帰してあげないとね。
騎士は、公爵家の客用のベッドルームで、治癒師まで付けた手厚い看病を受けたが、
魔力も、体力も底を尽きていた騎士は、3日間生死をさまよっていた。
なんとか、4日目の朝に目覚めた。
その知らせを受けた、ソフィアナは、窓際にある箱から、公爵家のクローゼットへ移動し、騎士の見舞いにきていた。
騎士の思い人への手土産に、1つのぬいぐるみを準備していた。
まあ、ぬいぐるみと言う点で、だいたい想像が付くが、1つだけ他とは違う機能があった。
それを知るのは、騎士の思い人と、ソフィアナのみである…。
「これを渡すときは、必ず思い人の名前を呼び、直接本人に、2人だけの時に渡す事」
と、ソフィアナは、念押しするように、何度も騎士に言いきかせた。
『また、やかしがあってはいけないから…』
だが、ぬいぐるみを渡した時点で、やらかしていると思うのだが…まあ、本人は、至って真面目に考えたうえだ…。仕方ない…
そして、周りは、まあ、ソフィアナの崇拝者ばかり…誰も止めはしないだろ。
騎士はその後は、体調が戻り次第、ラスに転送陣で、騎士の国の周りにある結界の手前、送る事になった。
かの国の結界は、強力であり、中に直接は、転送できないためだ。
無理矢理、転送して、結界を壊してしまっても困る。困る事はやらない方がいいのだ。
騎士からは、至れり尽せりなこの状態に、感謝の言葉をもらうが、
ソフィアナは、洞窟での魔石は、ちゃっかり、ちゃんともらっていた。だから、大丈夫とだと、少しは魔石をよこせと言われてしまう前に、話をかえる。
ソフィアナは、作るのが楽しいので、作った物には、さほど執着はない。
だから、作った物をあげれても、もの作りの材料になる、魔石はあげれないのだった…。
「思い人が良くなったら、遊びに来てくれたら嬉しいな。」
と、にっこり微笑む。
自分は、第一王子の婚約者で、そう簡単には、会えないという事を本人は、わかっていない…。
「使命があり、どこにも出られない、思い人様は、来ることはできないが、その気持ちだけでも伝える」
と、騎士は俯きながら、自傷気味にわらった。
そんな騎士に対して、ソフィアナは、意味ありげに、「大丈夫。これるようになる。」
と言い切ったのだった。
こうして、新参者の騎士は、苦しみの旅を終えて、やっと元の国に、帰えれることになった、それは、それから3日あとだった。
朝の数時間を抜け出し、何食わぬ顔で、朝食を取ったあと、部屋に戻ったソフィアナ、セブァセス店や、みんなの事が気になった。
ちょっと内緒で、行ってみることにした。
店のみんなからは、大歓迎を受け、さらには何もして無いのに、感謝されるしまつ…
セブァセス店の最近の状態を聞き、困っている事が無いかをきけば、貴族用の窓口は、こんな孤児院の近くには、無く、メイン通りに小さな店を構えているらしい。
そして、基本は、配達で行うため、予約で埋まり過ぎているとの事だ…。
貴族に対する対応を間違えたら、大変な事になるため、貴族対応は、トマスが一手に引き受けていた。
手が足りない時は、公爵家で従者をしいて、対応できる、ハス、侍女のエスター、テレッサが応援に来てくれるらしいが、なかなか追い付かず、苦情がくるとか…。
「マリー様が、お気に召してたから、マリー様や、ドミニク様の名前を借りましょうか⁈
私でもいいけれど、オーナーが、バレた時にマズいから、2人に、予約してもらえば、第二王子や、その婚約者すら、順番等なんだから、待てと、言えるでしょ⁈第二王子がダメでも、マリー様なら、待つのもいいと言ってくれるわ。」
「言いにくいのですが、一番圧力をかけてくるのは、オスター様でして…。先日は、ソフィアナ様が、召し上がるという事で、都合を付けましたが…。われわれでは、対象できないことになった場合…。」
ニジルが、ごにょごにょ言う。
「わかったわ。
お兄様に、この店の事を相談しましょう。何となく勘付いていそうだし…。
お父様にバラすかは、ハンスお兄様の判断にもよるわ…。
でも、こういったことは、グロスターお兄様の方がいいかしら…。
貴族対応の件は、とりあえずは、マリー様の順番が来るまでを時間稼ぎして、お兄様達に相談するから、まっていてね。他にはある⁈」
ラスは、惣菜屋の買い付けに、マハルニ国まで、転送で、しょっちゅう行っているらしく、向こうに買い付け専門の店と、物を送るシステムが欲しいとボヤいていたとか、いないとか…。
「それも何とかできる範囲だから、よし。ニジル、私、今まで何もしていないのに、こんなに店を大きくしてくれて、ありがとう。もう、この店は、私なんかいらないもの。ニジルに譲るわ。」
「滅相もありません。人形たちに、ハンカチに色々なアイデア、いつも、助けられています。
街で、飢えている者も減り治安もよくなりました。
私達は、ソフィアナ様の下で、働きたいのです。私達の様な、平民が、ソフィアナ様のために出来る事など知れていますが、それでも、細くでも繋がりが欲しいのです。」
「そんな事言われたら、私、すごい人みたいじゃない…。みんなが、頑張ってくれてるから、店は成り立っているのよ。私には、弱い後ろ盾くらいしか…」
「謙遜なさるところも、また、ソフィアナ様らしいですね…。我々は、大丈夫です。
たまに、こうして、お顔を拝見できれば、皆頑張れます。孤児院の子達も、皆あなたに感謝して、孤児院を卒業したら、総菜屋の手伝いや、パン屋や、セブァセス店の見習い、荷物運びなど、仕事にもありつけています。」
「そうなんだ。それはよかった…。みんなに、仕事があることはいい事だわ…。ニジル、お金が必要な時は、トマスに言って私にくれている利益から、使っていいからね。」
「お城でも建てる気ですか⁈」
「?どういうこと⁈」
「ソフィアナ様に、心配して頂かなくても、今のところは、セブァセス店の売り上げでまかなえています。何かの際には、よろしくお願いします。と、言う事です。」
「そっそう?なら、いいんだけど…!
みんなの、顔も見れたし、私は、帰るわ。不在がバレたら大変だもの〜。また来るわね。」
ソフィアナは、転送陣にて城の部屋に帰った…。
帰った先には、
ソフィアナの部屋だと言うのに、なぜか、急に現れたソフィアナに、驚くモリーンがいた…。
「………。」
「………。」
ソフィアナの背中に、嫌な汗が一筋流れた…。




