私と屋上
ごめんね、と呟こうとした。
でも、声が出なかった。
怖いよ、と呟いた。
声に出たところで、どうにもならなかった。
風が吹く。
ふわりと舞った長い髪。
切ることもできずに、ただ伸ばしていた黒。
もう終わり。
おかしいな。
お父さんに殴られた頬よりも、お母さんに蹴られた脚よりも。
殴られ蹴られ続けた身体よりも、胸が痛いや。
心臓が痛い。
心臓の奥の、ココロが痛いや。
私が死んだら、あいつはきっと悲しむだろうな。
でもお願い、止めないで。
あんたに止められたら、苦しいよ。
死にたくないって、溢れちゃうよ。
昔、訊かれた。
ねぇ、キミは、
この世界は嫌いなの?
うん、嫌いだよ。躊躇なんてしなかった。
だってこの世界は理不尽で、この世界は私にツメタイ。
それでも私は笑った。
もう、あんたを困らせたくないよ。
ごめんね、と今度は呟けた。
あんたを困らせるのは、これで最後だから。
きっと、言葉は届いてない。でも、もういい。
あんたの顔はもう見ない、見たら留まってしまう。
バイバイ
大大大大、大嫌いな世界。
バイバイ
どうしようもなく悲しがる、不器用なあいつ。
手を伸ばすあんたに捕まらないように、一歩。
私は―――・・消えた。