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降神巫  作者: オリーブオイル
3/4

三葉

ブックマークありがとうございます。

「三葉遅いな・・・・・・何してるんだろう?」

私は膝をかかえ、テレビのチャンネルをザッピングしていた。


なんだか落ち着かない。

愛猫の三葉と言葉を交わしたのだから落ち着かないのは当然なのだけれども、それ以上に胸騒ぎが止まらないのだ。


「三葉が式神?私の前世の前世から仕えていたなんて・・・・・・ねえ」


私は聞く相手もいない言葉をつぶやく。


いつもなら独り言ではない。

いつもなら・・・・・・三葉が私の言葉の聞き役なのだ。


私は部屋をぐるりと見渡した。


三葉がいない。


あたりまえか。

さっき部屋から飛び出していったんだもの。


開け放たれた窓から少しだけ風が舞い込んだ。


私は風に踊るカーテンをなんとなく眺めていた。


三葉が何をしに飛び出していったのかはわからない。

私ではわからない何かの為に出て行ったのだろう。


彼の目はそれほどに使命感に満ち溢れていた。


私ははたと気づき立ち上がる。


「馬鹿か私は!三葉は私の想い人を助けるっていってたじゃないか!?誰の為でもない。私の為じゃないか!」


私は裸足のまま飛び出した。


でも。

どこに行けばいい?

どこに向かえばいい?


三葉はなんて言ってた?私の想い人を助けるから・・・・・・部屋を出してくれって。


考えろ。考えろ。


私の想い人。池内君の家?

本当にそうだろうか?


三葉が矢のように飛び出していった方向は・・・・・・。


私は三葉の足取りを考えていた。


三葉は真っすぐに飛び出していった。


私の部屋からまっすぐ。

私の部屋から真っすぐ。


私は再び自分の部屋に戻る。

カーテンを押しのけるようにして2階の自室から三葉の飛び出していった方向を見つめた。


自室の窓から遠くに見えるものは私の通う高校があった。

私は時計を見る。

時計の針は22時を回っていた。


「はは・・・・・・まさかね」


目を疑う。

私が通う鎮波高校が青々と光っている。


ライトアップされるようなスポットでもない。

戦後に建てられた学校だとは聞いていたけれども。


それよりも。

三葉は?もしかして?



私は意を決して再び家を飛び出した。


「三葉!三葉!!」


私は声を絞り出す。

三葉になにかあったら私は生きていけないかもしれない。

愛猫。

ペット。

色んな言葉があるけれども三葉は家族であり、私の親友だからだ。


胸騒ぎはとどまる事をしらず、私を飲み込もうとしてくる。


「三葉!どこ?」


私はいつものように私の声を聞きつけてひょっこりとにゃあ」顔を出す三葉の声を探す。


でも。

いない。


三葉に何かがあったんだ。

三葉に何かが。


いや。違う。

三葉は私の為に何かにあったんだ。

私を。

私の想い人を守るために。


「池内君」

私は涙声にりながら、数時間前にフラれた相手の名前を呼んだ。

でも。

池内君の顔は浮かんでこない。

浮かんでくるのは三葉の顔ばかりだ。


「三葉ああ」


私は自分でも呆れるくらい情けない声を出した。


手がかりはない。

けれども。

手がかりというよりも、この場所にすがるしかない。

私は三葉の姿を探しながら、鎮波高校を目指していた。


三葉がまっすぐに飛び出した方向。

そして青く光る学校。


関係は無いのかもしれない。

でも。

関係はあるのかもしれない。


三葉と離れたくない。

私は、昔から三葉に甘えてきた。


それも。

前世からだなんて。


三葉と離れたくない。

三葉。三葉。


私は校門の前に立っていた。


私の目に映る校舎は不気味なほど静まり帰り、不気味なほど青白く光っていた。


私は鉄製の門扉の前で足を止める。


止めるというより止まってしまった。


夜の学校に入る?

肝試しよろしくというわけにはいかない。

肝試しならばすでに済んでいる。


青白く光る校舎を眺めているだけで私の心臓は不愉快なほどに自分の耳に響いてくる。


私は願う。

収まれ。

強い拍動を抑えようと私は胸に手を当てる。

自分のものとは思えないほど速い拍動が手を伝わってくる。


収まれ。

収まれ!!


強く目を閉じ、拍動を押しとどめようとする私の耳に届いてきたものは、ほかでもない。聞き間違えようもない先ほど聞いた三葉のうなり声であった。


「三葉!」

6歩、後ろに下がる。


助走をつけて一気に門扉を飛び越えた。


「三葉!!三葉!!どこ?」


私の拍動はとどまることをしらない。

三葉がいた。

青白い校舎。


普通ではない。

何かが起こっている。

私の知らないなにかが。


三葉の声を頼りに私は走った。

「三葉!」


私の目に飛び込んできたものは力なく倒れこんだ血まみれの三葉と。


・・・・・・・そして。角の生えた鬼だった。







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