トマスを助けよう2
翌日昼頃、朝出勤したハンスから、小包で、ソフィアナ宛に、ボーンフォックスの骨と、小洒落た感じの高そうな男性物3個と女性物1個のアンクレットが、屋敷に届いた。
ハスは、朝早くから、ハンターギルドに、必要なものを買い物に行っていた。
「昼食を食べたら、これ、つくりましょうか」
ソフィアナは、そういい、昼食をとりに食堂へ向かった。
食堂でみたセイエラも、ジョセフも、いつも通りだ。
息子を気にした様子一つ見せず、いつもと変わらない彼らは、流石と言うべきか…。
昼食のあと、ハンスお兄様からもらったアンクレットに、ソフィアナが、解毒、麻痺、異常回復の魔法陣を与付していった。
ハンスが用意したアンクレットは、ご丁寧に魔石つきだった。
サイドにもちらほら、宝石があったので、ソフィアナは、無意識時の打撃、魔法攻撃防御と、無意識の身体強化補助を付けておいた。
身体強化補助は、いつもより、少し運動できるとか、体力がもつくらいで、あまり気にならない程度にした。なぜなら、魔法が発動しているのをバレないようにしかったからだ。
ちなみに、ハスやテリー達のアンクレットやネックレスの方が性能が高いが、内緒だ。
だって、貴族が、使用人と同じものをもらって喜ぶはずないから…。だから、わざわざ、ハンスお兄様に用意してもらったのだ。
ソフィアナが、家族のアンクレットを作ってる間に、ハスが、トマスの借金代わりになる指輪を作る。
指輪の土台は、魔石をつけるために、その辺の防具屋で、ハスがあるだけ買ってきたものだ。
錬金術で、ハスが、どんどん指輪を作っていく。
普通は、作るのに、一つ二つが、限界だか、ソフィアナ作のネックレスにより、ハスの限界が引き上げられているので、いくつか作ったが、まだ、魔力が残っていた。
ハス自身の魔力量を底上げしたのと、ネックレスの石に魔力を貯めれるようにしたのだ。
その原理を思い付いた、ソフィアナが、ついでに…とばかりに、たまたまラスが持っていた鞄で、大容量の収納鞄を作ったのは、言うまでもない。
鞄は、持ってられない時に困るからと、ハスがいつも着ているベストのポケットとテレッサのお仕着せのポケットにも、収納鞄より、容量は少なくなったが、同じ機能を付けていた。
もう、ソフィアナの使用人は、歩く国宝と化している…。が、彼等はそれに気付いていない…。
とりあえず、10万グコの棒なら、500万グコの代わりにするのに、50個以上必要だが、スプーンやフォークより高い指輪、さらに2回使えるとなれば、簡単に計算しても、25個あれば、お釣りがくるほどだ。
一応、25個は準備したが、馬鹿正直にそのまま渡す気もない。
まずは、トマスに聞いた働いている店に、それを持って、出かけた。
「そこの角を曲がると言われた店があると思います。」
ハス、テレッサ、エスターを連れ、エスターの部屋に繋がるクローゼットから、街に移動して、トマスの働く店へ歩く。
店の前まで来た時、店の中から、騒がしい声が聞こえてきた。
「これは…ギリギリセーフ⁈ギリギリアウト?」
トマスと、店の店主らしき人は殴られ、店の中は荒らされ、若い娘が、捕らえられ、連れ出されそうになっていた。
なんとまあ、見るからに修羅場だ…。
ソフィアナは、身分を隠すため、頭からすっぽりフード付きのマントを着ている。周りを誤魔化す為に、エスターとテレッサも同じ格好をしている。
ハスだけは、使用人服を着ているだけだ。
「すみません。そこの方、その人離してあげて下さい。私どもは、トマスさんの借金の肩代わりにまいりました。少しお話しよろしいですか?」
ハスは、丁寧に話かけた。
「ふん、こいつに貸した金は800万グコだ。今すぐ耳揃えて返さなきゃ、ならねーが、そんな金あんのか⁈坊ちゃんよ…。」
ここ数日で、すでに300万グコ増えている…。
いかにも柄の悪い男が、ハスの前に出てきてそう言いながら、顔を近づけてきた。
「困ったことに、現金で、そこまでは、持ち合わせていません。しかし…」
ハスは、おもむろに持って来た巾着から、2個の指輪を取り出した。
「こちらなら、数個ございます。いかがですか⁈話し合いに応じて下さいますか⁈」
そう言うハスが持つ巾着を見ながら、男が、嫌らしい顔でニヤついた。捕らえて居た娘を投げる様に手放した。
「いいだろう。それはなんだ?」
「まずは、借用書、返金済み承諾書を確認させて下さい。話はそれからです。」
ハスがそう言うと、男は、舌打ちしながら、それらを懐から出して読めるように広げて見せた。
「確かに確認しました。」
ハスは、文章を読み内容を確認して、間違いない事を確かめた。
その隙に、捕らえられていた娘を助け起こしたエスターは、娘を店主とトマスの所へ連れて行き、静かにしているように小声で伝えた。
「こちらの指輪は、解毒の効果を持つ指輪です。
効果は2回です。一つだいたい80万グコはする代物です。800万グコの借金ですので、10個もあれば、代わりになりますね。」
ハスは、袋を逆さまにして、10個の指輪を出した。
もともと5万グコしか貸していないのに、これでは、ぼろ儲けもいいとこだが、こういう奴らは、どれだけでも欲しがるものだ…。
「ふん。とんとんでは、こっちに、なんの利益もねーなー。物で、返済の場合は、それ以上って決まってんだよ。
あとそうだなぁ。5個あれば、いいが…。5個は無いだろうから、うしろの娘と、指輪10で、手を打ってやる。または、後日5個持ってくるかだが…」
男は、ニヤニヤニヤニヤしている。
袋を逆さまにして出したため、もう残りは無いと思っているのだろう。
さらに娘を渡せという事で、さらに5個絞りとり、
さらに数日、日にちが経てば利子でまた、増えていく事を隠して、待ってやるなんていっているのだ、テレッサは、ブチ切れ寸前だ。
「では、10個では足りず、15個あれば、全て返済という事ですか⁈」
ハスは、慌てたように、言う。
それを聞いた男は、してやったりと言う顔で、「ああ。」とうなずいた。
「待っていただけるなら、用意いたしますので、その事、こちらに書いて頂けますか⁈」
男は、日にちが経つ毎に、利子が増す事をハスが、気づいていないことに、笑いが吹き出そうなのを我慢しながら、
「いいだろう。」と、
15個の解毒効果の指輪で、借金返済と同等の価値とする。
と言う一文を借用書に書き上げた。
「では、魔力にて契約決定させて下さい。」
いいだろう。
元々の契約者の男と、店主、トマスが、それぞれ一滴づつ紙に血を付けると、紙が光り、魔力により契約が決定された。
契約に使われる紙は、基本的にこの契約魔紙でないと、契約が、有効にならないため、みんな契約には、血を垂らすのだ。
それを確認してから、
「契約の借用書と、返済済みの承諾書を机の上に置いて下さい。」
と、ハスが言う。
「なぜだ⁈そんなことより、はやくあと5個準備した方が、身の為だぜ…。なんせ、もう契約は成立してんだからな‼︎お前利子に付いては、何も言わなかったからな。利子は今まで通りだ。はははは」
男は、笑いが止まらないとばかりに笑っている。その側で、ハスは冷静に話す。
「とりあえず、借用書、承諾書ここに置いてもらえますか⁈確認次第準備しますから。」
男は鼻で笑いながら、机の上に二枚を重ねて置いた。
もちろん取られないように、紙から手は離していない。
そんな紙の上に…
ジャラジャラ
収納のポケットこら出した、もう一つの袋から、15個の指輪を置いた。
その瞬間。
契約がされた借用書は、灰になり、返済済みの承諾書には、返済を証明した魔法陣が浮かび上がった。
「な‼︎」
それを見ていた男は、絶句した。
持って無いと思っていた物が、さらに15個でてきたのだ。
男の目の前には、25個の指輪。
だが、権利をもらえたのは、15個。
それでも、充分過ぎる利益なんだが、男は悔しくて仕方なかった。
思いっきり机を叩き、覚えてろ‼︎っと叫ぶと、15個の指輪を持ち、部屋から出ていった。
部屋に残された面々は、ふーっと息を吐いた。
「あっあの…」
男が出て行ってから、おずおずと声をかけてきたのは、トマスだった。
「こんにちは。トマスさん。」
ソフィアナは、フードをとりトマスに振り返ってた。




