お久しぶりです。
不定期ですみません。
僕は、この国の騎士団長、クラウス・アザリーの2番目の息子イワン・アザリーだ。
僕は、最年少で、我がロゼスチャー王国の第一王子、ベルンゲラ・ロゼスチャー様の近衛となった。
正しくは、その近衛の中でも、ベルンゲラ第一王子の婚約者、ソフィアナ・ブランバードの近衛なのだが…。
なった経緯に、まあ、ちょっとした、王子の秘密を知っている、友人的立場、ソフィアナ嬢の友人的立場が、大いに影響したのだが…。まあ、それも、仕方ながい事だった。
さて、今日は、僕の護衛対象である、ソフィアナ嬢が、珍しく、ベルンゲラ様の執務室にいる。
それ自体は、そんなに珍しくは無い。たまにあることだ。だが、今、目の前の状況は、非常に珍しい…
「ゲラ様…。やっぱり…これは…。」
ソフィアナ嬢は、真っ赤になっている…。恥ずかしのだろう…。
「え?ただ。手伝ってもらってるだけだよ?何を恥ずかしかっているの?はやく。お腹すいたよ。」
「でしたら、自分で食べれるように、治癒魔法で、完治させますから…」
「だめ!これは、僕への謝罪と、君の反省の為だから…さあ。」
「でっでも…」
う…。
なんだろう、見ていられない。
昨日、ソフィアナ嬢が、また何かやらやらかし…
そして、ベルンゲラ様は、怪我をされたらしい…
でも、昨日、会った時は、かすり傷ばかりだったはずだ…。
でも、今は、なぜか、すごい笑顔で、両手に包帯をしている。
先程のソフィアナ嬢への説明によれば、“城の治癒師にだいたいの治療をしてもらったが、両手首の捻挫は、直ぐには治らなかった”らしい。
だから、朝食が摂れなかった。
昨日の事を反省しているなら、態度で示して欲しい。よって、朝食を食べさせて欲しいとの事だ。
それが、恥ずかしい、ソフィアナ嬢は、“自分の力で治してあげる”と言っているのだが、急に治っては、周りの目を誤魔化せないたらなんたら…と言い、断っている。
いや、その前に、捻挫してないよな…。
昨日夕食、普通に食べてたよな…。
急に、捻挫なんて、それこそ周りの目誤魔化せないだろう…。
だから、わざわざ、執務室に朝食を準備し、ハンスさんに、強制的に、休みを与えて、さらに、室内の護衛を僕だけにしたんだよな…。
何もいうまい…。
何もいうまいが、第一王子よ…。
そんなキャラだったか?
何が、どうして、こうなったか、うちの王子が、何考えてるかわからないが、僕は、黙って護衛している。
哀れソフィアナ嬢。君にエールを贈る…。
「えっと…。このくらいのサイズなら、お口に入りますか?」
ソフィアナ嬢は、サラダのトマトを一口大に切り、フォークで、ベルンゲラ様の口元に持っていく。
「ああ。」
と、ベルンゲラ様は、言いながら口を開けるが、ソフィアナ嬢は、座っていた椅子から、中腰になり、フォークを差し出しているため、手が震えている。
「あ!」
あとちょっとで、口…と言うタイミングで、トマトは、フォークからスルリと滑り落ちた。
滑り落ちた、トマトの汁で、ベルンゲラ様の着ている服に染みができた。
「あ!!!すみません!」
ソフィアナ嬢は、慌てて、ベルンゲラ様の胸元を自分で持っていた、ハンカチで拭った。
「アナ。大丈夫だよ。後で着替えるから、今は食べさせて。」
「え?でも…」
なんて、ニコニコしているが…。
どう見ても、世話を焼かれて喜んで、鼻の下が、伸びているようにしかみえない。
いつもなら、言うことなんて、聞かないソフィアナ嬢が言いなりだ。昨日そんなに、後ろめたいことをやらかしたのか?
だが、なんだろう。この雰囲気に、僕は、耐えられない。
「失礼します。ソフィアナ様…。そのままでは、ソフィアナ様も汚れてしまいます。首に着けるナフキンを持ってこさせましょうか?」
少しだけ、ソフィアナ嬢を助けてみる。
右側からの、余計な事を言うな!って、視線が痛い…。
「あ!そうよね。ナフキンを掛けたらこんな風に汚れないわ。ありがとう。借りてくる。」
「え!?ご自分で、取りに行かれるのですか?」
「ええ、手も洗いたいし…。そこだし、行ってくる。しばらく、ゲラ様をお願い。」
「はっ…賜りました。」
そんな会話をしながら、トマトで真っ赤な手を体から離しながら、ソフィアナ嬢は、部屋から出て行った。
「で!?」
「で!?とは⁈」
「わかってるだろ?それだよ。捻挫。」
僕はベルンゲラ様の両手を指しながら問いかけた。
「昨日の夕食では、普通に使ってたよな⁈」
「ああ。なんともない。」
「じゃ、なんだこの茶番は…」
「いや…。昨日、アナがやらかした後、カリトラムとは別で、治療室に行ったんだ。そしたら、フジムがいた。」
「フジムですか?あれ?あいつ復帰したんですか?」
「ああ。昨日から復帰したらしい。」
「で、フジムが、どうしたんですか?」
「いや…。その…。
利き手を怪我して、休んでいただろ?
その間の、様子をちょうど、治癒師に話していたんだ。」
「ああ。あいつ、確か利き手を敵に斬り付けられたんでしたよね?で、城の治癒師さんに、治してもらったんでしたか?でも、治りきらずに、3週間位、休んでましたよね…。お礼を言いにでも行ってたんですかね。」
「ああ、そうだろ。そのまま世間話の様に、休んでいた話をしていたんだ。
その話で、利き手が使えない、フジムは、不自由だったが、食事にしても、風呂にしても嫁が、ずっと甲斐甲斐しく世話してくれて、嬉しかったし、感謝したと、話していたんだ…だから…」
「だから、ちょっと真似したんですか?ソフィアナ嬢に、世話してもらう為に…。」
「食事くらいいいだろ…。こんな事でもなければ、アナは、言う事なんか、ききゃしないんだから…」
「ばれたら、怒らせますよこれ…」
「………。もう、バレたかも…」
そう言いながら、悲しそうな顔で、扉を見つめるベルンゲラ様の目線を追えば、真っ赤になりながら、扉の前で震えている、ソフィアナ様がいた…。
次の瞬間、目の前が、真っ白な光に包まれた。
護衛であるにも関わらず、一歩たりとも動けなかった…。光が収まりだし、目を細めれば、前屈みに両手を前に突き出しているソフィアナ嬢がいる。
その後、キッ!とベルンゲラ様を睨みつけ部屋から駆け出していった…。
護衛として、後を追わねば!っと動こうとすれば、
「やられた…」
と、ベルンゲラ様の言葉を聞き、焦る。
「なっ!大丈夫ですか⁈」
慌てて、振り返って問いただせば、
「ああ。治癒魔法だ…。ところ、どころ残っていた、アザや、痛みが、なくなった…。」
との事だった…。
ソフィアナ嬢は、治癒魔法を八つ当たりに使って、逃亡したらしい…。
実に、豪快で、被害のない八つ当たりだ…。
この後、部屋の外で、護衛するのに、部屋の中から奇声がするんだろうと、想像して、苦笑いするしかなかった…。
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