呟いたが、聞こえないフリをされてしまった。




