001
僕がこのエフティシアに来て五日が経った。
段々僕も、この島のシステムにも慣れていき、プロドシアの仕事を覚え始めたくらいの頃だった。
最近は、日に日に仙達さんの不在が増えていき、補佐である僕が代わりにリーダーを務める事が多くなってきていた。
仙達さんは未だに僕達に何を調べているのかを教えてくれない。そろそろ教えてくれても、良いと思うのだが。
「落葉さん……今日も仙達さんは休みなんですか?」
「お、おそらく……それに今日に限っては連絡も無いんです……」
「連絡も?それはおかしいな……」
仙達さんは活動を休む時や遅刻する時は必ず落葉さんに連絡するはずなのに、それが今日に至っては無い。
「そ、それと一応同僚の方にお伺いしてみたのですが……昨日から姿が見られていないらしいんです……」
「昨日から?」
この島の収容者は、夜になると収容所へと帰る事が原則として定められている。まあ、僕と貴船と糸島は既に反逆罪に問われる事をしてしまっているので帰れないのだが。
けれど、仙達さんは毎回収容所に帰っていたらしい。理由は無駄に怪しまれて、プロドシアの存在がばれる事を防ぐ為だとか。
しかし、それが帰っていないとなるとやはりおかしい。
何か……嫌な予感がする。
「ど、どうしましょうか……とりあえず諜報班の方に伝えておいた方がいいでしょうか?」
「ううん……そうだな。行方が分からない以上、捜索をしておいた方がいいかもしれないな……あっ、それと敵地調査班にもよろしく頼むよ」
「敵地……ですか?」
「ああ。もしかしたら……と思って」
「わ、分かりました。じゃあ伝えておきますね」
落葉さんは小走りで走って、各班へと情報を伝えに行く。と言っても、そんな走る距離でもないのだが。
とにかく、仙達さんの行方が心配だ。何か……手がかりは無いだろうか?
「……そういえば……ロッカーの中とかは……」
僕はフロアを離れ、ロッカーのある倉庫へと赴く。
このロッカーにはメンバーの私物などが沢山詰め込まれている。もしかしたら、この中に仙達さんの調べている物の手掛かりが見つかるかもしれない。
思い立ったが吉日。モラルがどうとか言っている暇など無い。
「ぐっ……やはり開かないか……確かサブキーを落葉さんが持っていた様な気が……」
僕は再びフロアへと戻って行くが、何だか騒がしい。
何か起こったのだろうか?
「おい糸島……本当なのかよそれは!」
「ええ……確かだよ。刑務官が噂してたし、貴船に頼んで収容者リストを見てみたんだけど……そう記載してあった」
どうやら糸島と池端さんがもめているらしい。
二人とも、切羽詰っているように僕には見えた。
「あの……一体どうしたんですか?」
僕は二人の間に割って入り、状況を確認する。
一体、何があったのだろう?
「ああ……アンタか……いや……ちょっとね」
糸島は後ろめたい表情になる。
「……仙達が……仙達が……」
池端さんの言葉が詰まる。
いつもの、堂々としている池端さんとはどこか雰囲気が違う。絶望に満ちているような、そんな雰囲気。
「仙達さんに……何かあったんですか?」
「……仙達が……」
始めから、悪い予感はしていたんだ。
だけど、まさかこのような形となって現実になるなんて、この時の僕は思ってもみなかった。
「……処刑……されちまった」