プロローグ
ほのぼのラブコメな予定ですが、どうなることやら…温かい目で、よろしくお願いします。
「お父様、私、私、行きたくありません。」
公爵家のブランバード家。その執務室で、歳のわりに若くみえる父オスターに、私は、懇願していた。
「何を言っている。ソフィアナ。お前も、もう16だ、社交会デビューは、14なんだぞ。
2年も遅らせて、もう待てん!今年こそは…」
「お父様…私、どうしても、人前が嫌なのです。動悸で、倒れてしまいます。そんな事になれば、ブランバード家の恥になってしまいます。
お願いします。お父様…。お父様…。」
「ダメだ。今年のデビュスタンスのパーティーには、お前も出るんだ。欠席は許さん。」
「こっ、こんなに、こんなにお願いしてもダメですか?」
うるうるの上目づかいに、胸の前で手を組み、おねだりポーズで父親を見つめる。
早くに母を亡くして不憫に思ったのか、父親は、娘の私には、砂糖より甘かった。
だから、だいたい、このポーズで、お願いすれば、願いは聞いてもらえるのだが…。
今回は、なかなか聞き届けてもらえないらしい…。
その証拠に、出席を言い渡し、もう知らんとばかり、後ろを向いた父親は、こちらを見ない。
お願いポーズに、弱いのは、父親も承知している。
だから、見ないようにしているのだ…。
「お父様…お父様…」か弱い声で、呼んでみるが、オスターは、振り返らない…。
「お願いです…お父様…
そんな…そんな……ソフィーは…ソフィーは、
お部屋にひきこもらせていただきます。」
と同時に、私は、執務室を猛ダッシュで、かけ出た。
「な!いかん!!ジョセフ!ソフィーを捕まえろ!」
オスターは、慌ててそう叫ぶが、ソフィーは、その声を背中で聴きながら、廊下の角を曲がり、脚の筋肉を魔法で強化し、更に加速して、自分の部屋に向かった。
誰に捕まる事なく、部屋に駆け込むと、部屋に、強化と施錠魔法を施した。
「必殺!天の岩戸。
ふぃー危なかった…。これでよし」
「お帰りなさいませ。ソフィアナ様。
……“危なかった”様には、到底お見受けできませんが……。ご無事で何よりです。
旦那様のご用事は、もうよろしいのですか?」
ソフィアナ付きの侍女、テレッサは、猛スピードで、部屋に駆け込む主人にも、動揺せず、皺ひとつ無い侍女服で、背筋をピンと伸ばし、冷静に、突っ込みを入れながら挨拶している。
「ただいま。テリー。今回は、危なかったのよ⁈
と〜ても!大ピンチ。だから、今から引き篭もりよ。フフフ」
「また。でございますか?……承知いたしました。」
テリーと愛称で呼ばれたテレッサは、大ピンチと言うわりに、余裕な主人の一言に、己の今後の仕事を理解した。
ソフィアナの引き篭もりは、いつもの事…。
4歳の頃から、12年使えている彼女には、慣れた事であった。
テレッサは、動きやすいドレス…というよりは、ワンピースに近い服をドレスルームから持ってきた。
ソフィアナは、何も言わずに、さっさとそれに着替えて、部屋の隅にある両開きのクローゼットに向かう。
そのまま、クローゼットの扉を開けると、そこは…