スアズラン
「お兄様。お帰りなさいませ。」
城で、王子のゴタゴタがあって、やっと屋敷に帰ったのは、7日目だった。
目の下にクマをつくり、もういつ倒れてもおかしくないほどに、ふらふらしながら、帰宅して直ぐに、ぼくの可愛いソフィアナが、出迎えてくれた。
それだけで、眠気や疲れが吹っ飛んで行った。
なのに、ソフィアナは、
「お兄様に、剣を教えて頂いたお礼です。」と、一本の白い綺麗な花を胸にさしてくれた。
使いの者に、街へ花を買わせに行ったらしい。その花は、珍しい花で、敬愛と言う意味があるのだとか…。
7日間も居なかったから、枯れてしまわない様に、こないだの奴隷の土属性もちに、加工してもらったらしい。
なんと、心優しい…。
また、直ぐに城に帰らなければいけないが、どれほどこの心を癒してくれたことか…。
あと7日間寝ずに頑張れそうだ。
そんな花をいつもの近衛の制服の胸にさし、王子達の護衛についた。
花は白く小さめで、白い近衛服には、目立たないから、誰かに見せる為ではなく、自己満に付けていた。
すると…
「ハンス…その花は何と言う花だ⁈」
と、めざとく第1王子ベルンゲラ様に聞かれた。
「たしか、スアズランと言います。」
と、答えると、王子は、目を見開き、それを譲れと言いだした。
「こちらはその…」
ソフィアナから直にもらった物をいくら王子の頼みと言えど、渡せない…
もしやと思い、声を潜め
「こちらは、お渡しできませんが、もしや、抜けだされた時の目的の花は、こちらの花でしたか⁈
もし、そうでしたら、私が、買ってまいりますが…」
と、王子に申し出てみた。
この花を取られるくらいなら、お使いくらい、いくらでもしよう!
王子に、王妃様の誕生日までに、花束で用意して欲しいと、言われた…
「殿下、一つ伺っていいでしょうか⁈」
「なんだ?」
「王妃様のお誕生日は、明後日ですよね?一週間以上前に抜け出して、お花を買われていたとしても、明後日までは、もたなかったかと…。もっと早く渡されるつもりだったのですか?」
「え?いや…え?枯れる?花が枯れたり咲かなくなるのは、冬ではないのか?」
「え?」
あ。そうか、わかったぞ。城の中の花などは、徹底して管理されている。王子が目につくところに枯れた物など、置くはずもない…
「王子…切り花は、そんなに持ちません。魔法で、加工してあれば別ですが…」
王子は、無言で、そっぽを向いた。
「買ってきた花は、魔法で、加工しておきますか?私の家の者が、できますが…。ちなみに、これもしてあります。」
と、自身の花に手を添え女性が見たら瞬間に悩殺されそうな笑顔を向けた。
王子が顔を赤くしながら、小声で
「加工しといてくれ…よろしく頼む」
と言い、足早に進んで行ったその背中を苦笑いしながら追って行った。
後日、公爵家次期当主の近衛騎士ハンスが、スアズランの花束を買い求めさらには、制服の胸に飾っているという事が、貴族のご令嬢の間で噂になり、ハンスの目にとまりたい令嬢達が、スアズランの花を買い求めに、花屋に殺到して、スアズランの花はとても人気の高い花となったのは、また、別のお話…




