一夜目 『王剣は誰の手に?』
少しだけ、歴史の勉強をしようかの?
何百年も前のことじゃ。まだ『国』という型ができるもっと前に、この大陸の北東に位置するドーリア山脈から『羽を持った人』が攻めてきたのじゃ。彼等は人間を十人あわせたよりもなお大きく、空を埋めつくし、黒い波と恐れられていた。黒い波に飲み込まれれば最後、あとに残るのは砂と灰のみだったからじゃ。
『羽を持った人』をどうにかして山脈の向こうに退けたかった我等の民族の王は、他の民族と話し合い、ある一振りの剣を造ることにした。オーヴァンの民は特別な金属の塊から刃を研ぎ、トランの民はその刃に身合う柄と装飾を引き受け、そして、我がロイリルの民は最後にその剣に魔法をかけた。
剣が完成したその瞬間、急に空が暗くなったと思い、民は空を見上げた。見ると、何か黒い波がうねっている様に見える。
『敵襲だ! 皆は地下空洞に避難し……!』
誰かが叫んだ声は途中で掻き消された。『羽を持った人』が小さい村一つ分ほどの火球を飛ばして来たのじゃ。その豪音は民があげた悲鳴さえ焼き付くし、あとにはまるで巨大な墓場を思わせる穴がポッカリと空いていた。
再び『羽を持った人』が火球を飛ばそうとしているのを見た我等の民の王は、素早く剣を握り締めると彼等に向かって、自らの命と引き換えに、古代に封印された禁呪文を唱えた。
辺りから白い光が全て消え去ったとき、空は明るさを取り戻し、あとに残っていたのは一振りの剣のみだった。
後に『羽を持った人』は悪魔や魔物と呼ばれ、その一振りの剣は王の名にちなみ、『王剣』、あるいは『アイージャの聖剣』と呼ばれるようになったのじゃ。
いよいよ始動!という感じです。少し凝った演出をしたいなーと思い書き進めていますが、読み難いなどのご指摘がございましたら、作者の方にご連絡下さい。