三葉とおしゃべり
「よちよち~。今日もごきげんでちゅねえ」
私は膝に乗った三葉の頭を撫でた。
私の気持ちにこたえるように彼はゴロゴロと喉を鳴らす。
三葉。なんて可愛いんだろう。
金色の目。黒く艶やかな毛並み。
でも。なんといってもこの子のチャームポイントは尾の先が白い事だ。
ほんの数センチだけだけど。
そこがまた可愛い。
可愛すぎると言っても過言ではない。
「三葉。ずっと私と一緒にいてくれる?」
私は三葉の背中に顔を埋めた。
「いいですよ。ご主人様」
私は瞬間息が止まりそうになった。いや。実際止まった。
気のせい?
いや。
誰かこの部屋にいる?
私は顔を上げ、耳をそばだてた。
お兄ちゃんの部屋のテレビから聞こえた?
そうだよね。きっとそうだ。
それにしても・・・・・・「いいですよ。ご主人様」だなんてセリフがあるテレビ番組ってなんだろう?
それともいつものようにアニメでも見ているのかな?
私はひとつの結論をつけた。
お兄ちゃんは萌えアニメを観ているのだと。
「ああ。びっくりした」
「なにがですか?」
目が合った。
三葉と。
「え?」
「え?」
三葉が首を傾げる。
「ええええ????」
「ご主人様は何を驚いているんですか?」
「え?だって?え?三葉!喋れるの?」
「喋れませんよ」
「噓!?喋ってるじゃない」
「ああ。ご主人様には喋ってるように聞こえるだけです。私の声帯は人間のように複雑にはできてませんから」
「え?なんで?私、頭がおかしくなったの?幻聴?フラれたショックで幻聴まで聞こえるようになったの?」
そう。
今日、私はフラれた。
先輩に。
17歳の誕生に私はフラれたのだ。
スタートダッシュで出遅れるどころではない。
17歳。
今日から私は生まれ変わると心に決め、彼氏をつくるという目標を定め。そして撃沈した。
「ご主人フラれたんですか?」
三葉かだらりと尻尾を下げる。
私に同情してくれたのだろうか?
「え?三葉。私がフラれたら悲しい?」
「それはもちろんです。好きという気持ちを伝えるのはとても勇気がいります」
「そうよね・・・・・・伝えるまで胸が高鳴って苦しかったのに。フラれたら胸が痛くて苦しい。恋愛ってなんでこんなに苦しいのかしらね」
ふさぎこむ私の髪に三葉はぺたんと肉球を乗せる。
「私はご主人様の事が大好きですよ」
「惚れてしまうわ!!」
それが本当の私の誕生日であった。