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目の前の騎士の姿を注視した途端身体が軋みを上げた。
彼を視界に捉えるだけで激しいストレスを伴うのか脳髄に激しい痛みが走る。すると次の瞬間怒涛の様に見知らぬ記憶が押し寄せて来た。
思わずうずくまり嘔吐する。ロクに食事をしていなかったのか胃液しか出てこない。
今までに感じたことの無い未知の苦しさから成すすべもなくのたうちまわる。先程から涙も溢れっぱなしだ。
それを見て何を思ったのか騎士は笑い出した。
「ははははは! どうしたスフォルヒム? まさか命乞いか?」
そしてうずくまる老人、スフォルヒムを罵倒する。
騎士はこちらを見下しているのか余裕を見せているのかは判らないが、すぐにこちらにトドメを刺す気はないらしい。しかしそのおかげで老人は気を持ち直す時間は得られた。
少しづつ痛みも収まり、己に起きた事を確認しようと思える程には理性も戻る。
「何故あんたはわ……俺を殺そうとする?」
「はっ! 知れたこと。貴様の様な私より家名で劣る下賎なクズが、非公式とはいえ我が君に叙勲を受けた事が許せんからだ!」
「やはり、この記憶は本物か……」
どうやら、この体はスフォルヒムという名の男で目の前の騎士に嫉妬で殺されかけている。というか"精神は"既に死んでしまったのだろう。
本来なら朽ち果てるしかないそれを肉体が許さなかったのかは分からない。この身体が死を否定し生きようとあがき、その想いに俺の魂か何かが引き寄せられたのだろうか。
もしかしたら今の自分は前世の意思や記憶の残滓で、先程の光は次の人生の扉だったのかもしれない。
しかし、今はそんな事をだらだらと考え続けている余裕はなかった。
こうして、新しい人生を手に入れてしまった老人は目の前の危機に取り敢えず急いで身を起こすことにした。
タイトルが思い浮かびませんでした。
まあ、そんなの気にする人おられないと思うので気にしない事に。