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セツナワースト  作者: レッドキサラギ
第三話 反逆の集い
8/11

003

「さて、新人への挨拶もこれくらいでいいだろう。じゃあ作戦について説明しようかな」


 僕達は各自椅子に座り、仙達さんの説明に耳を傾ける。

 どうやら、プロドシアの作戦を僕達に教えてくれるらしい。確かにチームに入るのだったら、その団体の方針は知っておきたいところだ。

 その方が、今後行動を起こす時に役に立つ。


「えっと……どこから説明すればいいかな落葉さん?」


「えっ?……そ、そこは仙達さんが言うところなのでは……」


 いきなりの仙達さんの振りに、落葉さんは困惑の表情を浮かべる。


「いやぁ……上手い言葉が思いつかなくて」


 あははと乾いた笑い声を出しながら、仙達さんは苦い笑みをみせる。

 どうやらこの人、何も考えてなくて話を進めようとしたらしい。見切り発車もいいところだ。


「えっと……わ、わたし達プロドシアは反エフティシアの同盟であるという事は理解なさってますよね?」


「はい……まあ、それなりには」


「で、では具体的にどうやって反エフティシア活動を行うのか……その点を説明していきたいと思ってます。では坂田さん、あの……スライドの方をお願いします」


「了解しました」


 落葉さんの指示に従って、坂田はパソコンの映像を投射機を使って壁に映像を映す。

 現代にも存在する技術ではあるが、改めてハイテク機器について関心してしまう。何週間も牢獄の中にいたからかもしれないけれど。


「そ、それではそうですね……まだ未定なのですが、襲撃時についての作戦について説明しますね」


 すると落葉さんは木の棒の様な物を握り、それを使って壁に投射されている映像の部分を指していく。


「ま、まずこの島の鉱山を占領するのが最初の目的になります。あの場所にはエキサホルムが豊富にありますから。そしてエキサホルムはエネルギーとしても使えますが、爆弾としても使えるんです」


「爆弾としても……あっ、そういえば……」


 僕は鉱山でエキサホルムを採掘していた時の事を思い出す。そういえば、採掘中爆発事故が起こっていたな。

 結果、そのせいで刑務官によって人が二人も殺されてしまったのだが。


「こ、鉱山を占領し、エキサホルムを使って大量の爆弾を作り、それを仕掛けて爆発させるんです。実はあの場所から電気を引いてくる時に、あの場所の地盤を検査してみたところ結構緩い事が分かったんです。検査は池端さんにしてもらいました」


「ええ、確かに。あの場所は海が近くにある事もあって、地下には砂の層があって地盤の密度が低下している事が分かっている。サンプリングもとって計測したんだから間違いないよ」


 池端さんは立ち上がり、堂々と説明をしてみせる。

 電気工事も出来るし、地盤の調査も出来る……ますますこの人からは男っぽさを感じるな。まあ、そんな事言ったら後でどうなるか分からないので口が裂けても言わないが。


「そ、そういう事なので本部の地下に爆弾を仕掛け、地盤沈下を起こすんです……本部でそんな事が起こったら刑務官も士気を下げるでしょう。そこを狙って一気に襲撃をかけて、所長を捕らえるんです」


「なるほど……」


 納得出来るような、出来ないような。曖昧なような、精密なような作戦だ。

 何か、確実な物が抜けているような気がする。


「ちょっと質問があるのですが……」


 するとそこで、貴船が手を挙げる。


「あ、はい何でしょう……」


「作戦を起こす為の物資や人員を集めるのはともかく、襲撃を起こす具体的な理由はあるんですか?そうしなければ、人は着いて来ないと思うのですが」


 最も大切なところ、それは襲撃を起こす為の動機だ。

 それがなければ、僕達はただ本部を襲撃して暴れたに過ぎない。所長を処刑したところで、人が着いて来る見込みは無い。

 エフティシアを襲撃するのは、僕にとっては一つのキッカケであって、本当の目的はペンタゴンに対峙する対抗勢力を作る事。

 その為に人員は不可欠なのだ。


「ぐ、具体的な理由ですか……え、えっと……仙達さん……」


「今は無い。ただ、あともう少ししたら見つかるはずだ……」


 その時の仙達さんの表情は、いつになく真剣だった。何かを掴みかけているような、そんな雰囲気を醸し出す。

 この話ばかりは、冗談ではなさそうだ。

 

「……そうですか。じゃあ僕の意見は以上です」


 貴船も仙達さんの意図に気がついたのか、それ以上意見も出さずに潔く椅子に座る。

 でも、仙達さんは何を動機に作戦を実行しようとしているのだろうか……気になるところだ。


「で、では以上が作戦の全容です。まだ完全な作戦ではないので、所々曖昧になってますが……大体は理解して貰えたでしょうか?」


「まあ……大体は」


 僕はとりあえず、その場では縦に首を振っておく。

 確かに曖昧なところは多く、十分に理解出来たとは到底言い難い。だが、今は前段階なのだからこれでいいのだろう。

 具体的な内容はこれから考えていけばいいんだし、そんなに焦る必要も無い。


「とりあえず大体の説明は終わったようだね。ありがとう落葉さん。じゃあ引き続き、俺が新しい役職について発表するよ。と言っても、旧メンバーは固定のままだけどね」


 すると、仙達さんは懐から紙を取り出し、それを自分の顔の前へ運ぶ。

 おそらく、用紙を読んでいるふりをしているのだろう。まあ、投射機の光のせいで用紙の裏に何も書いてない事がばればれなのだが。


「ええ……うおっほん!では新規役職を……」


「仙達、見切り発車な役職だけは勘弁だからね」


 そう言って、仙達さんを煽ったのは池端さんだった。

 

「そんな事分かってるよ!まったく失敬な……では改めて役職について発表するけど……そうだな……まずはリーダーは俺で、副リーダーは落葉さん。次に諜報員は坂田君と貴船君でいいかな?」


「分かりました」


「了解しました。貴船君ですね……どうぞよろしく」


「よろしくお願いします」


 坂田は貴船に手を差し伸べ、貴船はその手を握る。

 この二人だったら何とか仲良くやっていけるかもしれないな。ちょっと雰囲気も似ているところがあるし。


「それで、次に敵地調査員なんだけど……池端さんと糸島さんでお願い出来るかな?」


「このお譲ちゃんとかい?お安い御用だよ!よろしく頼むよお譲ちゃん。わたし、こう見えて仕事には厳しいからね」


「は……はい。よ、よろしく……」


 糸島は緊張しているのか、恐れてるのか、ぎこちなく池端さんと握手を交わす。

 まあこれだと、しばらく糸島は池端さんに服従するような形にはなるだろうな。決して逆らったりはしないだろう。


「それで最後に、喜多川君の役職なんだけど……悩んだ結果リーダー補佐にしたいんだけど……いいかな?」


「リーダー補佐ですか?でも副リーダーがリーダーの補佐をしてくれるんじゃ?」


「いや、副リーダーとリーダー補佐は違うよ。リーダー補佐は俺が不在の時にリーダーになってもらうんだ。……最近はちょっとした用事があってね。ここを離れる事が多いんだ。だからさ……やってくれるかい?」


「……はい。喜んでやらせてもらいます!」


「よかった……じゃあよろしく頼むよ」


 仙達さんと僕は握手を交わす。

 ちょっとした理由……おそらく、先程の動機についてだろう。

 仙達さんがいない時は、僕がこのプロドシアを仕切らなければならない。今まで人に引っ張られてきたが、今度からは僕が人を引っ張らなければならない立場になる。

 今まで以上に頑張らないといけないな。


「よし、じゃあ新しい役職も決まったし、新プロドシアとして心機一転頑張っていこう!」


 仙達さんは腕を挙げて意気込みを入れる。

 まだまだ僕としてはキッカケに過ぎないが、このキッカケを確実なものにしていきたい。

 絶対に……エフティシアを占拠するんだ。

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