目覚めは健やかには程遠く
目を覚ますとそこは見知らぬ森の中だった。
痛みに身体を見ると全身は傷ついている。この失血の仕方だとあと少し血を流していたら寝たまま目を覚ませず死んでいたかもしれない。
取り敢えず全身を動かし状態を確認する。おかしな事にダメージを受けているはずなのに身体が軽い。
慌てて手を凝視した。すると指先は節くれだっていたが、記憶とは違い関節のシワが驚く程深くない。そもそも骨と皮しか無かったはずの腕に筋肉が備わっている事に驚いた。
「一体どういうことじゃ? ……む? これは一体どういうことだ?」
思わず喉元を抑えた。声帯の衰えも無く発音が楽にできる。信じられないことだがもしかしたらここはあの世という処なのかもしれない。
そういえばと今更ながらに自身の格好を見る。
その格好は簡単に言えば中世の騎士……いや、従士の様な格好であった。腰には使いやすさからか短めの直刀を下げている。鞘を手に取り掲げてホンの少し引き抜く。
キンっと金属の音を響かせ刀身が顔を覗かせた。この剣はどうやら両刃の様だ。
次に手荷物を漁る。中には様々な小物が入ってる。しかし、今一用途が分からず、武器になりそうな短剣を幾つか取り出しベルトに挟むと後はひとまず袋に入れたまま腰に下げることにした。
ある程度わかる範囲での現状を確認したら、直後人の気配を感じた。慌てて腰の剣に手をそえながら気配の方に視線を巡らす。
「まったく、手間取らせおって。思いの外しぶとい奴だな」
すると木々の合間から騎士の装いをした20前後の若者が現れた。