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セツナワースト  作者: レッドキサラギ
第三話 反逆の集い
6/11

001

「ふう……いやぁ悪いね。作業着汚しちゃって」


「お前のせいで肩の部分だけびっちゃびちゃだよ……」


 僕は溜息を吐きながら、肩を落とす。

 結局数分間泣いた糸島は、スッキリしたのだろうか元の元気な姿に戻っていた。

 でも良かった。あのまま彼女を放っておいたら、おそらく取り返しのつかない事になっていただろう。

 糸島は……情に流されやすい奴だからな。コイツに犯罪は似合わない。


「でもこれからどうするんですか?僕達は刑務官を一人縛り上げてしまったんですよ?このままのうのうと収容所には帰れませんよ」


 貴船は、顎に指を当てながら僕に投げかける。

 確かに、あの縛り上げた刑務官が他の刑務官に見つかるのも時間の問題だろう。収容所に帰っていたら、それこそ僕達は反逆罪として罰され、処刑されてしまうだろう。

 何かいい手はないか……。


「君達の行動は見せて貰ったよ。なかなか過激な事をしているようじゃないか」


 すると、背後から突如として声が聞こえる。


「誰だ……」


 振り返ると、そこにいたのは背の高めの短髪の男と、その背後でこそこそとしているアホ毛が特徴な女の子がいる。


「あっ待ってください!わたし達は敵っていうか……刑務官じゃないので!?」


 すると、女の子は首を振りながら否定する。

 まあ確かに、作業服を着ているところを見ると刑務官には見えないが。


「……もしかして、レトリーバーじゃないんですか?」


 すると、貴船が唐突に呟く。


「レトリーバー?」


「はい。この監獄には刑務官に賄賂を貰って、収容者の中に紛れている奴がいるんです。もし反逆などを考えたりすると、刑務官に密告しすぐに反逆罪として死刑されます。刑務官に忠実な犬。だからレトリーバーと呼ばれているんです」


「なるほど……それがこいつ等だと……」


 そうなると、こいつ等もやはりどうにかしなくてはならないのか。

 罪が重なるが、ここで見つかる訳にはいかない。


「ほう、君はレトリーバーを知っているのか。ここに来て長いのかい?」


 すると、男は関心しているように頷いてみせる。


「いえ、昨日ここへ着たばかりです」


「ほう……そうなのだったら凄い情報収集能力だ。それと、そこの女の子はさっきコロシアムで戦っていた子かい?」


「……そうだけど」


 男が尋ねるが、糸島は警戒心を露わにして答える。

 

「凄い瞬発力だった。見事だよ。……そして真ん中の君」


「……ああ、僕の事か」


 指名されたのは、やっぱり僕だった。

 まあ、それもそうか。


「先程の刑務官に向こう見ずで突っ込む勇気、さすがだったよ。それと、君はその二人のリーダーのようだね。しかも信頼もありそうだ」


「……あの、何なんですか?まるで僕達を評価しているような仕草で……」


 まるで、僕達を見極めているような、そんな感じがする。

 逆に言えば、敵とは思えない行動ではあるのだが。


「そ、そうですよ仙達さん。まるで詮索しているようで相手に悪いですよ」


「詮索をしてるんだよ落葉さん。貴重な戦力にする為の詮索をね」


 おどおどする女の子に、男は笑って答えてみせる。

 貴重な戦力?どういう事だ?


「いやぁ悪い悪い。気分を害してしまったのなら許してくれよ。俺の名前は仙達純生(せんだつすみお)だ。それで、この子が落葉椛(おちはもみぢ)さん」


「落葉椛です。えっと……仙達さんがすみません」


 落葉さんは頭を何度も下げる。だが、仙達さんはそれとは逆に、笑っているだけ。

 二人とも、悪い奴には僕には見えなかった。


「いや……別に怒ってないからいいけど。あっ、僕は喜多川刹那です」


「僕は貴船結慈です」


「……あたしは糸島彩」


「喜多川君に貴船君に糸島さんか。どうぞよろしく」


 仙達さんはそう言って僕の方に手を差し伸べる。

 僕はそれに応じて、その手を握って握手を交わす。


「それで……仙達さんと落葉さんは何者なんですか?レトリーバーではなさそうだけど」


「えっ?……ああ!言ってなかったっけ?悪い悪い、実は俺達反逆軍って奴をやってるんだ」


「反逆……軍……」


「えっと……そうなんです。このエフティシアを占拠する為に立ち上がる事を目標にした集まりなんです」


 そうか……やはりここにもいたのか。ルールに反逆する者の為の集まりが。

 今の僕達としては、これほど好都合なものはない。


「どうだい?君達も反逆軍に入らないかい?もちろん、立場は保障するよ」


「……入ってもいいですが、僕達は厄介な存在になりますよ?」


「厄介?大丈夫だよ!もう厄介事には慣れてしまったからね。それに、ここにいる奴等はみんな前科持ちの厄介者さ」


「……そうですね」


 仙達さんの笑みに、僕も安心を憶える。

 まるで……彼はあの時の浩二さんに似ている。僕の初めての仕事で出会った、憧れの人。

 もしかしたら、彼なら出来るかもしれない。僕はそう確信した。


「よし!じゃあ決まりだな。君達を案内しよう」


「どこにですか?」


 僕の質問に、仙達さんは得意げな顔で答える。

 まるで、その答えを待っていたかのように。


「秘密基地だよ。俺達反逆軍のね」


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