セヌッシュとサラ
セヌッシュ視点です。
今日は、朝からやたらと同じ髪型の侍女を見る。
何かあるのだろうか?
3日前帰ってから、初日に、ある程度の人への挨拶はすんだ。
今日は、ベルンゲラ様の護衛で、カルマイル国に行くのに、ハンスさんと護衛計画を見直す為、近衛騎士の休憩所兼、執務室に行く所だ。
すれ違う侍女をみて、ふと、サラを思い出す。
先日久しぶりに会った彼女は、以前にも増して、キレイになっていた。
ソフィアナ様の気まぐれで、サラが作ったクッキーと、お揃いのリボンも手にした。
偶然にだが、嬉しかった。
男の私が、リボンをするには、少し勇気がいる…。
だから、ハンカチに挟んで、胸ポケットにしまっている。
そんな事を考えながら歩いていれば、目的の場所についた。
コンコンと、近衛騎士の執務室の扉をノックすれば、ハンスさんの声がした。
許可を取り入室すれば、紙を差し出された。
「すまないが、急遽一つ仕事を頼まれてくれ。その場所にこの手紙を持って、護衛に向かってくれ。」
「はい。わかりました。では、護衛計画については、後日ですか?」
「ああ、明日のこの時間に、もう一度きてくれ。すまないな。」
「いえ、大丈夫です。では行ってまいります。」
ハンスさんに挨拶をした後、指定された場所に向かう途中、マリー様とソフィアナ様に会った。
「おはよう御座います。」
「おはよう御座います。」
と、挨拶を交わし、周りをみるが、サラは居なかった。その後、もう一度周りをみれば…
「今日は、ソフィアナ様やマリー様もその髪型なんですか?」
身分の高い令嬢が、揃って、侍女と同じ髪型だ…。違和感しか無くて、突っ込まずにはいられなかった。
「ふふふ。この髪型は、ちょっとしたおまじないなんです。」
「今度の旅の無事を願うおまじないなんです。相手は誰でもいいのですが…。皆思い思いに、大切な人の無事を祈っていますよね?」
「ええ、そうね。私は、ソフィアナ様のご無事を願って、黒のリボンを髪に編み込みましたわ。」
マリー様は、そう言うと、少しだけ後ろに振り向き髪型を見せてくれた。
確かに、マリー様の金髪に近い薄い緑の髪に、ソフィアナ様の、黒が混ざったように編み込まれている。
「相手の色が自分の色に埋れることで、自分が、相手を抱きしめているみたいじゃないですか?守っているように…」
ソフィアナ様に、キレイな笑顔で問われ…。
確かに、髪の色は、その人の属性が反映される事が多い…。個人を比喩するには、いいかもしれない。
「なるほど。ちなみに、ソフィアナ嬢は、誰の無事を祈ってみえるんですか?赤茶色は、ベルンゲラ様の色では、ありませんよね?」
「………。秘密ですわ。」
「そうですか…。」
「もしかしたら、セヌッシュ様の事を祈って居る人がいるかもしれませんね?深い緑のリボンをしている子を探してみたらいかがですか?」
「ソフィアナ様。セヌッシュ様は、おもてになるから、そこらじゅう緑のリボンだらけよ。」
「ははは。私のような、木の属性は、多いですからね…。確かに周りに緑のリボンが、ちらほら居ますが…、鮮やかなのは、どちらかと言えばフランです。私の様な黒に近い、深い緑の者は…。残念ながら、居ないみたいですね。」
「ほほほほ。そうね。“深い緑”は、居ないわね…。」
「あら?ソッソフィアナ様、こんな時間です。そろそろ、行きませんと…」
「え⁈あ!そうね…」
何が言いたかったのか、2人は、急に慌てて部屋の方へ行ってしまった。
まあ、私も、仕事を言いつけられていた為、どう話を切りあげるから悩んでいたから、丁度よいが…。
紙に指定された場所にいけば、1人テーブルに白い布をかけながら、せっせと何かの準備をしている侍女が居た。
今日、この場所に誰かが来るのは間違いないらしい。
準備していた侍女が近づいた私に気が付き、振り返った…。
「サラ…」
「え!?セヌッシュ様?え…。」
しばしの沈黙が、2人の間に流れた。
「は!あっ!あの、何か手紙をお預かりなさってませんか?本日こちらに始めにみえる方が、手紙を持って来ると言われておりまして…。ご招待する方は、その手紙の中に、詳細が書かれているので…」
「手…がみ…?」
「あっ。違いましたか?たまたま通られただけでしたか?それは、大変失礼致しました…。」
サラが慌てたように、頭を下げた。
いや、手紙…手紙…。ああ、ハンスから
「あいや、すまない、少し呆けていた。手紙は、これかな?」
ハンスから預かっていた手紙をサラに差し出せば、キレイな手が伸びて来て、丁寧にそれを受け取った。
裏返し確認すれば、マリー様の蝋印がされているとのことだ、間違い無いだろと、サラは中の手紙を確認して、固まった。
しばらく、待ってみたが、動かないので、声をかけてみることにした。
「サラ…。どうした?手紙には、なんと?」
「え!?え!?あっ!しっ失礼しました。」
サラは、これでもかと言うほどアタフタしていた。心配になり、一歩近づけば、
「こっ、こっ、こちらへどうぞ。」
と、椅子をひかれた…。
「私は、護衛として呼ばれたはずだが?」
「マッマッマリー様からのお手紙で、本日の招待客は、セヌッシュ様だと、書かれておりました。マリー様と、ソフィアナ様が、こちらにみえるまでの対応を任せてられました。どうぞお座り下さい。」
サラが、椅子を促し頭を下げた。
下げた頭に揺らめくリボンが、一瞬見えた。
今日のサラも、皆と同じ髪型だ…。
リボンの色は、丁度木陰になり見えにくい…。
サラは、促した椅子に、私が座らない事で、困惑していた…。困らせたい訳ではないので、素直に椅子に腰掛けた。
サラは給仕の為に、侍女帽を取り出して髪をしまった。
お茶やお菓子をワゴンで準備している後ろ姿から、リボンの色をみようとするが、見えない。
じろじろ見るのも、気が引けて、サラが振り向くより早くテーブルに向き直る。
お茶や、お菓子を給仕し終えたが、サラは、侍女帽を脱がない。おかわりなどの給仕に備えているのだろう…。
「サラ…。1人でお茶するのも寂しいから、一緒にテーブルにつかないか?」
「いえ、めっそうもございません。」
「頼むよ。騎士団なんて男ばかりだから、こんな優雅にお茶もしないし、給仕もされない。だいたい自分でやるからね。貴族だし、これが普通なのもわかってるけど、こういう扱いがない、辺境地にいたせいか、みんなで、テーブルを囲う方に、慣れてしまったみたいなんだ。どうも、落ち着かなくて…。せめて、2人で居る間だけ、テーブルに着いてくれないかい?」
「え…でも…」
「サラ頼むよ。」
困ったように、笑いかければ、
「はい…。では、お言葉に甘えて…」
とサラも向かい側に、座ろうとした…。
「あ。君のお茶とお菓子も準備して、座って。私がやってもいいが、慣れない事をして、城の物を壊すと、請求が怖いからね…。」
戯けてみせれば、サラは、くすくすわらいながら、自分の分のお茶とお菓子を取り分け、椅子に座った。
お互いに、何を話すでは無いが、最近あったことなどを、少しづつ話、笑いあった。居心地のいい空間に、胸の中が温まる。だが、それとは別に、サラの侍女帽の下のリボンを気にする自分がいた。
もし、自分の色だったら、どんなに嬉しいか…。
たとえ、自分の為でなく、同じ色の他の誰かの為であっても、自分だと、密かに思うくらいは、許されるだろう。
ただ、他の色だったら…
だが、マリー様の様に、女性同士で、まじないをしているかもしれない。
サラの事だ…。きっとマリー様の色をしているに違いない。
ああ。そうだな。それが一番しっくりくる。
逆に、マリー様の色意外なら…
それは、その人をマリー様より思っていると言うこと…。
ふと、そう思えば、胸を何かで切りつけられた様な痛みが走った。思わず胸を掴み机に寄りかかった。
それを見たマリーは、慌てて、こちらに駆け寄ってきた。
「セヌッシュ様?どうかされましたか?」
「………。」
マリーの言葉は、聴こえていて、聞こえていない…。
リボンが気になって仕方ない…。
侍女帽を留めて結んでいる紐が、一本、サラの耳の後ろから前に垂れている。
徐にそれを引っ張っる。
軽く結んであるそれは、ハラリと結び目を解き、スルスルと下に滑り落ちる。
それにつられるように、そのまま、支えをなくした侍女帽は、帽子としての形を保てなくなり、一枚の布になり、ついで滑り落ちた。
何が起こったかわからない様な顔で、サラはこちらをみている。
しゃがみ込んで、私を心配したサラを見下ろして居る私の位置からは、
サラの髪に編み込まれた、リボンの“深い緑色”が、ハッキリ見えた。
そして、私が、土産にし、マリーが選んだ、お揃いのあのリボンだった…これは…。
「サラ…私は、自惚れてもいいだろうか…?」
セヌとサラは、この後、セヌが抱きしめて、思いを通じ合ったんじゃないかなぁ〜と、私は、思いますが、皆様は、どう思われますか?
セヌの魅力に耐え切れず、サラが、逃げたかもしれませんね…?
そう。ご想像にお任せしますってやつです。笑
話のタイミングがありましたら、その後の2人を書くかもしれませんが、この2人は、こんな感じがいい気がしてなりません…。
なぜなら、まだ、サラはマリーに必要だから!笑
さてさて、こんなモヤっとで、申し訳ありません。
本当は、これで、今年ラストでしたが、やっぱり明日も更新します。




