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誘拐ではありません

「ところで、あなた、名前は⁈」


「………」


「名前くらいいじゃない。」


「………」


「ま。どうせ泉につけば、全部わかるんだけどね〜。」


「………」


「あなた、結構強いのね〜。流石、騎士に選ばれただけはあるのね…」


「………っつ…」


「あら、大丈夫⁈私、令嬢だからね〜。戦えないのよね…。まあ、でもよ、でも、自分の身を自分で守ってるだけでもいいでしょ⁈庇う手間が省けてさ〜。」


「それとも、一緒に魔導具の結界に入る⁈強がらずに、入ればいいのに〜。」


ソフィアナは、自身で結界を張っていたが、魔力無しである事を装うために、魔導具を使っていることとしていた。


「くっ……」


騎士は黙々と、魔物を倒して洞窟をすすんでいた。


『何かあの結界に入るのは、プライドが許さない…』




半分くらい来た辺りから、騎士1人では、もう進める範囲を超えた魔物が、出始めている。

だが、彼は、1人、ひたすら、文句も言わず、黙々と魔物を狩っていた。


だが、多勢に無勢…。


魔物により、襲いかかられた騎士は、とうとう膝をついた。

「……ぐぅ。くっ。」



『ここまでが、限界かなぁ!?』

ソフィアナが、そう思っていたら…。

後ろから、聞き慣れた声が聞こえてきた。



「ソフィ…。これはどう言う事かな⁈」


ハンスか、ハス、ラスと共に、洞窟へ駆けつけてきたのだ。


「あっ…お兄様…」

「………。」






「あっ、ハス、ラス…。騎士さんに、助っ人してあげて〜。」


「「賜りました」」

2人は、言われた通り、騎士を助けに行ってくれた。



「こら、ソフィ…。話をそらすな…。お前誘拐されたはずが、何故、誘拐犯を虐待紛いに、魔物に襲わせている!?

罰するにしても、お兄様は、少しお前の正義感を疑うぞ…」


ハンスは、ソフィアナの乗った馬車が、消えた為、捜索していた。

ソフィアナとの連絡なら、公爵家の、ソフィアナ専属に、聞いた方が早いと、屋敷に着いた瞬間に、ハス、ラスか、屋敷からどこかへ向かう為に出てきた。


ちょうどいいと、そこを捕まえたら、案の定。

ソフィアナを助けに行くという。


ハンスは、そんなハス、ラスと共に洞窟へ来たのだった。


「お兄様、ひどい。私は、色々バレないように、無力を演じてるだけです。殴られそうになった時に、結界は、張っていたので、それだけ、魔導具があることにして…!」


ちゃんと内緒にしてる!褒めろ!と言わんばかりに、ハンスに反論するソフィアナだが、騎士を手助けできないことは、歯痒かったため、3人が来てくれて、ほっとしていた。


ハンスの強さは、半端ない。

それに、便乗して、ソフィアナが、魔法を使っても、バレはしないだろ。



だが、ハンスは、騎士を泉へ連れて行くのを渋った。


この国のものでもなく、さらには、騎士になり、裏切りまでした者だ…。

ハンスは、帰るように、ソフィアナに言うが、


「お兄様。私がなぜあの泉に、あんな機能を付けたかわかりますか⁈

人を思う心に、嘘がないなら、それはその人にとっては正義です。

人はそれぞれ、違う場所で産まれ、考え方も違います。相反する人もいますが、自分に相反したらみんな悪ですか⁈違うでしょう?それは、その人なりの正義があるはずです。

だから、真実を見抜き、真実の愛情のみで、助けれる泉にしたんです。

全ての人に平等にしたくて…。

洞窟って時点で、全ての人に平等では無いのですが…悪用や、無駄な命を落とさせないためには、必要な事だったんですよ…」


「きみは、昔から、変な考え方をするよね。まあ、それが、君の正義なのかな⁈

わかったよ。彼の正義や、愛は、泉の判断に任せるとするか。


では、さっさと最奥へ」


そう言うと、ハンスは、腰の剣を抜き、一気に周りを吹き飛ばした。









最奥………。



首が一本のケルベロスが、待ち構えていた。


ケルベロスは、それはもう、機嫌が悪かった。

騎士は、ケルベロスと戦うが、一瞬にして、意識を刈り取られた。



「ちょっと、ちょっと、なんで、そんなに機嫌が悪いの?もう、私達の事忘れちゃったの⁈言葉も無くしたの⁈」


ケルベロスは、ソフィアナの呼びかけにも応えず、ずっと威嚇している。


ハスもラスも騎士と一緒に、吹き飛ばされたが、ネックレスのおかげもあり、意識は保っていた。


「この間来た時と、だいぶ雰囲気が違うが、あの頭は、どうみても、ケルベロスだよな…」

ハンスが、剣を構えながら首を傾げる。


「お兄様、殺しては駄目ですよ。洞窟の魔物が居なくなってしまいます!」


「う〜ん。アレ相手に、手加減は、難しいぞ…努力はするが…」


以前より、忌々しい気をまとった、ケルベロスは、ハンスの攻撃を避けながら、ハンスに噛みつこうとしてくる。

攻撃が、野生化していて、以前よりも、対処はしやすいが、破壊力と素早さが、上がっていた。


だが、まあ、相手はハンスだ。


「ギュキューン!」


と、鳴き、ケルベロスは、その場に意識を無くして倒れた。

魔石になっていないので、殺してはいないはずだ。


「さて、どうしたものか…」

ハンスがそう呟けば、洞窟の奥から、顔色の悪い石像の犬が現れた。


『うっわ〜。話しには、聞いてたけど、本当に実体化してる〜』

とは、ソフィアナの心の叫びだ。



「どうか、その人を許して下さい。私を護りたい一心と野生の本能なんです。」

と力無く、話しながら出てきた、石像だった犬を見て、皆、目が点だ…。



「うっ…うぇ〜。う…。」



『え⁈えええええ!!!石像(犬)にも悪阻あるの⁈』


見るからに、石像の犬の腹は大きく、身篭っていることがわかった…。

『万能薬やり過ぎしゃない⁈』


「なるほど、だがら、ケルベロスは我を忘れるほど怒っていたのか…。守る者の為に…。」

冷静なのは、ハンスだ。



「ねぇ、その体で、大変でしょうけど、そこののびてる人に、泉を出す試練できるかしら⁈」


「はい、大丈夫です。」


「あ。その人が起きる前に、少し治癒魔法で、体調よくしましょ⁈悪阻は、病気じゃないから治らないけど、少しは気分がよくなるんじゃないかしら…⁈」


「ありがとうございます。」


こうして、みんなで騎士が、目覚めるまで、待つ事にした。

実は、ソフィアナが、治癒しようとしたら、みんなに、完璧に治りすぎて、怪しまれるから、ダメだと言われ、仕方なく待つことになったのだ。






しばらくして、目を覚ました騎士は、目の前の状況に、眉をひそめていた…。


寝ている間に、ケルベロスは倒れ、元石像の大きな犬?が、その横に立っているのだ、仕方ない。



なんとか、体を持ち上げた、騎士に、気がついたソフィアナ達は、敷物を敷き、優雅にお茶をしながら話しかけた。


騎士は驚き目を丸くしてるが、知ったことではないとばかりに、話すソフィアナ。

「あら…やっと起きた。ほら、あの犬が、泉の管理者よ。彼女から説明を聞きなさい。」


「な!?」


「さて、万能薬を求る者よ…。

私に触れながら、あなたの望みと心と理由を全て話しなさい。

嘘、偽りなく、必要性が認めなれれば、あの辺りに、泉が出現します。」


騎士は、そう言われて、何かを迷うように、視線をソフィアナへ向ける。

しばらく黙り、何かを決めたように、話し出した。


「私の仕える、姫が、我々の事を助けるために、全身に消えない傷を負った。それで今は歩く事すら困難な状態だ。

だが、姫には、結界を貼り続ける使命がある、国の為には、命を削ってその使命を果たさなければならず…。だが、姫が亡くなれば、国も危うい。

しかし、その前に、たった、16歳の少女が、1人他人の為に苦しみに耐えているのをなんとかしたい。

傷さえ無ければ…。使命を果たすのに命まで削る必要は無いのだ。だから、傷を治す為の薬をどうか…私の心から、愛する人を苦しみから救う万能薬を…私に下さい。」


嘘、偽りなく、目の前の大きな犬に、すがるような気持ちで訴える。


すると、洞窟の奥にある一部の地面が、光だし泉が現れた。

「その泉の底には、祠があるから、泉に潜り祠のなかから、万能薬を持って行きなさい。

泉の水には、嘘や、後悔、不安に反応して、あなたの生命力を吸い取ります。気をつけて…」



「感謝する!」


なんの迷いも無く、騎士は泉に飛び込んで行った。


「ドミニク様も、あんな感で泉に⁈」


ハンスに、疑問を投げ掛ければ、


「まあ、あんな感じだな…」



「マリー様に、見せてあげたかったわね。その勇姿。」


「ちなみに、ベルンゲラ様も…モグモグ」


「うん?何⁈ラスなんか言った⁈」


「いや…なんでもない…」


ハスが、ラスの口に、お菓子を突っ込んでいた。

ハンスは、何でもないと、ソフィアナに、自分の分のお菓子を渡した。



そんなソフィアナの、その後ろでは、


「それはハンス様から秘密だと言われただろう!?」

と、ハスに、ラスはコソコソと叱られていた。

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